第6話 ブルボン 再び ~小さいおじさんシリーズ2

水盆に見立てた黒い灰皿に、何処からか調達してきた雑草の花を浮かべ、傍らに座る三人は物思いにふけっている。

その光景は、あたかも古代中国の水墨画の如き趣である。


ここが俺の4畳半だという現実に、目をつぶれば。


「……さて、今日の茶菓子はルマンド、と決まったわけだが」

色白の、背の低い男が不機嫌丸出しで呟く。

今日も真紅の豪勢な錦を纏っている。差し向かいに座る白頭巾の男は、傍らに身の丈の半分近くはありそうなルマンドを横たえて微笑んでいる。

 ここ最近現れるこの『小さいおじさん』達は、余程ここの居心地がいいのか、見かける頻度が増えつつある。俺の灰皿も、読んでいない本も借り暮らしされっぱなしだ。どうせ借り暮らしされるなら美少女がいいのに。


「当番制は、賢明な案でしたね。毎回無駄な争いをせずに済みます」

「卿が毎回のようにルマンド指名するという落とし穴には閉口だがな…」

端正だが神経質そうな男が、美しい眉の間を押さえて俯く。

「あぁ…散らかる。ルマンド、ほんと散らかる」

「凝りだすと止まらない性分なのです」

水盆に浮かせた蓮華に紙つぶてをぶっつけて遊んでいた豪勢が、顔を上げた。

「今まで、菓子を3等分するのは夏侯惇に任せていたが」

あご髭をひねりながら、豪勢はぼんやりと目を泳がせた。

「……最近、色々自信をなくしてしまってな」

「おや、それは聞き捨てならない。あの自信の塊のような夏侯将軍が」

「貴様が毎回、崩れる菓子を切らせるからだ!!」

なんと、と呟き、白頭巾が羽扇を口元に寄せる。…端正も豪勢に追従するかのように、ルマンドの散らかりっぷりを非難しはじめた。しかし俺が見た限り、夏侯惇が自信をなくしたのは、彼がルマンドに剣を振り下ろしてカケラが散るたびに『うわ…!』とか『あー…散らかる、散らかる!』とかぶつぶつ零していた、どっかの誰かが直接の原因じゃないかと思われる。

「大体、菓子を切るとか武将の仕事じゃなかろう。今後は貴様んとこの人材で何とかしろ」

「うちの人材…ですか」

ふむ…と顎に手をあて、視線を泳がせる。

「居るであろう、貴様のところには。最高の豪傑が!…ほれ、ほれ!!」

豪勢の目が期待に輝く。端正は舌打ちをして横を向いた。

「は…では関羽殿、これへ」

白頭巾がパンと手を打ち鳴らすと、押入れの引き戸がからりと開き、32センチくらいの、髭を蓄えた偉丈夫が現れた。…まだいたのか、こういうのが。彼は大股で白頭巾の至近へ歩み寄った。…近い。喧嘩を売っているレベルで近い。彼は白頭巾を真上から見下ろす位置で、声を掛けた。

「これはこれは、丞相殿。これは、これは。しがない太守に、何ぞ御用向きで?」

……あれ、こいつら味方同士じゃないのか?何故、関羽から『鬼気』というか『遺恨』とかそういうものを感じるのだろうか。関羽は白頭巾の頭上から、頭巾部分をガン見しまくったあと、ふと視線を外して豪勢をじっと見つめ、やがて莞爾と笑った。

「ご無沙汰しております」

「おぉ関羽殿…関羽殿!」

豪勢が感激の余り、声を上擦らせて叫んだ。

「またこうして合い見える日が来るとは…!」

「貴公から受けた大恩、生涯忘れたことはございません。赤兎馬は、よく私に尽くしてくれました」

あのような馬には何度生まれ変わろうと、もう巡り合うことはないでしょう。関羽はそう続けて涙ぐんだ。

「つもる話はまた後ほど…さて、丞相殿。私になにか御用で?」

白頭巾に向き直ったときの表情たるや…閻魔大王がすごい悪い奴を壇上から見下ろす時みたいな感じだ。しかも近い。めっちゃ近い。しかし白頭巾は一切悪びれることなく、静かに…言い放った。

