第32話

 金沢文孝の実家は祖父母しかいなかった。


「警察……!」

 祖父は眉をひそめた。


「はい…、実は、阿久堂君の事件の事で!」

 冨田が手帳を提示した。

「お話しをうかがいたいのですが?」

 リオもしおらしく訊いた。


「フゥ…ン…、どうぞ……」

 ため息を漏らし、祖父は少し考えてから室内へいざなった。

 オレとナポレオンも続いた。


 小さな仏壇には文孝と両親の遺影があった。優しい笑顔だ。


 オレたちはかしこまって手を合わせた。


「フゥ…ン、阿久堂は校舎で首を吊って自殺したンだろう」

 祖父はあざけるように言った。



 

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