第15話 化粧品の成分について Part2 パラフィン

 さて、前置き話にして見ていきましょう


 そもそも、パラフィンとは、石油から分離された白色半透明の固体。炭素数16~40のメタン系炭化水素の混合物。融点はセ氏50~75度くらいで、水をはじく性質がある。ろうそく・マッチ・クレヨンなどの原料とする。石蝋(せきろう)。パラフィン蝋などが主な用途

 化粧品ではパラフィンとは防腐剤のことです。その名称の通り製品が劣化するのを防ぐために配合されています。ですが、必ずしも悪役というわけではなく、重要な役割を担っています。

 微生物による劣化・変質を防止

 化粧品は基本的に毎日使用します。そして使用するたびにフタを開けて外気に触れる環境とになるため、微生物が侵入・付着する機会が多くなります。それが積み重なると成分が劣化・変質するといった大きな問題が生じてしまいます。パラフィンはそれを防ぐために使用されるのです。油や水、グリセリン、アミノ酸といった化粧品によく使用されている成分の多くは微生物の格好のエサになります。パラフィンを使用しないと早い段階で劣化し、使用期限が短くなってしまいます。

 パラフィンは必ずしも悪役というわけではなく、スキンケア製品の品質を維持する上で欠かせない面も持ち合わせています。目元や口元など刺激に敏感なところに劣化した化粧品を使用してしまうと肌を傷めてしまう要因ともなります。ただし、このパラフィンそのものが肌にがあります※1参照


 パラフィン(固形)


 固形のパラフィン

 常温において半透明ないし白色の軟らかい固体(蝋状)で水に溶けず、化学的に安定な物質である、成分は主にノルマルパラフィンの炭素数20以上の混合物であり、融点については用途により異なる。日本に於いては単にパラフィンと呼ぶ場合が多いが、ケロシンとの混同を避ける為、特にパラフィンワックスとも呼ぶ。


 流動パラフィン

 最も身近な物がベビーオイルである。常温では無色の液体で非揮発性。水には不溶。化学的に安定な物質で、通常の条件では酸化を受けない。成分については固形のパラフィンよりオレフィン系炭化水素に富む。乳化しやすくのびや浸透性に優れる。


 化粧品に使用されているほとんどが下の流動パラフィンの方の為まず、そちらを詳しく見ていきたい。


 ミネラルオイル(流動パラフィン)


 石油を蒸留して固形パラフィンを除去して精製して得られる無臭で無色透明の液状オイル


 ミネラルオイルは、ワセリンと同じく石油から得られる鉱物油で、室温の場合


 液体=ミネラルオイル

 個体=ワセリン


 本質的には同じ成分である


 まず、サラッとした液体でワセリンと同じ物質なので、安全性が高く、肌への浸透性がほとんどなく肌表面にとどまりやすいため、肌の水分蒸発を防ぐエモリエント機能に優れています。


 低刺激で安定性も高く乳化特性もあるので、乳液やクリームなどのオイルによく使用されたり、油性のメイク成分とよくなじむのでクレンジングやヘアクリームの油性成分としてもよく使用されます。


 2017年9月5日にカリフォルニア大学が運営している”Berkeley Wellness”オンラインに掲載された「ミネラルオイル:事実と神話」(文献1:2017)で改めてミネラルオイルの安全性についてQ&Aがあったので記載しておきます。


 Q:ミネラルオイルは石油製品ではありませんか?安全に使用できますか?


 A:答えはYes、そしてYesです。鉱物油でつくられたワセリンと同様に、ミネラルオイルは、ガソリンや石油製品を製造する際にでる安価な副産物です。


 ギヤオイルやトランスミッションに使用するための未処理または軽度に処理されたミネラルオイルは不純物を含んでいて発がん性がありますが、高度に精製されたミネラルオイルでは、これらの不純物は除去されて、スキンケア製品やドラッグストアで販売されています。


 Q:ミネラルオイルが肌に悪いというのは真実ですか?


