第6章:ジャパンカップ、そして

第34話:決戦は金曜日

 ジャパンカップ東京大会が翌週に迫った。

 おのおのが秘密の特訓をしているようで、マシンの公開調整は行っていない。


 そんな部室にて。


「みかどは今日も工場か」

「みたいでござる、最終調整は自分でやる!って意気込んでましたし」

「そうか、じゃオレたちもがんばんなきゃな!」

「ぼくたちはコンデレでがんばるのである!」


 コンデレとはコンクールデレガンスの略で、改造の美しさやアイデアを競うものである。

 ミニ四駆をパーツ以外のものを使ってもいいので、ジオラマを使った凝ったシチュエーションなものから、どう見てもミニ四駆とはいえない、ゾイドっぽい怪獣や、ロボットへの変形ものまでさまざまなものがある。


「炎龍の新システムの調整でもするか……安定度は上がったんだが、コーナー遅くなったんだよなぁ」

「例のアレ、出来てたんですね。とはいえ剛性に問題ありそうでござるからなぁ……」

「ジャパンカップまでにはしっかり仕上げなきゃな。みかどに負けてらんないぜ!」

「(部長ってみかどさんに勝ったことあったっけ……)」


 一方、皇工場では。

 会長とみかどが最終調整を行っていた。


「コース置かせてもらっちゃって、悪いねぇ」

「いえいえ、全然大丈夫です。あたしたちも練習できますし、ほんと助かります」


 合宿で使っていたジャパンカップ模擬コースは現在、工場に持ち込まれていた。


「別荘でママたちに見つかるとヤバいからねぇ……壊して捨てるのももったいないし」

「えぇ、こんなすごいものを捨てるなんて……作るのだって大変だったでしょ?」

「知り合いの建築士と大工に頼んで作ったんだけどねぇ、さすがに壊すのは気が引けたしなぁ」

「(建築士と大工が知り合いって……)ちなみにおいくらくらいかかったんですか?」

「あんまり大きい声で言うなよぉ……300万くらいだぞぉ」

「おぼっちゃますぎるーーーーー」


 みかどのエンプレスは好調なようだ。

 高難易度で知られる2016年ジャパンカップの模擬コースを難なく走破している。


「まだ速度を上げられそう……ギア比の組み合わせ変えるか……マッハダッシュは速すぎるし。いい案はないのかな……」


 考えていると会長のトライダガーが走り出した。

(会長のマシン、見たことないバンパーユニットだ……ATバンパーに似てるけど、バネ1つで付いてる?)


「気になるかぁい?でもまだこの新兵器は秘密なんだぞぅ?ふふ」

「気になると言えば……会長は副会長が好きなんですか?」

「キミはそういうとこ直球過ぎだぞぉ。……そうだなぁ、幼稚園から一緒なんだよぉ。いっつもぼくの側に付いてきて、泣きんべでなぁ……今じゃボクより大きいし強いし……」

「いいなぁ……ずっと一緒なんですね♪」

「くされ縁だとは思うけど……うん、ボクは彼女……かおる以外に興味は持てそうにないなぁ……」

「いいなぁ……そういうの憧れちゃうなぁ……」

「キミだって火野くんと、そのなんだ、仲良しなんじゃないのかぃ?」


 いきなり話を振られて驚くみかど。


「ぶぶ部長ですか!?うーん……でも今はミニ四駆と兄探しでいっぱいいっぱいで。他のことは考えられないかな」

「ふふ……」


「ぶえっくちょん、ちくしょうめぃ!」

「どこかの総統閣下みたいなくしゃみを急にしないでくださいよ!びっくりするじゃないですか」

「うぃぃ……誰か噂でもしてんのかな」


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用語解説:

・コンデレ

 コンクールデレガンスのこと。

 ミニ四駆の速さではなく、見た目で競う感じで、公式の大会と並行して行われている。


・総統閣下

 あのチョビヒゲのこと。

 MAD系の動画で「総統閣下が○○にお怒りのようです」みたいな動画がおもしろいw

 ちくしょうめぃ!!

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