ウサギの伏兵

ワコカはウサギの部隊を連れて再び野営地を出た



オオカミ族の群れが潜伏する森を囲うと、火を放った

そして、焼け出されてきたオオカミ族を矢で射る



2つ目の森を燃やした頃、オオカミの群れが現れた

1000人のオオカミ族の群れはウサギの部隊に襲い掛かる

隊長ワコカはすぐに部隊をまとめて逃げ出した



逃げて逃げて丘の上の高台に登った

そして、そこで陣をひきオオカミ族を迎え撃つ姿勢を見せた



オオカミ族は盾を前にして丘を登り始める

高台から放たれる矢は普段より鋭い

そして、丘の傾斜がオオカミ族の足を重くさせた


この地形がオオカミ族の群れにとって不利である事は分かっていた

それでも登り続けるには理由があった



中腹まで登った頃、オオカミ族の一人が大きく吠えた

『ホォォォォォォォ』

丘に響き渡る


高台の奥からオオカミ族が現れた

オオカミ族の伏兵は森だけでなかった

この高台も戦場になる事を予想していた

高台の後方から現れたオオカミ族の伏兵が、ウサギ族の部隊に襲いかかる


かに見えた


しかし、それは群れの伏兵ではなく

オオカミ隊長ミキの率いる傭兵の部隊であった

オオカミ族の伏兵は、ミキの部隊にすでに殲滅されていた


オオカミ族の傭兵はウサギの部隊に加わった

そして、大きな槍をオオカミ族の群れにめがけて投げ始めた

高台から投げ下ろされる槍は、盾を貫をきオオカミ族を次々殺していった


オオカミ族は退却を始めたが、

中腹まで登っていた為に、背後から槍と矢が襲い続けた


丘を降りた後も、ウサギ族とオオカミ族の混成部隊に追われ続けた

槍で壊された盾でこれを防ぐことは非常に困難であった






オオカミ族の群れは、そこから2日間走り続けて、ようやく休息のために野営をした

その数は、400人に満たない数であった


その夜遅く、オオカミ隊長のミキがオオカミ族の野営地を訪れた

そして、オオカミの群れのリーダーに会った

ミキが話す

『私は、オオカミとウサギの調和を望む

 どうか、オオカミの国に帰ってくれないか?

 クラナやインバにいるオオカミの群れのすべてを

 安全に運ぶだけの大きな船は用意できます

 船は私たちが動かします』


オオカミの群れのリーダーは悩んだ

しかし、タキがいない今、オオカミの国に帰るしかないと感じた

『わかった

 オオカミの国に帰ろう』






群れのリーダーはミキを安全に野営地の外まで送った


彼は、そこで、恐ろしい光景を見る


暗闇の中でウサギ族の部隊が野営地を囲んでいた

野営地のオオカミ族の群れは、疲れ切って眠っている

自分の判断が正しかったと感じた

そして、タキが言った事を思い出す

”今、ウサギ族を滅ぼさなければ、今度こそオオカミ族は滅ぼされる”





ここに、オオカミとウサギの争いが終結するが

オオカミ族とウサギ族の将来はまだ安心できる状況にはなかった

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