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 コーヒーの他に、はちみつやオイル、ドライフルーツも沢山陳列されている。ハーブは乾燥の方が多いが、フレッシュも少し置いてある。国内産にこだわった品は、固定客が多いらしい。それはもちろん商品が良いからと言うのもあるが、オーナーの人柄もあると思う。

「はい、おまっとさん」

「わ、いいんですか」

「僕のオススメの一杯だからね」

 丸いフレームの奥で、にっこりと微笑む。差し出されたのはお盆に乗せられた紙コップ。中には湯気の立つコーヒー。ほら、こういうとことか、ね。

「・・・美味しい」

「花菱くんはスッキリしていて苦味のあるコーヒーが好きだもんね、これは最近入って来たもので一番のオススメだよ」

 ほらね、こういうとこ。だからこのお店に来たくなるんだ。

「それじゃぁ、これも少し下さい。家で大事に飲みます」

「甘いケーキとも合うしね」

「はい」

 そんな事を言われると、ついついこの帰りにケーキ屋さんに寄りたくなってしまう。この帰り道に絶品のケーキ屋さんがあるのだ。

「今日は良い天気になったね」

「はい、紅葉も徐々に色づいて来て綺麗でしたよ」

「急に寒くなったから一気に染まったね。僕も見に行こうかな」

「是非。美味しいコーヒーと紅葉、最高じゃないですか」

 よし、今度の休みはコーヒー片手にゆっくり紅葉狩りでも行くか。サンドイッチでも作って。

「はい、いつもありがとうね」

 店名の入った茶色い紙袋に丁寧に商品を詰めて渡してくれる。

「これはおまけだよ」

「え?」

 そう言って手渡されたのは、ひとつのキャンディー。

「ハーブキャンディー、すっきりするから舐めて」

 包み込むようなその手は、皮が厚くてゴツゴツしていて、あたたかくて優しい、土仕事を一生懸命している男の手だった。自分より少し高い体温に、ホッとするのは何故だろう。

「ありがとうございます」

 カウンター越しに手を振ってくれているオーナーに、俺も手を振った。成人済みの大の男が。でも、恥ずかしくなんてなかった。

 爽やかで優しくて、がっしりと男らしくて、素敵だなぁと思う。あんな風に年を重ねられたら。

 品揃えも良い、コーヒーもハーブも美味い、オーナーの人柄も良い。俺は五年前のあの日から、この店のファンなのだ。

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