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「今日は何時に待ち合わせなんだ?」
「あ、話変えた」
変えますとも。だからその可愛い顔の眉間の皺は伸ばして。
「今日はね、あと十分くらいかな」
「泊り?」
「そー。バイトが終わったら迎えに行ってそのまま彼女の家に泊まるの。そしてそのまま学校行くんだー」
「へー」
「聞いといてその返事はなんだよー」
恨めしい様にマツエクで伸ばしたお人形みたいな目で上目使い。
「いやー、仲がいいなと思って」
「当たり前じゃん。彼女とはもう五年の付き合いになるしね」
ミヨ、本名、里見洋助。大学一回生。年齢、一九歳。男の娘。彼女あり。しかも彼女は凄い美人と来た。別に羨ましくないけど、何となくずるいと思うのは、きっと俺だけじゃないはず。
「五年か、長いな」
「中学生からだし」
マセガキめ、なんて。
「ミヨは彼女のどこが好きなの?」
「んー」
ジンジャエールの氷をグルン、と回してミヨが言う。
「昔は顔だったな」
「顔か、確かに美人だもんな。昔からあんなに綺麗だったんだ?」
「そうだね~。中学校で同じ学校になってさ。最初はサバサバしてて気に食わなかったんだけど」
そこでミヨはクスッと笑った。
「ふとした時に笑う顔が可愛くてさ。いつも仏頂面なのに、笑うと可愛いんだよね。その顔が見たくてさ、いろいろしてるうちに好きになったんだよね」
綺麗に手入れされた長い髪に、丁寧なメイク。本物の女の子みたいなのに、そう笑う顔は男の子の顔つきだった。
「それじゃあ今は?」
「今はね、んー、全部?」
急にアバウトだな。
「一言じゃ言い表せないってこと。それくらい全部好き」
それじゃダメなの? と言う。もちろんそんなことないさ。
「全部好きってことは嫌なとこも含めて全部好きってことだろ」
「そうだよ。寝起きが悪いとことか、怒ると面倒なところか含めて全部好き」
それじゃあ何もダメなとこなんかない。全部まとめて好きって言えるくらい好きなんだから。それって最上級に好きってことじゃない?
「そうかな」
「そうだろ」
「そう、かも・・・!」
そう言える相手がいるって言うのは、素直に羨ましいなと思った。
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