再会(7)
待ち合わせだと店員に伝え二人席のテーブルに腰かける。
女性の一人客はほとんどおらず、餃子を食べながらビールを飲んだり、ラーメンをすする男性の一人客が多かった。
こんなところで食事をするということは依吹はまだ独身なんだろうか。
それにしても十年ぶりに再会するというのに、別に何を期待するわけでもないが、もう少し見映えのいい店を選んでくれてもいいような気もする。
それともよほどお金がないのだろうか。
依吹の動物園は経営難のようには見えなかったが。
一凛は店で食事をする男性たちをそっと観察する。
ネクタイをゆるめビールで顔を赤くしたサラリーマンやポロシャツにチノパンで電話をいじる男性、何を期待しているわけではないが、いわゆる羽振りの良さそうな男性は一人もいなかった。
一凛は学生服姿の依吹かまたは子どもの頃の依吹しか知らない。
店で食事をする男性たちに依吹を重ねようとするが上手くいかない。
顔だけがどうしても高校生の時のままの依吹になってしまう。
そうやって辺りを見回しているとさっきから何度か目が合う学生らしき女性とまた目が合った。
彼女の目の前には彼氏だろうか、同じくらいの歳の男性が酢豚をほおばっている。
女性は思い切ったように立ち上がると一凛の方にまっすぐに歩み寄ってきた。
「あのアニマルサイコロジストの一凛先生ですよね。コラムやお書きになった著書を拝見させていただいてます」
目を輝かせて一凛を見る彼女は大学で獣医学を勉強していると言う。
いくつかイギリスと日本の獣医療の違いなどを訊ねられる。
一凛はアニマルサイコロジストとして名前を知られるようになったが獣医学も勉強していてイギリスの獣医の資格も持っている。
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