蒼の死神は悪魔の狗になる

藤崎湊

プロローグ



 世界は闇に溺れている。


 いつだって世界は残酷で、日の当たらない場所で犯罪や非行が行われる。

 それを誰もが見て見ぬ振りをしている。


 みんな、みんな嫌いだった。

 悪意が蠢く人間社会の中で、蓄積される鬱憤を密かに晴らすかのように他者の悲劇や不幸に興味を示し、他人事のように嘲笑う。


 でも――。


 そのことを分かっていながら何もできないでいる自分が、何よりも一番嫌いだった。

 崖から真っ逆さまに落ちている彼――桐島蒼斗きりしまあおとがそうだった。



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