第5話 年上のチームプレー

本当に大変なのは真南斗先輩に合流してからだった...



「あ、いたいた。真南斗くーん。」

「あ、彩。って、手!!なんで手つないでんの!?ずるい!!!」

「えー?ずるくないよー??だって小町が手つないでいいって言ってくれたんだもん。正直もっと言いたかったんだけどね。」

「?どーゆーこと??」

「あ、お姉ちゃん!真南斗先輩には...」

「あー、うん。そうだね。」

「なに?言って。」

「あー、まぁ、小町のクラスでちょっとしたトラブルがあって...」

「お姉ちゃんがそれで、全然帰ろうとしてくれないから、手を繋ぐから帰ろう?って言ったんです。」

「ねぇ、そのトラブルってさ...いや、なんでもない。それよりさ、だったら俺も手ぇ繋いで帰りたい!」

真南斗先輩、言いたくないの分かってくれたのかな?ごめんなさい。先輩にまで迷惑かけたくないんです。どうか許してください。心の中で謝っておく。

「じゃあ、私と真南斗先輩の間にお姉ちゃんが来るようにすればいいんですよね。」

「!?違う違う!!俺が手ぇ繋ぎたいのは、小町ちゃん!」

「え、お姉ちゃんじゃ...」

「小町の手は握らせないからね!!」

!お姉ちゃんが腕に抱きついてきた。正直、歩きにくいんだけどなぁ...まぁ、いっか。

「っ!彩ばっかじゃなくて、俺にも手ぇ握らせて?」

年上だとは思えないほど「可愛ぃ...」

「え、?」

「小町!?」

「へ?」

あ、もしかして声に出てた!?

ガシッ!

そこへお姉ちゃんに肩をつかまれた。

「いや、へ?ってなってるのも可愛いけど、それより小町!この男に可愛いっていった!?」

この男って...お姉ちゃん...

「小町ちゃんが可愛いって言った、小町ちゃんが可愛いって言った、小町ちゃんが可愛いって言った...」

真南斗先輩も壊れた。なんか、こっちが逆に冷静になってきた...

「あの、真南斗先輩、ごめんなさい。可愛いなんて言って...」

「っ!!小町ちゃんになら何て言われても平気だから!!!」

「...はあ。」

「小町!もう、2人で帰ろう。うん、そうしよう。ね、行こう!!」

「え、や、待ってお姉ちゃん!真南斗先輩も待っててくださったんだし、3人で帰ろうよ!」

「そーだよ、彩!帰りたいなら小町ちゃん置いて帰ってよ!!」

いやいや、だから3人で帰りたいんだって!

「「小町(ちゃん)、どっちと帰るの!!」」

ビクっ!

2人だけの意見で決めないでよ...!

「じゃあ、私は1人で帰る!!」

そう、捨て台詞を吐いて走っていった。

「え、小町!?」

「あ、ちょっ、小町ちゃん、待って!!」

「彩、小町ちゃん追いかけてて!俺、先回りしてくる!!」

「うん!分かった!!また後で!!」



「小町ー!はぁ、はぁ、待ってー!!」

お姉ちゃんが呼んでる声も無視して走っていく。

すると、突然前に人影が

「小町ちゃん、捕まえたっ♪」

「え、」

ポスっ...

「はぁ、はぁ、真南斗くん、ナイス」

「彩もおつかれ」

そんな2人の会話で前に出てきた人影が真南斗先輩だということが分かった。

...やられた。

「ごめんね、小町...。小町の気持ちも考えずに2人で話しちゃって...ごめん。」

「お姉ちゃん...いいよ。私こそいきなり走り出しちゃってごめんね?」

「うぅ、小町ー!!」

ガバッ!

またお姉ちゃんに抱きつかれてしまった。

「小町ちゃん、俺もわがまま言ってごめんね。」

「いえ、大丈夫です。真南斗先輩にもご迷惑おかけしました。ごめんなさい。」

「ううん。むしろ可愛いからもっとしてくれても構わないくらい!」

「ははは、ありがとうございます!」

「よし、じゃあ、帰ろうか。」

「はい。」

「小町、手!」

「あぁ、うん。」

「小町ちゃん、俺も!」

「え...っと、ごめんなさい、真南斗先輩と手を繋ぐのちょっと...」

もし、見られたら他の女の子から何を言われるかわからない。今でさえ危ないかもしれないのに...

「んー...はぁ、まぁいいか、これからで...」

ボソッと上から声が降ってきた。でもそれはあまりにも小さい声だったから...

「え?すいません、聞き取れなかったです。」

「ううん。なんでもない。」

「...小~町!」

「わっ!」

ギュウっと腕に抱きついてきたのは先ほどから手を繋いでいたお姉ちゃん。

...どこのカップルだ。それよりも反対側からの視線が怖い。

「お姉ちゃん、どうしたの。」

「んー?また逃げられたら大変だからなぁ」

「彩、離れて。」

「嫌。」

「小町ちゃん!」

「んー、まぁ、お姉ちゃんにも迷惑かけちゃったので、今日はこれで帰ります。」

「...っ!」

「ありがと、小町!」

「俺、次は絶対に小町ちゃんと手ぇ繋いで帰るから!」

「小町と2人で帰るとか許さないから。」


これで私は、ご機嫌の姉と不機嫌な先輩に挟まれることになったのでした。

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