ひびけ。グレートファントムフィーバー
格納庫の中にいくつもの巨大ロボットが並んでいる。試作機とされるロボは9機あり、色鮮やか。その中に問題の最新型人型巨大ロボがあった。白を基調にしたボディ。頭部のグレー色の3本アンテナがキラリと光る。左腕に白いXという文字が刻まれた盾。右腕にライフル銃を持つその姿を、博士は自信満々な表情で見上げている。そんな彼は一枚の紙を手にしていた。
赤色のパトランプが光った瞬間、博士はガッツポーズを取ってみせた。
「博士、怪獣が現れました。まだ、グレートファントム10号は動かないんですか?」
駆け足で博士の元へ向かう黒金ケンを前にして、博士は腕を組む。
「フフフ。ケンくん。遂にこの時が来たのだよ。グレートファントム10号が怪獣を撃退するんだ」
「博士、本当に動くんですか?」
「今回は完璧だ。最新鋭のシステムを搭載したグレートファントム10号、出撃の時だ!」
「博士、前置きはいいです。すぐに出撃しないと、また別の巨大ロボが怪獣を倒してしまいます」
焦っているケンに対し、博士は呑気な顔で問題の巨大ロボを見上げていた。
「ケンくん。まずは説明しないといけない。どうやって、10号を動かすのか? その答えはこれだ」
そう言い博士はケンに一枚の紙を渡す。それに目を通したパイロットは思わず首を傾げた。
「これって……」
「今回は歌の力というのを試してみようと思う。それは、グレートファントム10号の歌。出撃するとき、ケンくんにこの歌をコクピットの中で歌ってもらう。それを歌いきった時、グレートファントム10号は天を駆け、グレートファントムガンで怪獣を撃ち抜く。何度この瞬間を夢見たことか。さあ、ケンくん、コクピットに乗って歌うんだ。レディーエンスジェントルメン・グレートファントム・ギルティアイズフィーバーと叫んだら、自然に音楽が流れるようになっている。分かりやすい歌詞にしたから、すぐに覚えられるはずだ」
「分かりました。今日こそ怪獣を倒してみせます! って、掛け声変わってませんか?」
「縮めて、グレート・フィーバーでも構わん」
「レディーエンスジェントルメンどこいったっていうツッコミは置いといて、やっと動くんですね。グレートファントム10号」
気合を入れ宣言した巨大ロボのパイロットがコクピットの中へ入る。操縦席の椅子に座ったケンは、瞳を閉じた。ここまで長かったとケンは思った。失敗を何回も繰り返す博士と対立した日が懐かしい。今日の博士は今までとは違う。そんなことを考えていた彼は、初めての出撃に胸が躍っていた。
「グレート・フィーバー!」
パイロットの熱き雄たけびの後、軽快な音楽が鳴り始める。
「かがやく――せいぎの――ちからで」
歌い始めた瞬間、格納庫が強く震えた。窓ガラスが全て割れ、嫌な予感が博士の脳裏を過った。そんなことなど知らないケンは歌い続ける。
「わるいかいじゅう――くちくして――やろうぜぇ」
格納庫内の全ての機体に電流が流れ、回路がショートしていく。
「グレートファントム」
突然爆音が鳴り響き、博士は慌てた表情になる。格納庫内のロボの半分が爆発し、黒煙が格納庫を包み込んでいく。このままではマズイと思ったのか、博士は奇声を出し、その場から逃げていった。まだ格納庫内の異変に気付かないケンが、もう一度「グレートファントム」と唱えた時、残り半分の機体も破壊された。パイロットの目の前の画面に警告という文字がいくつも表示されているに気付く余裕は、今のケンにはなかった。
「グレート――ファントムに栄光あれ」
格納庫が激しく震えた。大きな爆発音と共に、10号の足も崩れていく。何が起きたのか。訳も分からないまま、脱出用ボタンを咄嗟に押したが、もはや時既に遅し。火の海と化した格納庫は、文字通り倒壊した。
「まさか、ケンくんの音痴が、格納庫を大爆発させる程度だとは思わなかった。今回も無理じゃったな」
はぁと溜息を吐いた博士は、呑気な表情で爆発が続く格納庫を離れたところから見ていた。
たたかえ!グレートファントム10号 プレイバック 山本正純 @nazuna39
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