滝壺生活
森山智仁
序
どどどどどどどどどど。滝壺から放たれる轟音を、男の耳はすっかり聞き慣れている。もはや無音と大差ない。自分の体臭に気付きにくいのと同じに、あるいは不幸や孤独が日常の中に埋没していくように、人は同じ刺激を受け続けるとやがてそれを刺激とも感じなくなる。まこと便利にできているものだ。
男が上体を右に大きく傾ける。その動作は、体操のようにも見えるし、世界への疑問を全身で表現しているようにも見える。しかし、彼はただ滝の上を見上げようとしているに過ぎない。
便宜上、彼を「蓮太郎」と名付ける。
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