Chapter12 2人目


「…おい、あいつ確かに斬られたよな…」


「…あぁ、俺も見た、何で普通に立ち上がって会話してんだよ…」


「もしかしてあれが伝説の絶対障壁とかいうやつなんじゃ…」


「マジかよ…信じらんねぇ! あいつ、そんな凄い人だったのか、俺すげぇバカにしちゃったよ…殺されちゃうのかな…俺…」


騎士団の連中が、ザワザワと慌てふためいていた。

興奮する者、信じられないといった顔をする者、青ざめた顔をする者。


あいつら何か勘違いをしているようだが…


何となく都合が良さそうなので訂正はしない。

少しは騎士団の連中も俺に気を使うようになるのではと考えた。


「いやー、参りました! ヴァイスさんやはりお強いんですねー! こんな重い剣を片手で振り回すし!」


俺はヴァイスさんの顔を見ながら、両手で剣を持ち上げて上下させた。


「いえ、恐縮でございます。しかし、小田殿もなかなかでございました。

私の本気の斬撃を受け止めたのですから。

しかも最期の小田殿の攻撃、全く身体が反応出来ませんでした。まさしく肉を斬らせて骨を断つという言葉がピッタリな攻撃でごさいました。」


ヴァイスさんは俺に一礼した後、ニコリと笑顔を見せた。


やっぱりヴァイスさん本気じゃねぇか…

しかし、その作戦はアリかも知れない。

いや、待て、

そもそも、この死ねない現象は100%起きるのか?

もし99%だとしたら1%の確率で攻撃を受けてしまい、死んでしまうかもしれん…

確証の無い行為は、死につながりかねない。


「そろそろ夕食の時間でございます。カルミナ王もご心配なさっているでしょうから戻りましょう。」


ヴァイスさんが闘技場の小窓から外の太陽の位置を確認した。


異世界の食事か、どんな料理が出てくるのだろう。

少し楽しみである。ガストのハンバーグ食べたいなぁ…



闘技場を出る時に、ヤジを入れていた騎士団の連中と目があったが、すぐに怯えたように目を逸らした。


こりゃあ、少し気分がいいぞ!


闘技場から城へ繋がる廊下を歩いていると、

1人の騎士が後ろから話しかけてきた。

闘技場にいた騎士の1人なのだろうか。


「なあ、あんた達ちょっと待ってくれよ! 引き止めて悪いね。僕の名前はロアっていうんだ。よろしく。 」


振り返ると、綺麗な顔立ちをした男がモデル立ちしている。


イケメンキター!! 絵に描いたような男前だな…


この城の中では珍しい俺と同じ綺麗な黒髪で、緋色の瞳、身体は華奢ではあるが、俺よりも背は高い。


全てが俺の上をいくステータス…

まさにパーフェクトヒューマン。

この世界で真のイケメンは俺だけでいいのに!


「さっきの模擬戦見させてもらったよ。

さっきのは何だったんだい? 確かに斬られたが実は斬られていなかった…

皆は魔法だと言っていたが、実の所、違うんだろう…

僕には能力でも魔法でも無いように感じたんだ。

君は一体何者なんだい?」


ロアはモデル立ちを継続しながら、たまに前髪を触ったり、顎を触ったりしたりしている。


なかなかにこの男鋭い…

だが何者なんだと聞かれても期待に応えられるような答は持ち合わせていない。自分でもわからない…

僕、普通の男の子なんですぅ!


「ロアくんだっけ? いやー、なんて言えばいいのかなぁ…実は俺もよく分かってないんですよ。」


俺は頭をポリポリと掻きながら答えた。


「そうなんだ、でも確かに凄い力だってのは間違い無いよ! ぜひ僕と仲良くしてよ。 じゃあ、またそのうち。」


モデル歩き、とは行かないが、キラキラとした雰囲気を纏ったまま、大きく手を振りながら歩いて行った。


なんか人当たり良くていい奴だったな…

なかなかに良い友達になれそうだ 。


「い、行きますかな小田殿...」


どうしたのだろうか、ヴァイスさんにいつもの落ち着きが見られない、汗が額から流れている。


「小田殿は平気だったのですか…?」


汗を流しながら困惑した表情をしている。


「ん? 何がですか?」


俺は質問の意味がわからず、頭にハテナマークを浮かべていた。


「ロア様と、普通にお話しをしされていたみたいですが…」


「そりゃ、話しかけられれば話しぐらいしますよー!俺そんなコミュ障じゃないっすよー」


俺は少し馬鹿にされたのかと思い、少しムスッとした顔をしてしまったが、ヴァイスさんの表情で、違う意味なのだと思い直した。


ロアと話しをするのが、普通ではないような言い方をするもんだな? 何だ、あいつ嫌われてるのか?

だが、すぐ後に、ヴァイスさんが呟いた言葉で謎が解けた。


[剣聖] ロア これが彼の名前。

俺が出会った2人目のクラウンネームだった。

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