第179話 フェリーニの8 1/2(はっかにぶんのいち)レビュー
8 1/2(Otto e mezzo,1963)-イタリア・フランス合作映画
フェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)監督
現実と虚構の世界が交錯しながら、脈絡に乏しい断片的シーンで構成されていく。
この作品には、脚本がないといわれる、そして、何かしらのドラマが始まりそうで、どの時点でも何も起こらない。それは、いわゆる日常のようであるが・・・
映画監督のグイドは、新作の構想のため、メンタル的な意味合いもあり温泉保養地に来たが、なかなか決まらない内容と、スポンサーに対するストレスが積もっていく。スランプのグイドは、自身の理想の世界へと現実から逃避していく。
「人生はお祭りだ、一緒に過ごそう」というセリフがある。このセリフがラストシーンを暗示する。
そして、*ラストシーンは、それまでの登場人物たち、全員が何の説明もなく現れ、カーニバルのように輪になって踊る。また、混沌とした世界観の中に、多くの暗示のシーンもある。
これらすべては、テンポよいリズムの中に、ランダムに構成された不条理な映像美を感じる、それは次第に観る側には心地良く、さまよっていく・・・
この作品に影響された監督も多い、例えば、デヴィット・リンチもその1人だろう。
この作品と、前年(1962)のブニュエル監督の「皆殺しの天使」とも、部分的には共通項があり、それは・・・不条理に没入していく独特なプロセスがある。
(註)*ラストシーン:フェリーニは、この作品の完成間近に制作会社から「予告編」の制作を依頼される。このとき撮影されたのが、オープンセットで登場人物たちが輪になって踊るというシーンである。フェリーニはこのシーンをラストシーンとすることに決め、再度登場人物たちを集めて撮影を行った。
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