第肆人『取り敢えずの贈り物《ギフト》』

目の前の光景贈り物の山をちらりと一瞥して、一言。


「……何です、これ?」

「え? 勿論贈り物ギフトに決まっているじゃないか。言うまでもなく、ね?」

「嫌です。廃棄しておいて下さい、嫌な予感しかしません。」

「えー? 貰っておかなくて困るのは君だよ?」

「……贈り物プレゼントの中身は?」

「武器と……服、かな。必要不可欠だからね。」


──…服は、まぁ良いとして……武器、は無いと思う。そう思いたい。


やっぱり嫌な予感ほど的中するものらしい。服はともかく、武器は要らない。欲しくもない。

俺はのだから──…。

俺の反応に目の前の彼はにやりと厭らしい笑みを浮かべる。

そう、まるで『してやったり』とでも言うような…。


「前にも言っただろう? そろそろ『』ってね。」

「あぁそう言えば言ってましたね……って何のことです?」

「時が満ちれば分かるさ、嫌でもね?」


くすくすと見透かすような目で笑いながら、目の前の彼爆笑魔の殺人鬼は手を広げ言う。

「さぁ、贈り物ギフト選びの時間だよ?」と殊更愉しそうに。そして、謳うように、言う。

彼の言葉に俺はもう一度目の前の贈り物の山を見た。とても多過ぎて選べるものではない──そう思っていたのだが、手は自然と両手でそっと持ち上げられるくらいの大きさの箱を取り上げていた。

その行動に普段滅多に表情を崩さない、彼──『ブラッド』──がほんの僅かに目を見開いていた。


「……? これ、は──?」

「……短刀、だねぇ?」

「俺、刀とか扱い方知らないんですけど…?」

「ナイフとそうさして変わらないと思うんだけどなぁ……。」


俺は手の内にある、小振りの刀を静かに見た。

こちらの体温まで吸い取られそうな程に蒼いに空を映すような空色スカイブルーつか、そして…──何よりも印象強いのが、全てを包み込み飲み込まんとする漆黒の刀身。まるで穢れを知らぬその身は酷く、俺の手には余るような気がした。

そう思った俺の考えに気付いたのかそうでないのか、『ブラッド』は独り言のように呟いた。


「まさか刀自身が選ぶとはねぇ……?」

「え…?」

「……あはッはッなぁんでもないよぉ?」


呟きに問いかけようとしたのだが笑顔で躱されてしまった。










──まだ、『青少年殺人クラブこの場所』には俺の知らない事で溢れてるようだった──

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