2ページ
ブルル、とスマホが尻ポケットで揺れる。今度は信号が赤になった。丁度いい。画面にはミケの名前。メッセージは一件だ。
「・・・!」
MAJIKA!
ずっと前から飲んでみたかった幻の日本酒をついに手に入れたとのメッセージ。まじか、ミケは神だったか。
約束を来週の火曜に取り付けた。仕事終わりに俺の店で酒盛りだ。
メッセージを送り終えて顔を上げると同時に長い赤信号が終わった。この道路は車線が多い分、信号の時間が長い。
ホクホク気分でスマホをポケットに入れて歩き出す。店に向かっての道は一本道で、大通りを歩いているから信号が多い。けど、ふと気づく。そう言えば今の赤信号まで一度も止まっていない気がする。家を出て最初の信号は青だったし、大通りに出てすぐの所も青だった。それから四か所くらい一度も止まらず、道路に近づくと青に変わっていた。なんだ、今日は運がいいな。
今日は占い何位だったかな。
と、今朝の情報番組を思い出すが、記憶があいまいだ。降水確率0%で洗濯日和ってことしか覚えてない。あと、乾燥で火事に注意ってやつくらい。
ま、たまにはこうやってラッキーな日もなくちゃな、なんて赤信号に一度も捕まっていないだけでそう思えるなんて、俺も可愛いもんだ。
じゃ、できれば大海老天婦羅ランチが食べられますように。
なんて、願ってみる。ラッキー続きだし、もしかしてワンチャンあるかも?
天婦羅ランチさえ限定なのに、さらに二名限定で大海老を追加してくれるサービスがあるのだ。その二名に選ばれるためには、当たりの書かれた箸袋を手に入れなければならない。箸袋は既にテーブルに置かれている。席に案内してくれる店員さんの采配次第だ。ここまでラッキーで来たんだ、大海老天婦羅来い来い来い!
「お待たせいたしました、こちらへどうぞ」
ほんの少し待ってから席へ案内された。ランチには余裕で間に合った。いつも長い時間待たされるのに、今日はスムーズだ。
店員さんがカウンターの奥から三番目に案内してくれる。一番奥の男性はもう食べ終わっていた。つい、エビの尻尾を見てしまう。あれは普通サイズか?
「ご注文はいかがなさいますか」
「あ、天婦羅ランチで」
「かしこまりました。それでは箸袋を」
と、そこまで言って店員さんの言葉が止まる。
「恐れ入ります」
箸袋に手を掛けようとしてピタリと止まった。
「お客様、大変申し訳ありませんが、一番奥の席にご移動お願いできませんでしょうか」
「え、えぇいいですよ」
四人組が入って来たらしい。奥の男性はいなくなっていた。
「申し訳ございません、ありがとうございます」
「いえいえ」
箸袋をそのままに席を移動。新しく置かれた箸袋に手を掛ける。
「「あ」」
「おめでとうございます」
店員さんがニッコリを笑った。なんだか可笑しくて、俺も小さく笑ってしまった。
まさかこんなことが本当にあるなんて。
初めての大海老は、プリップリで美味しくて大満足だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます