カレノカノ
カゲトモ
1ページ
「ったくさー、ちょっとくらい驚いたりしないわけ?」
「えー」
「えーって。俺、こう見えても店で凄く人気なんですけど」
少しばかり大きな荷物を持った(と言ってもトートバッグ。いつもは小さなクラッチバッグだ)ミヨがどっかりとカウンターに腰かけていた。今日はもう、退勤してきたんだと。
「本当の女の子みたいって、お姉さま方から人気高いんだから」
「オネェさまじゃなくって?」
「お姉さま、だよっ。もちろんおじさまもだけど」
「へー」
「うーわ。興味ないって顔だ」
当たり。別にミヨの需要状況とか興味ないし。
ミヨは裏にあるオネェスナック“ミケ”のスタッフだ。オネェではなく、男の娘として勤めているが、実際外でもそのスタイルは変わらない。
「普通男湯で女の子みたいな人が入って来たら少しくらい驚くでしょ?」
昨日常連さんから貰ったタダ券で近所のスーパー銭湯へ行った。その時そこのサウナ室でミケと会った。いや、正確には勝負した? ちなみに勝ったのは俺だ。
「いや、だって、ミヨだったし」
「最初から気づいていた訳じゃないでしょ」
そりゃそーだけど。
「だからって入って来た人の事じろじろ見るもんじゃないだろ」
「じろじろ見なくてもシルエットでドキッとするでしょ! 前隠してたんだから」
隠してたのかよ。頭にタオル乗っけてて顔が見えなかったことしか覚えてないし。
「俺の事見て驚かなかった人の方が少ないんだから」
とミヨが両頬を膨らませた。驚かせなかったのが不満らしい。今どき可愛らしいからってだけでは、もう驚かないぜ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます