爪切り

木谷彩

1997/06/24

パチパチと手の爪を切る。

そういえばよく、きみに「足の爪が長い!!」って注意されたっけ。

「靴下にすぐ、穴が開いちゃうんだから」って言って。

そういえばけっこう、長くなってきた。

でも、まだ切りたくはない。


こたつに入ってたら、向こう側からぼくの足をひっぱって。

座椅子に座っていたぼくはずるりとずっこけて。

「強制切除」されるときのくすぐったさは、今も忘れない。


ぼくの爪は鋼鉄で、きみの力では切れなかった。

きみは悲しそうに、「自分でやりなさい」って命令したっけ。


きみのいない時間に伸びていく爪の長さ。

淋しさもこんなふうに、簡単にちょんぎることができればいいのに。


ぼくの足の爪、けっこう長くなってきた。

でも、まだ切りたくはない。

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爪切り 木谷彩 @centaurus

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