序:大ニホン帝国のサムライ
ヨーロッパ共和国。国内では、魔術関係の教育機関は三校しか存在しない。
その内、首都アステトにある魔術学校は他二校よりも群を抜いて、魔術の教育に力を入れている。そのため、一通りの学校としての設備は整えられており、広大な敷地内には、何棟もの研究棟や教室棟が建てられていた。
群がる棟から、少し離れた三階建ての建物。そこが、ルシア達が暮らす女子寮だった。
「腰が……もうだめ! あたしの腰は今、世紀末を迎えてる!」
ジネットとルシアの部屋は女子寮三階の一室。そこで、ジネットは自分のベッドに倒れ込んでいた。
「ジネット、座学のときもやってたもんね……」
ルシアのベッドはジネットとは反対側に位置しており、そこにルシアは腰を降ろしていた。
「それじゃあ、今日はどこも出かけないで、部屋で休んでよっか」
「なぁんてね! あたしの腰は今、新世紀を迎えちゃったのさ! っていうか、早く町に遊びに行きたいんだよね! ところで、マルティは!? マルティのバカはどこにいる!?」
「外出許可の紙を持ってくるって言ってたよ?」
ジネットとルシアはルームシェアをしているが、マルティナの場合は、相手がいない。もともと寮には一部屋に必ず二人が暮らさなければならない規定はなかったため、マルティナは自ら一人になることを選んだのだ。
ルシアは隣の壁を軽く叩いてみる。
丁度、ルシアのベッドに面している壁の向こう側がマルティナの部屋となっていた。
在宅を意味するノックは返ってこない。
まだ時間がかかりそうだと思った矢先、不意に部屋の扉が開かれた。
「持ってきたわよ」
入室してきたマルティナは、手に持つ三枚の外出許可書を見せつける。
「わほーい! さすがは、マルティ! 気が利くね! 愛してるぅ!」
外出許可書を受け取り、ジネットは腰痛など感じさせない動きで、マルティナに抱きついた。
「でも、一つ問題があるわ」
マルティナはジネットの体を引き剥がして、外出許可書に視線を落とす。
「問題……?」
ルシアが問うと、マルティナは手に持つ外出許可書を渡してきた。
そして、外出許可書の備考を指差す。備考の項目には、赤文字で注意事項が書かれていた。
「門限がいつもより一時間早くて、港には近づかないように言われたわ」
「なんで? 実習サボったペナルティ?」
ルシアの意見を、マルティナは首を横に振って否定する。
「違うわ。今日は、とある国の外交の船と軍艦が来てるのよ」
「とある国って?」
「ルシア……あなた、テレビでプロレスばっかり見ないで、ニュースも見なさい」
「でも、今は丁度盛り上がってるときなんだよ? 超無敵艦隊“フェリペ・ザ・セカンド”のフェリペ二世さんがヒールレスラーのホーキンズさんに強襲されて、今度リベンジ戦をやるんだよ? でねでね、そこにドレイクさんが――」
水を得た魚のように目を輝かせるルシア。それを制するように、マルティナは彼女の言葉を遮った。
「分かったわ。もう充分よ」
「えぇー、ここからが面白いのに……」
ルシアはしょんぼりとする。
そこに入れ替わるように、ジネットが口を挟んできた。
「それで、その勿体つけてる“とある国”ってどこなのさ?」
「サムライの国、大ニホン帝国よ」
大ニホン帝国。
地理に疎いルシアでも、聞き覚えのある名だった。
「あぁ、スク水の国じゃん」
「サムライがスク水、着るの? 私、サムライって怖い人達かと思ってたけど、それならお友達になれそうな気がする」
「甘いよ、ルシア! サムライは本当はすごく怖いんだよっ! ちょっとでもプライドを傷つけると、ハラキリ・ツジギリ・ツメキリ・ヨミキリ――もう何でも『キリステ、ゴメーン』なんだよ!」