「ルマンド切ってください」

「え!?」

「ちょっ!貴様、待…」

他の2人がドン引きする勢いの直球勝負だ。俺も引いた。…だってこの男、関羽だろう?関帝廟の、青龍偃月刀の関羽だろう?ぐびり、と喉を鳴らして様子を伺っていると、数秒の沈黙の後、関羽の喉がくっくっくと音を立てた。

「くっくっく…ルマンドを切れ、ですか。荊州太守の私に、ルマンドを切れ、と。この青龍偃月刀で切れと!!」

髪と髭がぶわり、と震えて陽炎のように揺らめいた。怒髪天を衝くとか、実物見るの初めてなんだけど。

「ははははは丞相殿の『御命令』でございますからねぇ、ははははは!!」

関羽は燃え立つような怒気を背に、青龍偃月刀をひゅんと振り上げ、すわとばかりに振り下ろした。稲妻の如き閃光、衝撃と巻き起こる風塵。すっげぇ、実物の軍神すっげぇ。

「ひっ…」

端正が短く悲鳴をあげて飛び退った。青龍偃月刀は、白頭巾の真横の畳に、深々と突き刺さっていた。

「おやおや、どうも今日は調子が悪いようだ。青龍偃月刀に振り回されて、少~しよろけてしまったわい」

いやいや、よろけてない。あの一撃、すごい腰入ってた。

「はは、失敗は誰にでもあるものですよ」

白頭巾はこいつはこいつで、まったく悪びれることなく微笑んでいる。分かってんのか、もう少しでお前真っ二つになるとこだったんだぞ。

「関羽殿も、寄る年波には勝てませんな。御気になさらないでください」

「え!?」

「ちょっ!貴様、待…」

関羽は片手で軽々と青龍偃月刀を引き抜き、瞳にぎらりと殺意を宿して再度構えた。今度は大上段だ。

「ははは…次は外しませんぞ。一撃で…一撃で仕留めてくれる!!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ関羽殿!!余も悪かった軽率だった、どうしてももう1度、生きている関羽殿に逢いたくて無茶を云ったのだ、余も同罪だ、余に免じてここは槍を引いてくれ!!」

