02~願いを込めまして~
二人は湖畔を歩く。紅葉で彩られた道を歩く。
そこには――
「ねぇ雪斗、狐の祠みたいなのがある」
「ここらへんは狐がいっぱいだな」
――狐が祀られた祠が。
狐の神様といえば、この日本という国ではお稲荷様が有名で、全国各地に稲荷神社がある。
この地域ではなんでも『願い』を叶える狐の神様が大昔にいたという伝説があるそうだ。
この祠も願いを叶えてくれるのだろうか。
「くれは、ちょっとお願い事をしようか」
「うん、お願いしよっ」
二人は祠の前に立ち、秘密の『願い』を込めて手を合わせる。
『パチン――』
刹那、頭が真っ白になり、今までの十五年の人生が走馬灯のように――
「走馬灯? 死ぬのか」
言葉にならない言葉で驚く間に十五歳の今に辿り着いた。
しかし、ここではただの走馬灯ではなかった。
「ねぇ雪斗、なんか未来が見える」
「おいどう考えてもおかしい」
体は無重力感、目の前は見えず、ただ頭の中で未来が見える。
十五歳後半を境に――
「だんだん体が元に戻ってく」
「くれは大丈夫か?」
――二人は不本意ながら『願い』を叶えるために
「大丈夫、前が見えるように――?」
「おいどこだここどう考えても日本じゃない」
――何処かへ瞬間移動した。
異世界転生なのか、はたまたタイムスリップしたのか。
『雪斗、くれはよ』
二人が謎に包まれた地に足をつけるとほぼ同時に、誰かが話しかける。
しかも名前を知っている。そして頭に狐の耳が。
半人半狐。
「誰だお前」
「誰だお前」
二人声を揃え、初対面の半人半狐の意識を南米まで飛ばして戻すかのように問いかけた。
『お前ら怖い、自己紹介するからさ』
「早くしろ」
「早くしろ」
『幻願稲荷、だよ!』
「幻願稲荷か、まずはここが何処か述べよ」
『尋問みたいだな、この国はヴィシーズ帝国だ』
ヴィシーズなんて21世紀の教科書には載ってないし、過去にあった記録もない。
「次は私ね、国王は?」
『私だ』
「冗談はやめろさもなくば――」
『私だ。ウィシンヌ14世、私だ。』
そう言いながらウィシンヌ14世と名乗る半人半狐は、二人の手を引きながら路地裏から街の中心部へ歩きだした。
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