我輩は○○である。
コロモドキ
我輩は観葉植物である。
我輩は観葉植物である。
名前はハオルチア。
私の先祖はミナミアフリカというところで生まれたらしいがよく知らない。
タニクショクブツと呼ばれるものの一種だそうだが、これについてもよくは知らないのだ。
私が知っていることはただ一つ。「私は観られるために存在する」ということだけだ。
私の主人が「あんたを見てるとイヤサレルわ」とよく言っているので間違いはないだろう。
私の主人はそれなりに多忙のようだ。
太陽とか言うあの輝く物体が顔を出してからバタバタと活動を始め、「いってきます」という掛け声とともに勢いよくこの壁に囲まれた空間を飛び出していく様を見る限りそうなのだろう。
ほとんど動くことのできない私からすれば信じられないほどの移動距離だ。
そして太陽が地面の下に潜り込む頃に主人は「ただいま」と声をあげながら私の前に戻ってくる。
それから少しの間、主人は私に話しかける。
主人の言葉の中で一番よく聞くのは「ツカレタ」という言葉だ。多くは「ダイガク」や「サークル」といった言葉に続くので、「ダイガク」や「サークル」は主人を「ツカレタ」にさせるのだろう。
これらの言葉を言うとき、主人はよく顔から水分を流す。私にはそこまで多くの水分はいらないというのにだ。
一方で主人の顔が輝く時によく聞こえてくる言葉もある。
それは「カレ」という言葉と「キュンキュンスル」という言葉だ。言葉の並びからして「カレ」は主人を「キュンキュンスル」にしてしまうのだろう。
それからいつものように「あんたを見てるとイヤサレルわ」と私に語りかけるのだ。
そんな主人にある日異変が起こった。
その日主人は「いってきます」の前に「今日はタンジョウビなんだ」と私に話しかけてからこの空間を出ていった。
しかし太陽が地面に潜っても主人が帰ってこなかったのだ。
そして太陽の光が地面からこぼれ出るような頃になって、ようやく主人は小さな「ただいま」とともに帰ってきて私の前に座り込んだ。
そのまま主人はいつものように私に話しかける。
今日は珍しく「カレ」という言葉のあとに「キュンキュンスル」が続かずに、「オサケ」や「ムリヤリ」そして「ホテル」という聞き慣れない言葉がでてきた。
主人はただただ私の前で顔から水分を出し続けていた。
それからというもの主人は太陽が出てきても「いってきます」を言わなくなり、この壁に囲まれた空間から出ることもほとんどなくなった。
太陽が出てから沈むまで、主人はずっと私に語りかけてくれた。
今までこんなことはなかったから、私はとても嬉しかった。
私の役目は主人に観られることであるし、私を見ると主人は「イヤサレル」らしいからだ。
こんな日がずっと続けば良いと思う。
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