「あなた達、間違ってるわよ。サムライはハカマとかジュードーギとかを着てるのよ。プライドが高いっていうのは知らないけど、外交が下手なのは確かね」
「それじゃあ、港には近づかない方がいいんだね……」
窓から見える海を眺める。
そこには日章旗を掲げる三隻の軍艦と一隻の外国船があった。
いつもと違う風景に、ルシアは謂われもない不安を抱いた。
「サムライが、こんな希望のない国に、何しに来たんだろうね」
+++
港に入港した大ニホン帝国外交船。その船上には、難しい顔をして話し合う男女の姿があった。
男女は、ヨーロッパ共和国首都アステトの地図を二人で持って広げている。
「拙者思うに、やはり初日はここを押さえておくべきかと」
男は港から離れた建物を指差した。
その男の出で立ちは、まさに侍そのものだった。服装は羽織袴の姿。腰に大刀と小刀の両刀を差している。彼を侍としての要素不足な点とするならば、黒髪短髪という髪型と、齢17歳という若さだ。険のない童顔は人ひとり斬れなさそうな雰囲気を醸し出している。
蓬莱清六(ほうらい せいろく)。それが少年の名前だった。
「ヴァカ。もっと現実的な話をしろよ。戦略的に考えて、ここまで踏み込むと食料を現地調達しなきゃいけねぇんだ。時間が限られた上に情報が少ないことを踏まえて、一日目は港近く。あんたが言った場所は、二日目以降」
乱雑な口調の女は、頭ごなしに否定した。
その女の格好もまた大和撫子を忠実に再現しているようだった。桜の花びらが舞うように刺繍された白い和服。長い黒髪は紅色の櫛でまとめられいる。不機嫌そうにつり上がった眉尻が彼女の気質を物語っていた。
清六の双子の妹、蓬莱珠代(ほうらい たまよ)。それが少女の名前だった。
珠代は“異質なもの”を背負っている。
それは巨大な盾。その身はサラシで覆われ、盾にしては長く細い形をしている。その大きさは少女と同じ丈で、それがもし本当に盾であるのならば、巨人が扱うようなサイズである。
「俺達が何のために、ここに来たのか考えろよ」
珠代が強く睨むと、清六は我に返るようにハッとする。
「もちろん、観光のためでござる! 拙者、ヨーロッパ・プロレスは是非とも生で見たいでござるよ!」
「そうだ! そうなんだよ!! 俺達の目的は、それだ! ホーキンズとドレイクの夢のタッグ戦をこの眼で見るために、ここまで来た! 外交なんてクソ食らえだぜ!」
清六と珠代は熱い握手を交わし、意気投合した。
「ちょっと待てぇい!」
そこに怒声が飛び込んでくる。
「蓬莱(ほうらい)兄妹! 我が輩たちは、外交をしに来たのだぞ!? 何、観光気分になっているのだ!」
割って入るのは軍服を着た痩身の中年男性。眼鏡をかけ、薄くなり始めた髪で七三分けをしている。
中年男性――御河辰之兵(みかわ たつのべい)は声を荒らげて、男女に近づく。
「やや、辰之兵殿は観光に行かぬと?」
いきり立つ辰之兵に対して、清六は不思議そうに小首を傾げた。
「清六、駄目だぜ。辰之兵は外交官のくせに、臆病だからな。観光なんてできるはずがねぇ」
珠代はチラチラと辰之兵を見つつ、清六に耳打ちをする。
「聞こえているぞ!」
目を三角にして辰之兵は注意した。
「まったく、貴様らは何を考えているのだ!? 少しは、緊張感を持て! 我が輩達は天皇陛下の命で、ヨーロッパ共和国の救済を目的としておるのだぞ!?」
「分かってるよ、そんなこと。な、清六?」
「もちろん、承知でござる」
先ほどの会話とは完全に矛盾をしたことを、ケロリと言ってのける蓬莱兄妹。
その二人に、辰之兵が頭を抱えた。
