私、結婚させられちゃいました

 そんなわけで、私、結婚させられてしまいました。


 私の名前は、はやし美琴みこと。でも、結婚して大森おおもり美琴になりました。結婚相手の男性は、れん。大森蓮です。

 私は24歳。レンは27歳。私よりも3歳年上。でも、結婚してわかったんですけど、とっても頼りないんです。元々ニートだったから仕方がないのかな~?

 ま、私も人のことは言えないんですけどね。


 なんか新しい法律ができちゃったらしくて、働いていない人は結婚しないといけなくなっちゃったんです。それでオタオタしてたら、結婚させられちゃいました。

 とりあえず身の回りの物だけ持って引っ越してきたんですけど、それがとってもボロなんです。ちく50年以上たってるとかで。おかげで一軒家にしては家賃もお安めなんですけどね。


 まずはレンとの最初の出会いからお話しますね。

 それは、こんな風にして始まりました。


 結婚することが決まって、とりあえず使いそうなものとか何日分かの着替えとかを詰め込んだトランクを手に、私は日本政府に指定された場所へと向かいました。

「手紙に書いてあるのは、ここのはずだけど」と、私は手にした資料に書かれた住所と目の前に建っているボロ家を見比べながらつぶやきました。

 どう見ても最近作られたおうちには見えません。どう考えても何十年もたっている建物です。

 ガラガラ~と玄関の引き戸を開けながら、私は「こんにちは~」とあいさつをしました。

 けれども、返事はありません。

「こんにちは~、誰かいませんか~?」と何度か声を上げたあと、やはり返事がないので、私は勝手に上がらせてもらうことにしました。

「おじゃましま~す」と言いながら、靴を脱いで家の中へと入っていきます。どう見ても純和風のお家。「サザエさん」ってマンガがあるけれど、あんな感じのお家です。

 私は大きなトランクを引きずりながらリビングへとたどりつきました。リビングっていうか居間?これまた純和風のたたみきの和室でしたから。

 そこには、男の人がひとり寝転がっていました。

「なんだ、いるんじゃないの」と声を上げてから、私は自己紹介を始めました。

「はじめまして。私はミコト。林美琴です」

 すると、男の人は寝転がったまま、めんどくさそうに答えます。

「オレはレン。大森蓮」

「あ、じゃあ、あなたが私の結婚相手ですね」

「みたいだな」と、ぶっきらぼうに返事をするレン。

 正直、第一印象はあまりよくありませんでした。「こんな人が私の結婚相手だなんて嫌だな~」と思ったものです。

 それでも私は丁寧にあいさつをします。

「ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いします」なんて、心にもないことを言ってみました。

 レンは、「ああ」と無愛想ぶあいそな返事をするばかり。ますます印象は悪くなります。

「とりあえず、名字みょうじはどうします?結婚したからには、名字をどちらかに合わせないと」と、私はたずねます。

「別に。どっちでもいいよ」と、いい加減な返事。

「じゃあ、あなたの方でいいですか?普通はそうすると思うし」

「いいよ、それで」

 というわけで、私は林美琴から大森美琴になったのでした。


 そのあと区役所に手続きに行ったり、なんやかんやは全部私がやりました。

 まったく、なんにもしない人なんです。

 料理も、お掃除も、お洗濯も、全部全部私の役割。

 なんでこんな人と結婚しなきゃいけなくなっちゃったんだろう?


 そんなこんなでスタートした私たちの結婚生活、どうなるのかな~?

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