○ 変な仏像

 高さは十五センチほど。木彫りの小さな仏像である。

 手に取った時、違和感があった。

 一見するとごく普通の、いやむしろ非常に精緻で美しい弥勒菩薩半跏思惟像である。今にも動き出しそうな指、汚れを知らぬ少年のような胸、衣の襞の滑らかさ。

 蓮太郎は仏像をじっと見つめた。この違和感の正体は何だ? 何か霊的な力でも宿っているのか?

 幾許かの観察の末、蓮太郎は答えに辿り着いた。表情だ。ほんの少し「笑い過ぎ」なのである。「微笑み」と「半笑い」の違いが巧みに表現されている。

 思惟の最中、何か物凄く面白いことを思い出したか言われたかして、必死で笑いをこらえている――そんな口もとだ。もう一押しされたら「ぷっ」と吹き出すに違いない。

 あまりありがたみのない変な仏像だったが、とりあえず持っておくことにした。

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