望まない結末(6)


「つまりハルは物なんだよ。法律上。そんな簡単なことさえ忘れてしまうほどハルに惚れてたか」


 最後は声色に皮肉を込めて依吹はそう言った。


「どうして被害届けを出さないの?」


 一凛の声は震えていた。


 依吹は寂しそうな顔をした。


「出すわけないだろ。一凛が捕まると知っていて」


「じゃあ、わたしはなんの制裁も受けないのね」


 依吹はうなずき一凛を気づかいながらもはっきりと言った。


「今回はもう無理だと思う、ハルを救うのは」


「わたしだけ無事でハルだけが」


「一凛分かってくれ、俺も一凛を庇うのでやっとなんだ。もともとハルはそうなる運命だったんだ」


「終わるときは一緒だと自分に誓ったのに」


「一凛」


 一凛の一番望まない結末だった。


 それでもハルは。


 ハルのことだ、この結末を一番望んだだろう。


 床の隅に拾い残しのガラスの破片が光っていた。



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