もしものフレンズ―ようこそジャパリシティへ!?―
楢崎沙來夜
第1話 ようこそジャパリシティへ!
静かな朝、ジャパリシティにある住宅街の一角。サクヤたちの家に、いつものように大きな声が響き渡る。
「早く起きなさい!遅刻するわよ!」
「ん…」
布団から飛び出た大きな黄色い耳が、縮こまったようにうなだれる。
「もう8時になるのよ!」
「じゃあ、休む…」
「何言ってるの!コツメカワウソはもう学校に行ったのよ!」
ばさっ、と布団をはがすと、黄色い長い髪にふさふさのしっぽ、キタキツネが現れた。
「やめてよギンギツネ…」
キタキツネは掛け布団を取り上げられてもなお、布団の上で丸くなって出ようとしない。
長女のタイリクオオカミが家を出てから、ギンギツネがもっぱらキタキツネの面倒を見ているが、ほぼ毎日この調子だ。
「まったく…、おまえの妹はいつもこうなのですか」
たまたま泊まりに来ていたサクヤの恋人であるワシミミズクが、呆れたように言う。
サクヤが半笑いで頷くと、どうしようもないやつなのですと言いたげにため息をついた。
「こんなのが将来の姉になるかもしれないだなんて信じられないのです…」
今度は聞かれたくないのか、顔をそらしながらぼそっと呟くと、部屋から出て行ってしまった。
キタキツネには聞こえなかったのか、きょとんとした表情でこちらを見ているが、ギンギツネには全部聞こえていたようで、顔を真っ赤にして、壁に掛かった時計を見ながらそわそわしている。
「も、もう仕事に行かなくちゃいけないから、サクヤ、後は頼んだわよ!」
ギンギツネはそれだけ言うと、そそくさと部屋を飛び出していった。
「お母さん、行ってきまーす!」
「行ってらっしゃーい!」
サクヤたちのお母さんであるアルパカが応える。
「サクヤ、キタキツネ、早く起きなさーい!」
「ほら、起きて」
「はぁい…」
サクヤは眠そうに目をこするキタキツネを連れて、ダイニングに向かう。
ワシミミズクは既に席について、キッチンで朝ご飯を作っているアルパカ・スリを急かしていた。
「早く朝ご飯をよこすのです」
「はいはい、もう少し待っててにぇー」
サクヤとキタキツネが席につくと、丁度朝ご飯が運ばれてきた。
「はいどーぞ!」
「いただきます」「いただきます…」「いただきますです」
ご飯にふりかけ、目玉焼きのシンプルな朝ご飯だが、ワシミミズクは「これはやみつきなのです」と言いながら食べている。
3人はさっさと朝ご飯を済ませた。
「ごちそうさまでした」「ごちそうさま…」「ごちそうさまです」
時計を見ると、もう8時30分になる。
「早く着替えないと学校遅刻しちゃうよー」
「はぁい」
起きたばかりのキタキツネはまだパジャマのままだ。キタキツネは部屋に着替えに行き、サクヤとワシミミズクは外に向かった。
「行ってきます」「お世話になったのです」
「はーい、気をつけてにぇー!」
ガチャッ
玄関のドアを開けると、清々しい青空が広がっている。庭の門を通って道路に出ると、遠くにいつもの4人が見えた。向こうもこちらに気付いたのか、そのうち2人が走って来る。
「ごめん、遅くなった」
着替えに行っていたキタキツネもようやく来た。
「おはようなの…ぐえっ!」
「アライさん大丈夫!?」
走ってきた2人のうちアライグマが盛大にずっこけた。一緒に走っていたサーバルキャットが慌てて駆け寄る。
「アライさーん、急いじゃダメだってばー」
「アライさん大丈夫ですかー?」
遠くから歩いてくるフェネックとかばんは、笑いながら声をかける。
「先輩のくせに、手に負えないのです」
「ゲームなら殺されてたよ」
サクヤたちもアライグマの方に歩きながら、野次を飛ばしている。
アライグマは元気よく立ち上がり、拳を空に突き上げ、宣言した。
「アライさんは大丈夫なのだ!」
「アライさん気を付けてよー」
みんなの笑い声が街中に響き渡る、楽しい1日が今日も始まる。
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