おばあちゃんが異世界に飛ばされたようです

いそきのりん

幸せな最期



―――あんた、誰かいね



 わしが尋ねると若者は微笑んだ。



―――隣に座ってもいい……ですか?



 若者は遠慮がちにそう聞いてきた。



―――ええよ


 わしが頷くと、その若者はそっと隣に腰かけた。



 夕暮れ時の縁側に並んで座ったわしらは、何も喋らなかった。


 耳に入ってくるのは、繰り返し鳴き続ける虫の声と風が稲穂を撫でていく音だけ



 重くゆったりとした眠気がやってきて、逆らうことなく目をつぶる


 思い出の詰まったこの家で静かに息を引き取れる


―――なんと幸せなことじゃろう




 はるか遠く、今際の際で声が聞こえた気がした。



 それは



 本当に






 優しい声だった

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