アムロ=ジピン
俺の名はアムロ=ジピン
駆け出しの剣士だ。
◆
「CCブロッカー」という名前でパーティを組んでいる。
メンバーは俺と、
俺の妹で弓使いのニフェ=ジピン、
魔法使いのベラ=パミル、
回復役のジル=チアゼムの四人体制だ。
一応四人でも十分やってはいけるのだが、もう一人前衛がいた方が楽だ。主に俺が楽だ。
三人を背に守りながら戦うのは動きが制限され不自由が多い。
今踏み込みたいと思うときに踏み込めないのは結構ストレスだ。
そんなわけで、フランで前衛の募集をかけていた。
俺達自体まだ駆け出しなので、ランク制限は無しにしている。
応募は複数あったのだが、オジサンは嫌だとか、人相が悪いとか、恰好がダサいとか、まあニフェとベラの審査が厳しかった。
同い年くらいがいいっていうのには同感だがもう少し大目に見てくれてもいいだろうに。
俺以外は別に増員の必要性を感じていないようなので仕方ないっちゃ仕方ないが。
今回の応募もあまり期待していなかった。
そもそもニフェとベラのお眼鏡にかなう奴なんて存在するんだろうか。
諦め気味で行ってみると、そこには金髪の少年が緊張した面持ちで立っていた。
今声変わり中ですというくらいの歳
フランは登録したてだそうで、がちがちに緊張しているのが見てわかる。
活動は週一、夕刻前には戻ってくるという制限付き。
正直「えー」とは思った。
でもまあ、まだ子供だし、そんなものだろう。
むしろ、その年でよくフランに登録する気になったな。
親に反対されなかったのかと聞いたら、親は死んでいないのだそう。悪いこと聞いた。
まあいい。とりあえずの問題は本当に戦えるのかどうかだ。
モンスターをみて逃げ出すようならただの足手まといだからお引き取り願いたい。
「お前はモンスターと戦ったこと……」
「ねえねえ!アトル君何歳?」
「十二歳……」
「私ベラ=パミルよ。十八歳!ベラって呼んで!」
「ニフェ=ジピン。ニフェでいい」
ニフェたちは初々しいアトルをみて「かわいい」と大喜びしていた。
もうすでに仲間決定モードだ
ちょっと待て!制限があるし、戦えるかも怪しいぞ
「そんなの週一回アトルに合わせた依頼選びをすればいいだけじゃない!」
「アトルがムサイオッサン達にいじめられてもいいっていうのね。アム兄ひどい……」
「いや、そんなことは……」
「そうよ!かわいそうだわ!」
「私たちが責任もってお世話してあげましょう!!」
それ最初の目的から外れているだろ!!
そう思ったがもはや決定権は俺にはなかった。
ジルが口をパクパクさせる俺の肩を叩きながら「諦めろ」と首を振った。
まあ、四人体制でも十分やっていたし、増員は諦め気味だったからいいか。
最初は緩い依頼になってしまうがアトルが成長したら、五人で難しい依頼に挑めるわけだし。
ゆっくりアトルを育てていこうと言う意見で一致した。
◆
早速「アメーバ駆除」の依頼をうけた
このアメーバと言うやつは、世界中どこにでもいるモンスターだ。
いろんな種類がいるが基本ゼリー状で植物や虫などを食べて生きている。
目も脳もないため仮足と呼ばれる体の一部を伸ばしてそれに触れたものを手当たり次第捕食している。
動きは遅いため危険性は低いがたまに寝込みを襲われた人間が飲み込まれるという被害はある。
「アトル!核だ!核を狙え!」
「核?」
見当はずれの所を切り刻んでいるアトルに向かって叫ぶ
「よーく見たらアメーバの中に丸いものがあるだろ。それが核だ」
「?」
透明な体の中に、これまた透明な核があるのだがはじめてでは気泡やら他の粒々やらと区別がつかないか。この核を叩かないといくら体を切っても意味がない。
「カーミンしようか?」
ジルの提案に、そういえばそんな魔法があったことを思い出す
「お、頼む」
ジルがカーミンを唱えると核が赤く染色された。慣れれば区別がつくので必要なくなるが、最初は随分お世話になったことを思い出した。アトルが「おー」っという声をだした。
「二つある奴とかいるけど?」
「それは分裂する前の奴」
ほらとジルが丁度分裂中のアメーバを指さす。
二つの核が両端に分かれ、真ん中の体がどんどんくびれ始めて二つに分かれた。
「げ!増えた」
「アメーバの厄介なところは分裂増殖していくところなのよ?」
「放っておくと過剰繁殖して手に負えなくなるの」
「だから定期的に数を減らしておかないとね」
そうして、アメーバ駆除がはじまった。
「とは言うものの。もう十分倍々ゲーム始まってね?」
相手は動きはのろいしナイフでも余裕で倒せるのだが、倒しても倒してもにゅるにゅると出てくるのだ。
「キリがない!ベラ頼むわ」
「任せて」とベラが杖を構え詠唱を始めた。その間ベラが無防備になるので護衛に入る。
炎の球が完成しここら一体のアメーバを焼き払った。
こういうとき魔法はいいなと思う。
剣でプチプチやるところを魔法で一発なのだ。
ベラがどや顔でアトルをみる。
ベラご自慢の炎の魔法だ。しかもアトルに見せるためか必要以上にデカかった。
ほとんどの奴がその威力を見て驚く。
アトルの反応は……。
「おー、一気に減ったな」と言ったくらいで、もうすでに残りのアメーバ退治にとりかかっている。
反応薄!!
残ったのはどや顔のベラ。
まずいってまずいって!とりあえず「すっげーー!!カッコイイ!!」くらいの反応を返さねば。
後で絞殺されます。
俺が。
「アトル君アトル君」
肩をちょんちょんと叩いてベラの方を向かせる。
「どう!?」
感想を催促されたアトルだが何のことかわからずにキョトンとしている。
「魔法!なかなかのものでしょう?」
「ベラは炎の魔法が得意なんだよ。この威力だけはⅡ郡もうならせるんだ」
「えっそうなのか!すげー!」
やっと主旨をつかんでくれたアトルが付け足したように反応を返した。
「……なんか嘘くさあい」
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