第二十話

 わたしはげつこうしていた。

 悪魔たちの裏切りに憤怒を覚えていた。

 およそ五千年の時空を超越していちれんたくしようのあなたとかいこうしたにもかかわらずあなたを喪失したわたしは裏切りものの一柱ベルゼブブをへいげいし激怒していた。もう一度契約するために地獄の魔王とかいこうさせろときゆうしたわたしにいんぎんれいなるベルゼブブは返答した。そもそもわれらが魔王ルシファーは地獄の最下層にありながらこうじゆたる頭脳を駆使して全知全能の神霊の思惑をおくそくしていた。最初からあんたとかいこうすることを『計画』していたんだと。

 わたしは喫驚した。

 ひつきようあなたと天使たちとの契約もわたしと悪魔たちとの契約もおしなべてえいごう不滅の神霊と極悪無道の魔王による時空を超越した『陰謀』のなかに組込まれていたのだ。ならば問題はなかった。あなたのためなら百折とうのわたしはみずからもうりようちようりようばつする地獄へとまいしんする覚悟は出来ていた。どうもうなる悪魔たちの『陰謀』をりようしようしたわたしはほうじようなるベルゼブブとともに地獄へとまいしんすることとなった。

 わたしはうつぼつたる情熱に抱擁されていた。

 くだんのとおりベルゼブブの霊威によって時空を超越するとは地獄第一圏『辺獄』であった。かいなるぎんばえという元来の風采にひようへんしたベルゼブブは悪臭ふんぷんたる背中にわたしを背負い疾風迅雷の勢力で地獄の最下層へとばくしんしていった。地獄第一圏から第六圏第七圏の各環第八圏の各嚢第九圏の各円をちようりようばつついに第九圏最下層へと到達した。きよくてんせきのわたしは極悪無道の魔王ルシファーとかいこうしたのであった。

 わたしはきゆうきようひやくがいしんとうさせた。

 魔王のあまりの霊威に戦慄を覚えたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る