第5話:お前のマシン、なんか変
火野がみかどに寄こせ寄こせとジェスチャーしている。
みかどとの勝負に負けたからか、若干不貞腐れてるようだ。
「ちょっとモーターを確認させてくれよ」
「何か気になることでもあったの?」
「オレのファイヤードラゴンも同じハイパーダッシュだが、慣らし、ブレークインも行ってるんだぞ?ポン付けのハイパーダッシュでタメ張れるわけがないんだよ」
「あ……たしかにこれはおかしいでござるなぁ、いきなりそんな性能出るわけがないです」
3人の会話についていけず、戸惑うみかど。
「……あたしのモーター、また壊れたの?」
「そうじゃないんだ、ただ、速すぎるんだよ。普通は買ったばかりのモーターは性能が出ないのさ。モーターの育成といって、育ててあげて、初めて最高性能が引き出せるんだよ。それが慣らし、ブレークインな。お前のモーターはいきなり俺のマシンと同等、いやそれ以上の速さが出てるんだぜ?ポン、とつけただけのモーターがそれだけの性能を出せるのはおかしいってこった」
「なるほど……たまたますごいモーターだったのかな?」
「それを調べてやるよ」
そう言うと、マシンを分解し、カウンターギアを外し。
スマホを取り出してなにやらアプリを起動している。
「それでなにをするの?スマホでモーターが調べられるの?」
「そうだ。モーターの回転する音をスマホに聞かせて回転数を測れるアプリがあるのさ」
「かがくのちからってすげぇーーーー!!」
「ポケモンじゃねぇよ!」
「くすくす♪」
電池を入れ、スイッチを入れ、スマホのマイク部分をモーターに近づける。
アナログのメーターが表示されているが、グングンと上がっていく。
その数値は。
「……30000?!」
「そんな、うそでしょ、エージングもなしに30000回転なんておかしいでござろう!」
みかどにはモーターの標準回転数などわからなかったが、驚いている皆の表情からとんでもないものであることは理解した。
「おかしかったの?そのモーター、お店で光って見えたんだけど」
「そういやお前、モーターが光ってるとか言ってたよな?」
「うん、このモーター、まだ光ってるよ?」
「俺のモーターは?」
「うーん、普通かな」
腕組みをしながらしばし俯いていた木暮が、何かを理解したかのように話し出す。
「……信じがたいですが、みかどさんには速いモーター、当たりのモーターを見分ける能力があるのでは?」
「そんな能力が……でもそうとしか言えんでござろうな、これは」
「つまりどういうことなの?」
「お前が見て、光ってるモーター、ってやつが性能がいいものだったんだよ。なんだろ、魚市場のセリに参加してる目利きみたいな、そういう感じの能力があるってことだろ」
「あたしにそんな力が……」
見ただけで当たりモーターが判別できる能力。
信じられない能力だが、目の当たりにしてしまった以上、信じるより他ない。
「しっかしあれだな、その能力。ミニ四駆以外で役にたたねぇよなw」
「たしかに……生きててどこで使うんでしょうな、この能力」
「まさにミニ四駆やるために生まれてきたようなおなごじゃ……」
「なに?これバカにされてる気がするんだけど?」
「「「くすくす♪」」」
「もーーーーーー!」
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用語解説:
・慣らしとブレークイン
モーターはある程度、使ってあげないと性能がでません。
モーターのコイルに電流を伝えるブラシ部分が、軸を挟んで接続されているのですが、この挟む力が抵抗になっているんです。
ある程度使い込むと、このブラシが適度に削れて抵抗が少なくなり、良く回るようになります。
慣らし、ブレークインとはこのブラシの削りを自分でやることです。
適当なマシンにつけてからモーターを回ししておくとか、専用電源を使って時間を管理して行う本格的なものまで。
いろんなやり方があり、これもなかなか奥が深いです。
・カウンターギア
モーターのピニオンギアからの力をシャフトについているクラウンギアに伝えるための中継ギア。
・回転数を図るアプリ
「Giri(ぎり)」というアプリです。
iPhoneでもAndroidでもどちらであります。
ただ、音を拾うマイクがスマホの機種によって違うので、全ての機種で同じ結果が出るかはわかりません。
・かがくのちからってすげぇ
毎回ポケモンに出てくる名物にもなっているセリフの1つ。
他にも金の玉おじさんなど、不思議な名物が多い。
・30000回転
ハイパーダッシュPROの回転数は公式の値だと「17200〜21200回転」ほど。
ポン付けで24000出てれば普通は当たりモーターと言えるとおもいます。
育成すると、だいたい24000〜31000くらいまで行くのもあるらしいですが。
なので、ポン付け30000回転は普通はありえません。
ラノベなので大目にみてください(^^;
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