失踪(4)


「あー!彰斗」


 ほのかが大声を上げると彰斗はくるりと振りかえり


 「でっしょー!」


 と親指と人差し指でほのかを指差した。





 淡いピンクの壁に同じ色のカーテン、優しいピンク色に囲まれると気持ちも同じように優しくなる。


「気分はどう?一凛ちゃん」


 ピンク色のカーテンの隙間から颯太が顔を覗かせた。


「ええ、だいぶよくなった。颯太さんも忙しいのにごめんなさい。また迷惑かけちゃって、お友だちの彰斗さんにもお詫び言っておいてね」


 ベッドに横たわった一凛の腕に点滴の管が繋がっている。


「いいんだよ彰斗は、俺けっこうあいつに貸しあるんだ」


 颯太は笑った。






 助手席に乗り込んできた彰斗は、未だに別れた彼女と復縁を迫っているがなかなか上手くいかないとほのかに嘆いたが、一通り話し終えると落ち着いたのかこんなことを言い出した。


「以前颯太が俺を迎えに来てくれたことがあったんだけどさ、


 駅に着いたと連絡があってから随分してからスナックにやって来たんだけど、


 颯太えらい蒼い顔をしててさ、どうしたのかって聞くと、一凛ちゃんを見かけたって言うんだ。


 で、その後ずっと黙ったまま怖い顔してるもんだから、その時は一凛ちゃんと何かあったのかと思って」


「颯太が一凛を!?」


 身を乗り出したほのかに彰斗は驚く。


 彰斗は何も知らないのだ。


 ほのかは座席から浮かした体を元に戻す。


 彰斗はほのかの様子に怪訝な顔をしながらも話を続ける。


「あいつ最近相当奥さんと上手くいってないのかな。ときどき俺のクリニックに寝泊まりしてるんだけどさ」


 一度どこのビジネスホテルもいっぱいだからとクリニックに泊めさせたことがあったらしい。


 ちょうどその夜具合が悪くなった患者がやって来て、そこはさすがに救急外来の颯太、対応がすばらしかったそうだ。 




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