豪勢が割って入った。ナイス豪勢。関羽も毒気を抜かれたような顔で、槍を降ろした。

「…戯れでございますよ。では、私はこれにて」




ぱん、と軽快な音をたてて押入れの引き戸が閉じられた。何処に帰っていくのか気になる。

「……卿、目に余る嫌われっぷりなんだが、関羽殿に一体何をした」

白頭巾は、にこりと笑って羽扇をはたはた動かした。

「…あの方は、自分より後に入った出世頭は大体嫌ってますよ」

「当たり前だ!貴様、何だあの非礼っぷりは!余が肝を冷やしたわい」

豪勢が白頭巾を怒鳴りつけた。

「ははは…さて、関羽殿がだめならそうですね、彼、呼んでみますか」

羽扇を膝に置くと、白頭巾は再び手を打ち鳴らした。

「張飛、張飛、これへ」

「えっ……」

「ちょっ!貴様、待…」

バン!と乱暴に引き戸を押し開け、一陣の疾風が飛び出した。

「張飛殿、このルマンドを」「えぃいいいいぃああぁあああ!!!」

『張飛』と呼ばれた男は、白頭巾に迫るや否や、血走った目を眦が裂けんばかりに見開き、蛇矛を振り上げ打ちかかった。

「どっせえぇぇえええい!!!」

雷鳴の如き咆哮、そして風圧、舞い散る風塵。蛇矛は誤ることなく、白頭巾の真横の畳に突き刺さった。

「え……えぇええええ!?」

端正がびびる。当然だろう。訳の分からないとばっちりで真っ二つになるところだったのだから。

「ダメだこれ言葉通じんタイプだ、逃げろ」

豪勢が早くも席を蹴り飛び退る。さすが混迷の三国時代を生き延びた雄、決断早いわ。

「やれやれ、張飛殿もだめですか」

白頭巾が背後にすっと手を伸ばし、瓶のようなものを取り出す。張飛が一瞬、ひくひくと鼻を動かした。

「………酒!?」

「喋った!!」

「なんか喋ったぞこいつ!!」

喋ったことにびびる2人を尻目に、白頭巾は酒瓶を大きくふりかぶる。

「ごきげんよう、張飛殿」

そして引き戸の隙間に向かって大きくスローイング。張飛は目を血走らせ、酒瓶を追って走る。彼が引き戸の隙間に走りこんだ刹那、端正がダッシュで駆け寄りぴしゃりと引き戸を閉じた。

「……あっぶねぇ、死ぬとこだった」

そのこめかみから、大量の変な汗が流れ落ちた。…本当、なんでこの人たち、こんな厄介な白頭巾とつるんでいるのだろうか。

「――脊髄反射レベルで敵認定されてんじゃねぇか!何でルマンド切ってもらえると思った!?」

豪勢もだくだくと変な汗を全身から流している。白頭巾独りが、涼しい顔で羽扇を振っていた。

「ははは…もう全身全霊で嫌われちゃってましてねぇ…蜀も滅んだし、もう時効かと思ったんですけどねぇ」

「本能レベルで嫌ってるぞ、あの猛獣は」

「きっと張飛殿本人も、何で嫌いなのか分かってないのであろうな…」

俺にも、もういつから嫌いだったのか分からんよ…そう呟いて、端正は天を仰いだ。



「私だって嫌いですよ。あんな人たち」



白頭巾が、腹の底から搾り出すような声で呟いた。俺からは、羽扇に隠れて表情が見えない。

「お、おぅ珍しいな、貴様がそんな顔をするなんて」

「義兄弟だかなんだか知らないが、国父の身内だから好き勝手されても罰することすら出来ない。口答えやら命令無視は当たり前、悪くすれば丞相の私を陥れるようなことすらする。人を見る目がある劉備殿が、優秀な人材を優遇するのは当たり前だというのに、よさそうな新人が入れば神経質に排斥しようとする。なまじ発言力があるだけに、ある意味魏延よりタチが悪い……」

「うっわ…卿、その顔はならんぞ、その顔は」

ど、どんな顔してんの!?羽扇邪魔だ、見えん!

「大体、彼らが義兄弟の杯を交わしたという桃園の誓い…あの後、彼ら何したと思います?」

俺からは羽扇に隠れて一切見えないが、他の2人がガチでドン引きしているのだけは分かった。うわぁ見たい。きっと歴史に残るようなすごい邪悪な顔してるんだろうなぁ。

「……殺して回ったのですよ、互いの妻と子をね」



―――まじかよ。



「兄弟になる前の人生をリセットするとかなんとか、そんな感傷まかせの下らない理由でそれまで慈しんできた妻と、幼かった子供達を次々と手にかけ、それを美談として酒を呑むたびに涙を流しながら語る…反吐が出ますよ」