 A:まったくそんなことはありません。ミネラルオイルはワセリンのように皮膚の上で水をはじく油膜を形成する効果的なエモリエント剤であり、他の保湿剤やスキンケア製品と共通した化粧品成分です。


 中には乾燥肌を保護するためにボトルから直接ミネラルオイルを肌に塗る方もいますし、ベビーオイルはまさにミネラルオイルです。


 2012年の”U.S.Pharmacist”の記事では、ミネラルオイルはおむつかぶれにとって安全で効果的なエモリエント剤であると記載されています(文献2:2012)。


 Q:ミネラルオイルが毛穴に詰まりニキビや黒ずみの原因になるというのは?


 A:それは神話(誤解)です。ミネラルオイルはノンコメドジェニック(ニキビの原因菌であるアクネ菌の養分になりにくい油性成分)なので、ニキビの原因にはなりませんし、毛穴を詰まらせることもなく、アレルギーが起こる可能性も低いです。


 参考までに化粧品毒性判定事典によると、ミネラルオイルは毒性なし(∗)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません


 セットで使用される成分と効果


 滑らかな感触の乳化剤として、以下の成分表示順で使用されます。ユニークなW/Si、W/Oクリームを作ることができます。

 ミネラルオイル、(PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー


 ・微細な粒子であるため、滑らかでサラサラした感触を付与し、マットな効果を演出するなど化粧料の品質特性を向上させる乳化剤として、以下の成分表示順で使用されます。炭化水素油に対する膨潤性に優れ、化粧料の安定性を向上させます。

 ミネラルオイル、(ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー


 ・保水性が高く肌になじみやすいソフトでしっとりした感触を与える乳化剤として、以下の成分表示順で使用されます。ユニークなW/Si、W/Oクリームを作ることができます。

 ミネラルオイル、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー


 ・乳化化粧品の安定性や粘性付与に使用できるミネラルオイルタイプの油性ゲルとして、以下の成分表示順で使用されます。

 ステアリン酸水酸化(Al/Mg)、ミネラルオイル


 ・コールドプロセスで製造可能な油中分散型アニオン性ポリマー増粘剤として、以下の成分表示順で使用されます。

 アクリレーツコポリマーNa、ミネラルオイル、PPG-1トリデセス-6


 ・コールドプロセスで製造可能な油中分散型アニオン性ポリマー増粘剤として、以下の成分表示順で使用されます。

 ポリクオタニウム-37、ミネラルオイル、PPG-1トリデセス-6


 ・コールドプロセスで製造可能な油中分散型アニオン性ポリマー増粘剤として、以下の成分表示順で使用されます。

 アクリレーツコポリマーNa、ミネラルオイル、PPG-1トリデセス-6


 基本的な配合量の多い成分表示順は上記の通りですが、1%以下の成分は順不同に表示されるので、製品によっては表示順が異なっている場合があります。


 ※1 パラフィンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について


 安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシートやレポートを参照しています。


 皮膚刺激性について


“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Fossil and Synthetic Waxes」(文献1:1984)によると、


[ヒト試験] 20人の被検者の前腕または背部に100%パラフィンの2つのサンプルを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に採点したところ、1つ目のサンプルは1人の被検者でほとんど知覚できない紅斑を生じたが、他に皮膚反応はみられなかった。2つ目のサンプルは1人の被検者に紅斑を引き起こしたが、他の被検者に皮膚反応は観察されなかった

[ヒト試験] 8%パラフィンを含む3つの製剤は18人、19人および20人の被検者において皮膚刺激をもたらさなかった

[ヒト試験] 15%パラフィンを含む製剤は19人の被検者において皮膚刺激をもたらさなかった

[ヒト試験] 6%パラフィンを含む4つの製剤について皮膚刺激試験を実施したところ、1つ目の製剤は17人の被検者のうち1人に軽度の紅斑を生じた。2つ目の製剤は18人の被検者のうち2人に紅斑を引き起こした。3つ目の製剤は9人の被検者に紅斑を引き起こし、皮膚刺激スコアは0~4のスケールで0.75であった。4つ目の製剤は最大皮膚刺激スコア40のうち0.35であった

