グラウンドには春以外にも桜が咲く

やまと

第1話「せんぱいっ!サッカーしましょ!」

「ゴーーーール!ブラジルのゴールをこじ開けたのはやはりあの男!

U15日本代表7番! 丹沢 要だーーー!!!!」




朝日が昇りカーテンの隙間から漏れる光によって目覚める

夢を見た、昔の夢、今の俺には何の関係もない夢だ

もーとっくに捨てた夢だ…



そして今日も何もない普通の日常がはじまる




目を覚ました俺は階段をおりてリビングに入り 妹の有希に朝のあいさつをする

「あっ お兄ちゃんおはよー 朝ごはんできてるよ」

俺の1日はこの会話からはじまる

そして、2人で他愛もない話をしながら朝食を食べる、いつもと変わらない日常だ


「そーいえば、お兄ちゃん聞いてる?

美咲さん帰ってくるの」

美咲とは俺の一個下の後輩だ

2年前からスペインへサッカー留学している

スペインからも声がかかる才能の持ち主だ


「おれ聞いてねーぞ、なんで有希は知ってんだよ」

別にいいんだが俺だけ知らないのはちょっと嫌だった


「え、美咲さんから連絡あったから

なんで、お兄ちゃんには言ってないんだろ?

…嫌いなのかな?」


真顔でこんなことを言ってくる妹に優しい俺は怒らずにちょっとふざけてかえす


「さらっと怖いこといってんじゃねーよ

おれのガラスのハートが傷ついたぞ」


そんな俺に対し

有希は少し考える素振りをみせると

「じゃー、キモいからかな?」


「もっと傷つくわ!!」


優しさにも限度があるようだ




そんな会話をして朝食を食べ終わると有希は

「じゃー朝練あるから私はいくね

後片付けしといてねー」

と、言って学校へ向かった

有希は中学校でサッカーをしている2年だがかなりの実力ですでにチームの要になっている


しかし、片付けくらいしろよと思うが

朝食を作ってくれているのは有希なので何も言えない

まー、有希にはサッカーをがんばってほしいので言うつもりもないのだが



片付けを終えて制服に着替える

そして、弁当をカバンに入れて家を出る

少し早かったが今日から高校3年になるので初日から遅刻するよりいいかと思い早めに出た



有希のいる中学校は通り道だったのでグラウンドを少し覗いて見たが練習は終わっていてだれもいなかった

ので高校へ向かうことにした


時間が早かったのであまり人はいなかった


角を曲がると目の前を桜の花びらが通り過ぎた

見上げると満開のとても綺麗な桜があった

春なので桜が咲いているのは当たり前なのだが

その綺麗さに感動した


写真におさめようと思いスマホを出そうとした時


カシャッ

と、シャッター音がした

驚いて音の方をむくと見覚えのある女性がいた


伸ばしてあるきれいな銀髪の髪、整った顔立ち、

姿勢の良い立ち姿


間違いない 美咲だ


2年振りにみた美咲は大人っぽくなっていて

桜を見上げている姿はとても美しかった


見惚れていると美咲が俺に気付いた


「要先輩?」

と美咲に聞かれ我にかえる


「久しぶり」

と返すと美咲は顔をぱっと輝かせてこっちに駆け寄ってくる


「お久しぶりです!要せんぱいっ♪」

と満面の笑みで言う美咲に不覚にも少しドキッとしてしまう


何か言わないとと思い言うことを探していると

美咲のほうから


「せんぱい、久しぶりにサッカーしましょ♪」

と言って来た


この時俺は少し苦い顔をしていたかもしれない

美咲は今のおれの状況をしらないからしょーがないと思いつつも今の俺にその提案はあまりにも酷なものだったからだ



でも、それと同時に美咲の笑顔は俺の日常を変えてくれるんじゃないかという期待を与えてくれるようなとても明るい満開の桜のような笑顔だった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る