「――ま、まぁ色々な考えの人間がいるってことで落ち着け落ち着け…と、とにかく顔を元に戻してくれ」

「全くだ。…暫くは卿の顔が夢に出てきそうだ」

「それは失礼」

白頭巾は、羽扇を下げてにこりと笑った。…どんな凄い顔で語っていたのかは結局分からずじまいだ。

「じゃ、どうしましょうかね…では魏延あたりを」

「呼ぶな!!」

2人が同時に叫んだ。豪勢が白頭巾の頭巾部分をわっしと掴む。

「馬鹿なのか!?死ぬのか!?あ奴が貴様の寝首をかかなかったのは亡き劉備への忠誠心の賜物だからな!?」

「まったくだ!本来、恨み骨髄に入るなんてレベルじゃなかろう!!」

「だって叛骨の相があったんですもの」

頭巾ごと頭を掴まれているが、全く悪びれる様子はない。

「……貴様、まじでこんなに人望ないのか。そりゃ蜀も滅びるわ」

「慕ってくれていた部下も、いるにはいるのですがねぇ…じゃ、呼びますか」

白頭巾が、懐から小さなテーブルベルのようなものを取り出し、軽く振った。すると引き戸がすらりと開いて、瞳の美しい青年が顔を覗かせた。

「お呼びでございますか?丞相様」

曇りのない、聡明な、しかしどこか迂闊そうな容貌。端正は眉を顰めた。

「あの…この童子っぽい青年は…?」

「馬謖だ、あれは」

豪勢は肩をすくめた。

「存じ上げぬなぁ」

「だろうな。…さっきのような騒ぎは起こらんだろうよ。それより、ルマンドもう一本用意しておけ」

「――あぁ」

端正が、浮かぬ顔でルマンドを取りに行った。勿体無いからプチにすりゃいいのに、などと呟きながら。馬謖と呼ばれた青年は、曇りのない瞳をきらきらさせながら白頭巾の元へ、子犬のように駆け寄った。

「このルマンドを切り分ければいいのですね!なるほどなるほど。これはまた、崩れやすそうな菓子ですな。聞いたところ丞相のご友人は、散らかるのがとても嫌いなお方。なれば最適な策は…」

馬謖が、真顔でルマンドを見つめて呟いた。

「――袋に入れたまま、切り分けてご覧に入れましょう」

自信満々に言い放ち、馬謖はすらりと剣を抜いた。そして大上段からルマンドに向かって振り下ろす。

「いぃやあっ!!」

ばりん。ルマンドは袋の中でばらっばらに砕けた。

「そ、そんな!ほぼ縦方向にしか砕けないなんて!」

「こりゃもう…ルマンドチップスだな」

豪勢が笑いを堪えて呟く。馬謖の肩がびくっと震えた。

「わ、私は無能じゃない!!こんな…この!この!!」

パニック状態になった馬謖は幾度も剣を振り下ろす。振り下ろすたびにルマンドは袋の中で粉々になっていく。…いたなぁ、こういう同級生。小学校高学年あたりで。

 で、馬謖がへとへとになって倒れこんだあたりで、白頭巾がすくっと立ち上がり、ルマンドの袋を持ち上げた。袋はくたりと中から折れて、具の足りない抱き枕のように撓んだ。

「丞相!…わ、私はその…」

「ありがとう。…今日はもう帰っていいですよ」




台所から新しいルマンドを引きずって戻ってきた端正は、号泣しながら走り去っていく馬謖とすれ違った。背後でぱん、と引き戸が力なく閉まる音を聞いた。

「……卿は何故あんなのを呼んだのだ」

「あぁ、癒されますなぁ。素直な部下」

白頭巾は羽扇で口元を隠し、くすくす笑う。

「卿はあれだな…本当に、士を見る目がない、というか…」

「私の場合、後ろから飛んでくる矢の方が、余程脅威でしたからね」

能力は普通でいいのです。背きさえしなければ…そう云って、思わせぶりに端正をちらりと見た。端正は持ってきたルマンドを乱暴に放り投げようとしたが、思い直して静かに置く。どうしても雑に振舞えない性質らしい。

「卿を崇拝するような輩は、凡才が多いということだな」

そう、嘲るような声で呟いた。

「腕の立つ部下も、いるにはいるんですけどねぇ…今度のは凄いですよ」

そう云って今度は、笛のようなものを咥えて思い切り吹いた。犬笛的な何かなのだろうか、俺には何も聞こえなかった。しかし、少しすると再び引き戸が乱暴に開かれ、今度はジャングルの奥地とかに居そうな浅黒い巨漢が、ぬっと顔を出した。

