第2話 処刑人
この街は処刑人の街である。ずっと昔から、どこの国でも死にほど近く、合法的な殺人をするような職業は忌み嫌われたものであるが、この処刑人の街では農業に適した土地ではみんなが野菜を作るようにみんなが処刑人をやっているのである。忌み嫌われることはない。
さてここに一人の処刑人がいる。彼はナン・ダー。名が体を表すどおりナンの処刑人である。仕事を舐め腐ったインド人が生焼けのナンを焼くたび「天誅! ピカチュウ! またライチュウ!」と叫びながらやってきて、必殺・難滅千陣(なんめっせんじん)でナンをパリパリサクサクに仕上げていた。
また失敗したナンのにおいをかぎつけ処刑人が走る。着いたのは一軒家。インドカレーの店以外の場所へ彼が仕事で来るのは珍しい。誰かが失敗したナンを皿に乗せて運んでいる。ナンということだ、あのナンは既に焦げているではないか。まともに食えたものではなく、難滅千陣で直せるのは生焼けのナンだけだ。もう存在ごと消すしかない。ナン・ダーがナンを葬ろうとピカピカのフォークを振りかぶる、
「あ、あのね、あたし、カレー好きのパパのために一生懸命作ったの。少し、焦げちゃったけど……でもでも、ちゃんと味見もしたよ! 食べられるよ! 食べて! パパ!」
「……許す!!」
幼女の言葉が鬼畜処刑人ナン・ダーの心を撃ち抜いた。次はおいしいナンを作れるようナンの材料を幼女の母親に託し、今日もナン・ダーは罪の象徴であるナンを屠るために歩き出す……。
お題・マイナーな処刑人
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