夢を見た

ユウ

第1話 指先

夢を見た


私は女の子といる

彼女は私が他人と親しくするのをひどく嫌った

「どうして私がいるのに他の子のところにいくの?」

そういって私につらくあたった

彼女は私を奴隷と呼び、私はそれに逆らえないでいた

どう見ても異常な関係だった私たちは周囲から孤立し、誰からも見向きもされなくなっていった

私は彼女から解放されたいと思いながらも、彼女が怖くて、ただ従うことしかできなかった


夢の中で、私は彼女と夜の町を歩いていた

行き着いた先は、ホテル

彼女は私をきつく縛り上げ、その上でさらに辱めた

最悪な気分だった…

私は彼女をそういう対象として見ている訳ではなかったから

夢とはいえ、今思い出しただけでもゾッとする

それでも私は彼女が怖くて、彼女を受け入れている振りをした

情けない話だ

あんなことをされてもなお、イヤの一言も言えないんだから

後日、彼女からメールが届いた

またあの夜の続きがしたいという内容だった

私はホテルでの出来事を思い出した

蔑むような視線

食い込む麻縄

弄ばれる陰核

猿ぐつわをされてもなお漏れ聞こえる自分の喘ぎ声

そしてすべてが終わったときの、彼女の優しい微笑み…

それら全てを思い出すより後か先か、私は初めて抵抗した

いつかに知り合った、名前すら危うい男に泣いてすがり、助けを求めた

ただただ恐ろしかった

ぐしゃぐしゃになった私に慈しむ表情を見せた彼女と、自分の中に生まれかかった薄暗い感情が私の心を絡めとろうと恐ろしいツタをのばしてくる

足下をすくわれないように

返しのついた葉に、私を持っていかれないように

誰でもいい

誰か

私をここから救い出してくれ!!

そう叫ぶや否や、彼女と目が合った

見られた

まずい

もっとひどいことをされる

だがそう思ったのもつかの間、彼女は去って行き、そのままどこかへ消えてしまった

彼女は私を責めるでもなく、痛めつけるでもなく、ただ寂しそうにこちらを見つめて、消えた



そこで私の夢は終わった

外には柔らかな雨が降っていて、時計の針はちょうど午後の十二時をさそうとしていた

カチコチと行儀よく仕事をこなす秒針を眺めながら、私は夢の中の彼女について思い出していた

自分もろとも私を周囲から遠ざけ、ネオンの下、私を世間から隠すように、抱いた彼女

断るべきだったんだ、ちゃんと

否定するべきだったんだ

こんなのは間違っている

だってこんなことをしなくても私は…

でももう、遅すぎた

彼女を受け入れる振りをして、最悪な形で彼女を拒絶した

夢は終わってしまった

もう二度と、彼女には会えない


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