「―――ぅえ?」

端正の顔が不快に歪んだ。豪勢が腰を浮かす。

「なんか凄いの出てきたぞ!?」

「ご苦労である、孟獲」

孟獲と呼ばれた蛮族の王みたいな奴は、2~3秒、白頭巾をじっと見つめたかと思ったら突如あらぬ方向に走り出した。

「おい逃げたぞ!?」

「ふむ……」

羽扇を傍らに置き、白頭巾は立ち上がった。

「南蛮制圧の際、彼を降伏させる為に7回捕らえ、7回放ったのです。それ以降、彼に何か頼みごとをする際は7回キャッチアンドリリースを繰り返すのが、決まり事になってしまいましてね。…どれ」

白頭巾はありえない速さで孟獲の前に回りこむと、じたばたと暴れる孟獲を押さえ込み始めた。

「どうどう、どうどう…」

「それまじで7回繰り返すのか!?」

「えぇい止めんか鬱陶しい!!茶が冷める!!!」

豪勢が叫んだ。白頭巾が手を緩めると、孟獲は再びどすどすと走り始めた。

「ご苦労。帰っていいですよ」

孟獲はそのまま、引き戸の隙間に逃げ帰っていった。…何しに来たんだ、あいつは。

「おい、いい加減にしろよ卿!いつになったらルマンドは切れるのだ!」

「あぁー、さすがにもう茶が冷める。次、切れなかったら今日の茶菓子はプチにするぞ」

「仕方がありませんね。呼びましょうか」

ぱん、と一つ手を叩くと、再びすらりと引き戸が開き、堂々たる巨躯の偉丈夫が現れた。縮れた黒髪に挿す簪は、何かの花を象っているようだが、よく見えない。浅黒い肌に、何故か唇の紅さが異様に映える。

「む?…むむむ…」

豪勢の目に、レアポケモンを見つけた少年のような輝きが宿った。白頭巾は、何も云わずにルマンドを指差した。偉丈夫はこくりと頷き、剣を腰溜めにして身構える。一瞬、剣が消えたように見えた。白い閃光が現れて消えたかと思うと、ことり、と僅かな音がして、3つに分かれたルマンドが転がった。…塵一つ、散っていない。

「全く散らかっていない……なんという豪傑か!!」

「さ、茶にしましょうか」

「ちょっと待て、紹介くらいしろよ!!」

豪勢が勢いよく立ち上がった。

「貴様、この御仁は誰だ!さぞかし名のある武将とお見受けするが…」

白頭巾が、にこりと笑った。

「あ、妻です」



「なに――――!!」



2人が同時に叫んだ。俺も心の中で叫んだ。うわ、よく見るとあの服花柄だし、あの口の赤いのは口紅だ。

「あ、あわわわ、余はなんという失礼を…!!」

「そうだぞ卿!いやしくも一国の丞相の妻を武将呼ばわりとか!!」

「貴様とて『なんという豪傑か!』とか口走っていただろう!!」

「ぐぬぬ」

揉めている二人を一瞬ぎろりと睨み、白頭巾の妻は深く一礼して引き戸の隙間に消えていった。




(…ああは云ったが、すごいな、奴のヨメ)

ルマンドを齧りながら、端正の隣で豪勢がぼそりと呟いた。

(不美人だとは、余も聞き及んでいたが…あれもう性的嗜好が疑わしいレベルだな)

(よさぬか、卿。仮にもご婦人に)

豪勢をたしなめ、端正が茶をすする。…一息つくと、ぼそりと呟いた。

(…桃園の3人がやらかした妻子殺しを散々こき下ろしてたが…理由が分かるな)

当の白頭巾は相変わらずお気に入りのルマンドを齧りながら、水盆に浮かんだ蓮華を眺めている。

(ああ…あいつの家じゃ絶対無理だな。あんな豪傑、関羽殿が挑んだって、悪けりゃ瞬殺だろうよ)

(豪傑て…豪傑て言い切ったな、卿)

(だってもう、アレ女な意味が分からねぇよ)

(や、やめ……!)

2人の肩が震え、押し殺したような忍び笑いが漏れた。




―――白頭巾の嫁のインパクトでうっかり忘れそうだったが、俺の押入れの中は一体どうなっているのだ。怖くて開けられない。夏になったら扇風機出したいのに。

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