ボケの方
お笑いの病
病室で目が覚めた
クスリを処方されていつもより少し眠れたが
目の奥に鈍い神経痛が残る
以前よりだいぶマシだが、少し辛い
昨日の夜、相方に連れられて病院にやって来た。
話しは事前についていたようで、簡単な診察を受けて、そのまま入院することになった。
入院している病室に、坊さんが来た
多分こういう冗談は縁起が悪い
まぁ気にせん
そんな事どうでもいい
もしかして、お医者さんが来ると言うてたけど
この坊さんがそうなのか
坊さんは私を診察すると言う
『私は医師でもあります
少し、見た目は変わっているが、信頼してほしい』
坊主は名前と今の気分を聞いて来た
それから……
リンゴとバナナと蜜柑を目の前に置いた
そして、尋ねる
『リンゴはどれですか』
『……これです』
『正解です』
『なめてんのか』
『落ち着きなさい』
坊さんは話す
『でも分かりました、あなたは、やはり問題があります
こんな状況でも、リンゴはどれか尋ねた時、あなたはボケようとしましたね』
何も言えなかった
確かに坊さんの言う通り
普通の人には理解されないかもしれないが、尋ねられた時、どんなボケができるか考えた
諦めた結果の回答だった
『いいですか
ボケないでください、絶対に』
『バナナはどれでしょう』
『これです』
『正解です』
”やっぱりなめてるでしょ”
そう言おうとしてやめた
『少しづつですが、よくなっています』
坊さんは付け加えた
確かに、俺の状態はちょっとした病気かもしれん
絶対にボケないでと言われた時
どこかで、絶対にボケなあかんような気がした
普通の感覚から見ると、確かにおかしいが、確かに俺はそう言う人間だ
坊さんは話す
『あなたがボケようとしたときの緊張感がよく伝わります
今しなければならない事は、頭を休める事です
当分、絶対にボケないでください
恐れずに
もうボケれなくなるんではないかとか心配しないでください
大丈夫です
あなたは根っからのお笑い芸人です
多くの患者さんを診てきました
よくわかります』
『すべては、休んでからです
また、来ます』
そう言って坊さんは帰っていった
これが、お笑い教の教祖との出会いであった
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