再会(6)
翌日になるとなんとなくハルのことだけで園長に電話するのも気が引け、調査の日程の連絡が来るはずなのでそれを一凛は待つことにした。
もやもやとした気持ちのまま数日が経った。
園長からの連絡は来ない。
のんびりした感じの人だったからと一凛は自分に言い聞かせるが、ここ数日でイライラが増しているが分かった。
一凛は十年前の依吹の番号にかけてみる。
自分でも馬鹿だと思った。
同じ番号を依吹が使っているとは思えない。
十年経っているのだ。
呼び出し音が鳴り出したとき、知らない人が出たらなんて言おうと混乱し、やはり馬鹿げたことだと電話を切ろうとしたとき、相手が電話口に出た。
『もしもし』
男の声だった。
懐かしい声だった。
「もしかして依吹?」
『・・・・』
沈黙のあと、電話の向こうから静かに聞こえてきた。
『俺の番号にかけてきておいて、もしかして依吹ってなんだよ。そっちこそ、もしかして一凛かよ』
「依吹」
思わず大声をあげてしまう。
『でかい声出すなよ、周りに聞こえるだろ』
「なにしてるの?」
『なにって仕事してんに決まってんだろ』
「仕事?依吹仕事してるの?なんの仕事してるの?」
『なんだよ、いきなり電話してきて質問責めかよ、つかそっちこそなにしてんだよ』
仕事中だからあとからまた連絡すると依吹に半ば強引に電話を切られる。
五分もしないうちに依吹からメッセージが届いた。
『帰国したんだってな、おかえり。つか連絡よこすの遅いぜ』
その日仕事が終わった一凛は依吹が指定した店に向かった。
伊吹は家こそは出ていたがまだこの町にいて、そこから仕事に行っているようだった。
町のどこにでもある餃子のチェーン店に約束の時間より早く着き、雨が激しくなってきたのもあって一凛は店に入って依吹を待つことにした。
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