お笑いの取材

笑福心経の一説

 自型陰陽(ジカタインヨウ)

 ……ボケの方法の一つ

   自分のステレオタイプと逆の事をする、ステレオタイプの通りの事をする








今日は雑誌の取材を受けた


今テレビの企画でやっている『一週間チャレンジ』の話を聞くためだ

他にも色々聞かしてほしいと言う



こういうのは、少し恥ずかしい

『今、一週間チャレンジっていうのをやっています

 僕は一週間、【赤いものしか食べない】ってやつです

 リンゴとかよく聞かれるんですが、実は皮しか食べれないんです

 とにかくトマトですね』



次に相方が答える

『僕は一週間、【後ろ向きに歩く】っていうやつです

 やっとまっすぐ歩けるようになってきたんです

 でも、進行方向が同じ人と、ずっと顔合わせるんで気まずいですね

 後二日なんで、前向きに頑張ってます

 ・・・あ、気持ちがね』



完全にスベッた




『休みの日は何をされてるんですか?』

記者がたずねる



『だいたい、お酒のおいしいお店を探してます』

相方がボケる



『お前お酒飲めへんやん』

俺がツッコむ



『ぶらっといい感じのお店に入るんです

 お酒飲むと、知らないおじさんとかOLとかすぐ仲良くなっちゃいますよね』



『おまえ、めっちゃ人見知りやん

 なんで嘘つくん』



やや、ウケた



『お笑いの仕事やってなかったら何してました?』

記者がたずねた



『お笑い以外は考えられないです

 子供のころから毎日、学校であほな事やってました

 親によう『ちゃんと』した大人になってと言われてました

 でも、どうしても『ちゃんと』が出来んかったんです

 そうなんです、僕にとってはお笑いが『ちゃんと』するって事なんですよ』



『なんでかっこつけるねん

 よう、お笑いやめて学校の先生やろうかな言うてたやんか』




相方が記者にたずねる

『どうですかね

 記事おもしろくなりそうですか?

 ごめんなさい、実は嘘ついてます

 ホンマは、休みの日は家で漫画ばっか読んでます』




『そんなん気にせんでええねん

 みんな、分かっとるわ』




今度は、まぁまぁウケた

ホンマこういう時は

コンビやってきて良かったと思う



『最近お笑い教って言うのを始められたと伺いました』

記者がたずねる



『・・まぁ簡単に言うと、お笑いの力で世界中の人を幸せにしようという宗教です

 みんな、お笑い好きでしょ』

相方はは答えた



『少し前、入院されてて、仕事休まれてましたよね』

記者が尋ねる



この質問には、答え出すのに少し時間がかかった

ボケるのは諦めたようだ

『もっと笑わしたい、おもしろくなりたいという気持ちがあるんです

 でも、それと反対に、お笑いがだんだんよく分からなくなってくるんです

 忙しくて疲れている時で、しんどかったです

 何やってもウケる気がしなくなっていました

 そんな時って、何やってもスベるんですけど

 仕事も一個一個が重くて辛かったです

 夜も眠れなくなっていました

 人を笑わすためやったら自分なんて不幸になってもいいとか思っていましたね』



『そんで、もうあかんって

 僕が、こいつ連れて病院にいったんです

 ・・ちょっと休もかって・・』

そうやった、今はホンマに元気になって良かった

あの時は、正直もう仕事やめなあかんと思ってた

不覚にも涙ぐんで、コーヒーを淹れる体で席をたった



『お笑い教は、その時に出会ったんです』

相方が答えた




『これからどうしたいとかってありますか?』



『相方をお笑い教に改宗させて

 一緒に布教活動をしていきたいですね』



『いやや

 坊主やなるんわ、いややで』



『坊主は俺が好きでやってるだけやで』



『ごめん坊主関係ないわ、絶対いややわ』




最後に一笑いいれて、取材は終わった




しかし、最近は、それもええかなと思えるようになっていた

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