緒方隆の廻愁奇談録~本章~

しをおう

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――ねぇ?起きて?起きてよ?ねぇ?


 ……う~ん…


 うっせぇなぁ…まだ目覚まし鳴ってねぇだろ?もう少し寝かせてくれよ。


 俺は拒否って布団にくるまり、起きないアピールをする。


 しかし、俺の身体を揺さぶり、執拗に起こす。


――言ったじゃん?今度は起こすって。おはようって言って起こすからって


 言ったっけ?誰が言った?俺は言っていない。言われた側だ。


――忘れた訳?今度は記憶が残ってる筈だけど?ほら、中学の制服ぴったり似合うよ。胸なんて発育途中!


 中学なんてつい最近まで通っていたっつーの。尤も、後半はジム通いで授業は殆ど寝ていたけどな。


 そのジムで言われた早朝のロードワークの時間まで寝かせろっての。


 解ったならもう少し寝かせろ。


 麻美。


「麻美っっっ!?」


 自分で言って驚いて飛び起きた。


 麻美!麻美!!


 姿を捜してきょろきょろすると、背後から優しい気配を感じる。


 振り向くと、そこには首を傾げながらニコーっと笑っている麻美が居た。


――おはよう隆


「……おはようございます麻美…」


 未だ覚醒していない頭ながら、徐々に思い出す。


 俺は戻って来た。


 高校入学のその日に、高校二年の春から…


 戻って来たんだ―

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