[ヒト試験] 48人の被検者に15%パラフィンを含む製剤に対する反復鎮痛パッチ試験を行った。誘導期間として被検者の背中または腕に試験物質を1日おきに閉塞パッチ適用し、合計9~15回繰り返した。10~21日の休息期間の後、未処置部位にチャレンジパッチを適用し、パッチ除去24,48および72時間後に反応を評価したところ、この試験物質はいずれの被検者にも刺激および感作を与えなかった

[ヒト試験] 5%パラフィンを含む製剤を25人、30人、39人の3つの異なる被検者の前腕のてのひら側に48時間閉塞パッチ適用した。14日の無処置期間の後、24時間チャレンジパッチを適用し、パッチ女教24時間後に試験部位を評価したところ、皮膚刺激および皮膚感作は認められなかった

[ヒト試験] 5%パラフィンを含む製剤の21日間累積刺激試験を10人の被検者に対して実施した。この試験物質を含むパッチを各被検者の背中に4日間連続で毎日適用した。パッチは23時間接触したままであり、スコアは次のパッチ適用の直前に読み取られた。最大刺激スコア630のうち18であり、この試験物質は非刺激性であることが示された

 と記載されています。


 試験結果では共通して一次刺激性、累積刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一次皮膚刺激性、累積皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。


 眼刺激性について


“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Fossil and Synthetic Waxes」(文献1:1984)によると、


[動物試験] 6匹のウサギの眼に4つの50%パラフィンを含むワセリン溶液を滴下し、眼はすすぎを行わず観察したところ、3日間にわたって眼刺激が観察された。2つの溶液は1日目に1匹のウサギで軽度の刺激を起こしたが、他の溶液は刺激しなかった

[動物試験] 6匹のアカゲザルの左眼に5%パラフィンを含むアイシャドウ製剤0.1mLを点滴し、3匹の眼を滴下30秒後に温水20mLで洗浄したところ、滴下72時間後までの観察においては刺激または角膜損傷の兆候はみられなかった

[動物試験] 9匹のウサギの片眼に5%パラフィンを含む製剤0.1mLを注入し、3匹は注入30秒後に脱イオン水20mLで洗浄し、24,48および72時間後および4および7日後に眼を検査した。眼をすすがなかった6匹のうち4匹で最小限の結膜の赤みがみられたが、48時間後には目立たなくなった。眼を洗浄した3匹のうち2匹は48時間後に最小限の結膜の発赤が認められた

[動物試験] 6匹のウサギの眼に8%パラフィンを含む4つのアイシャドー製品をすすぎなしで注入したところ、眼は3日間にわたって刺激が観察された。3つの製品は1匹のウサギにおいて24時間で軽度の刺激を引き起こし、4つ目の製品は1匹のウサギにおいて48時間後に軽度の刺激を引き起こした

[動物試験] 上記と同じように試験した15%パラフィンを含むフットクリームは1日目において6匹の動物のうち3匹に軽度の刺激が観察された

[動物試験] 上記と同じように試験した16%パラフィンを含む2つのフットクリーム製品は1つ目の製品において48時間で1匹の動物に軽度の刺激を引き起こし、もう一方の製品は24時間で2匹のウサギに刺激を引き起こした

 と記載されています。


 試験結果では、共通して最小限~軽度の眼刺激性が報告されているため、最小限~軽度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。


 なので一番最初に書かれいていることから、目の付近、口元以外は全く使用しても刺激はなく安全性は高いということになります。


 さて、今回はここまでで、パッチテストなどを含めるとやっぱり長くなってしまう・・・・・・がどうしようもないね。


















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