第118話 奇妙な果実(Strange Fruit)と厭世的背景

奇妙な果実(Strange Fruit)

この歌は、アメリカのヒューマニズム運動に過大な影響を及ぼすことになる。それは、不幸を背負った黒人のビリー・ホリデイのセオリーと歌唱力によるものが大きい。その歌には、救いのない事象(厭世)が見えるからだ。


ユダヤ人教師エイベル・ミーアポルによって作詞・作曲された。1930年8月、彼は新聞で、南部で、トマス・シップとアブラム・スミスという2人の黒人が虐殺されている場面の写真を見て衝撃を受けた。それは、詩「苦い果実(Bitter Fruit)」になる。そして、「ルイス・アレン」のペンネームで共産党系の機関紙に発表された。

ビリー・ホリデイが歌った”奇妙な果実”は、アメリカのヒューマニズム運動に過大な影響を及ぼすことになった。


Strange Fruit

Southern trees bear strange fruit,
Blood on the leaves and blood at the root,
Black bodies swinging in the southern breeze,
Strange fruit hanging from the poplar trees.

Pastoral scene of the gallant south,
The bulging eyes and the twisted mouth,
Scent of magnolias, sweet and fresh,
Then the sudden smell of burning flesh.

Here is fruit for the crows to pluck,
For the rain to gather, for the wind to suck,
For the sun to rot, for the trees to drop,
Here is a strange and bitter crop.



Strange Fruit - 訳詞

南部の木は、奇妙な実を付ける

葉は血を流れ、根には血が滴る

黒い体は南部の風に揺れる

奇妙な果実がポプラの木々に垂れている


勇敢な南部(the gallant south)ののどかな風景、

膨らんだ眼と歪んだ口、

マグノリア(モクレン)の香りは甘くて新鮮

すると、突然に肉の焼ける臭い


カラスに啄ばまれる果実がここにある

雨に曝され、風に煽られ

日差しに腐り、木々に落ちる

奇妙で惨めな作物がここにある。

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