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度量衡(重量体積)

 共和国一般の度量衡法は制定されていない。

 ただし、いくつかの原則的な律法によって度量衡法は緩やかに統一されている。

 共和国協定は「共和国軍の食料及び消耗資材物資に関する公定取引規則」の内で、脱穀麦粒一パウンを銀一タレルで納入することを求めている。

 実際上、作柄の良し悪しや作物の品種或いは流通相場と言った細かな話題も多いが、軍への優先的な納品は共和国協定の各州への義務であって、建前の上では共和国の穀物相場の基準となっている。


 一タレルは百グレン。

 一タレルは銀貨の重さ。ということになっているが、実際には錆びにくい金合金である半ダカート金貨の重さが基準に使われている。

 脱穀麦粒百粒ということになっているが、実際にはそれよりもやや少ない。

 ただ、痩せた土地では本当に麦百粒一タレル重量ということもあり、必ずしも事実に反するわけではない。


 一パウンは百タレル。

 食事の量の基本になる重量体積でもある。

 一日の穀物標準量として麦粒一万粒。

 戦地の将兵には一日あたり二パウンの調理済み食料を与えることと共和国軍の戦地糧食典範で定められている。

 パン或いはビスケットを一パウン、更に温かい副食を一パウンというのが、戦地における糧食の基本になる。

 もちろん戦地に於いては温かい副食というものが、凍っていない泥水という意味になることは多い。


 一ストンは百パウン。

 一ストンは脱穀麦粒百万粒の重さ。ということになっている。

 だが、実際にはそれよりもやや軽い。

 樽や麻袋の基準になる重量。

 大人なら一つ肩に抱えて持てるのが当たり前で、二つ持てれば力持ち、それ以上は怪力という重量になる。

 一ストンは二駢式四頭立て標準的な軍行李の馬の糧秣の一日基準になる。

 他に水を同じ量。塩を一パウン。


 一グレノルは百ストン。

 これはおよそ小さめの納屋の大きさを連想させるものである。

 寸法の上では三方を五キュビットとする立方体。

 ということになっているが、五×四×二キュビットのマスに入る水と重さの上ではほぼ等しく、大雑把な感覚の上では軍行李の荷台に水を満たした樽を四十ほど積んだ重量ということになる。

 とはいえ、軍行李であってもそれほどの荷を積むことはまずない。

 実際の運用としては半分ほどが馬のための糧秣ということになり、森や山を越える街道の旅の上では馬体と車軸への負担を考え、荷が半グレノルを超えることはほぼない。大雑把な話題として一息で十日を超えるような馬車の旅をおこなうことは難しいということである。


 現代的なメタ視点で置き換えると、

 1グレン=0.05グラム

 1タレル=5グラム

 1パウン=500グラム

 1ストン=50キログラム

 1グレノル=5トン

 という感覚になる。

 だが実態としては基準が厳格に存在する1タレル以外の重量単位は、地域や状況に応じて相応に大きなブレがある。

 例えば石炭袋と穀物袋はともに一ストンを基準にしているが、地域によって同じ寸法の麻袋であるために石炭袋は穀物袋よりも重さにバラツキがある。

 樽はさらにややこしい。

 前工業的な工作段階にある共和国では工房を跨いだ形で均質な品質を保証する術が事実上なく、およそ工房の申告に従うことになる。

 一応基準としては樽の大きさは二ストンの液体を蓄えるということになっているのだが、各種の用途に応じて四分の一ストンから四ストンの容量の樽が作られていて、実際上それを公的に検定規制する手段がない。

 またグレノルの扱いでもわかるように、体積容積と重量がしばしば入れ替わり行き違い混乱を引き起こしてもいる。

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