第5夜「星」
コンコン
「セバスチャンです…失礼致します」
ガチャリッ
「…お嬢様。昨日のお疲れもおありでしょう。早くお休みに…
な、なんということでしょう。こんな
え? 地面に穴を開けるくらいなら、天井に穴を開けて欲しい…?
…なるほど?
え? 欲しいのは天窓? 星を眺めながらなら眠れる気がするから?
…大変…素晴らしい…思いつき、に……ございます。いえいえ!言い淀んでなど。恐れながらお嬢様、よもやベッドに横になりながら「星がきれい…」などとのたまうおつもりではございませんよね? 「星きれい」は「お湯熱い」くらい至極一般の感想。凡人と賢人を隔てるのは、その一歩先をゆく知識にございます。まずは天文学を学ばれなさいませ。トドのように星を眺めるのはそこからにございます。
え? 星を見るくらいで大げさ?
…おお、お嬢様。なんとお情けないことを! 高等な教育は上に立つ者の務め。お嬢様が最期を「ちょっと色ツヤのいいカルシウム」で終えるか、「天文学の世界的権威となって世界中に惜しまれながらWikipediaに没年月日が記載」されて終えるか。今が瀬戸際でございます。天窓、大いに結構。お嬢様が星にご興味をしめされたこの機に乗じ、僭越ながらこのセバスチャン、盤石の下地を作らせていただきます。
…それでは講義をはじめましょう。天体の明るさを示す尺度は等級と呼ばれ0等を基準に整数または小数を用いて表しその値が小さいほど…
…流れ星よりも速く落ちてしまわれた。お嬢様のわがままを叶えていたら赤字が天文学的数字になりかねませんね。それでは、お嬢様。お休みなさいませ。ーーよい夢を。」
カチリッ
コツコツコツ…
〜就寝〜
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