「……もういい。我が輩は上陸するが、貴様らはここにおるのだぞ?」
「拙者達は行かなくて良いのでござるか?」
「蓬莱兄妹はここで待機。我が輩をバカにした罰として、今日は上陸できないと思え」
「はぁぁぁぁぁぁあああああああ!?」
「それは殺生でござるー!」
清六が辰之兵にすがりよるが、彼の態度は変わることはなかった。
腕を組み、子供を叱りつけるように辰之兵は口調を強める。
「常々申しておっただろう? 何かをするときには、常にリスクを考えるのだ、と……うがががががっ! こら、清六! 引っ張るでない!」
「拙者! 行きたいでござる! フェリペ二世に会いたいでござる!」
「ならん!」
駄々をこねる清六であったが、その足を引っかけて、地面に転がった。一回転して、大の字に倒れる。
「今日一日、船上で待機だ!」
「うぐぅ……」
清六はその場に縮こまり、拗ねてしまうが、それでも辰之兵の険相が崩れることはなかった。
そこに珠代が近づいてくる。
「辰之兵。ほら、清六がこんなに泣いてるじゃねぇか。連れていってあげろよ」
「常々言いたかったのだがな! 珠代! おまえは何でそんなに偉そうなのだ!?」
怒りが混じった問いかけに、珠代は心外そうに目を丸め、
「え? だって、ほら、俺は偉いし」
いけしゃあしゃあと自分を指差す。
「これまた平然と言い寄ったな! 自尊心の塊が!」
「ギャーギャーうるせぇな……。そんなに怒鳴ってて大丈夫なのかよ?」
「大丈夫ではない! おまえらを叱りつけるのは、リスクが多いのだ! 血圧が上がりっぱなして、今にも倒れそうだ! だが! ここで放置すれば、おまえらは平然と降りてくるだろうから、釘を刺しておるのだぁ!」
最後まで息継ぎ無しで叫んだ辰之兵は、息を切らしてしまった。
「はぁ……はぁ……もう分かったであろう? 今日の待機命令は揺るがん」
「ケチ」
珠代は口先を尖らせる。
「何とでも言え」
「屑。七三分け。むっつり助平。生活習慣病になれ。足滑らせて、額割れろ。ってか、禿げろ」
ギリギリィと辰之兵の歯ぎしりの音が響く。
「我慢、我慢……ここで無視すれば、リスクが大幅に減るのだ。ここは我慢が必要だ」
「ちっ、切れねぇか。まあ、いいぜ。一日くらいなら我慢するからよ」
ジト目で小言を呟きながら、珠代は犬を追い払うような仕草で手を振った。
青筋を立てる辰之兵は、これ以上の会話を望まぬように鼻を鳴らして、きびすを返す。
辰之兵が背を向けた途端、珠代は中指を突き立て「海外式の挨拶」と言った。
「まったく、これだからインテリは嫌いなんだよ。……ほら、清六、起きろよ。起きねぇと逆エビ固めを食らわすぞ」
やれやれとでも言いたげに珠代は視線を落とす――が、
「……ん? ありゃ?」
いるべき人間がいない。
先ほどまで、地面に這いつくばっていた清六の姿が神隠しにでも遭ったかのように忽然と消えていた。
辰之兵は外交船と港を繋ぐタラップを降る。
タラップの下では、ヨーロッパ共和国の外交官が人なつっこい笑みを浮かべて待っていた。
これから大切な会議がある。相手に悪い印象を与えてはならない。
胸の奥に溜まったストレスと闘いながら、辰之兵は外交のために笑みを返す。
未だに蓬莱兄弟に対する怒りは収まりそうになかったものの、それでも年端も行かない子供に振り回されている自分が馬鹿らしく思えてきた。
――あのような子供に、いいように言われるとは……我が輩もまだまだだな。
そう思うと、蓄積されたストレスが空気が抜けるように無くなっていく。
意識を外交へとシフトさせる。
ヨーロッパ共和国との取引を行わなければならない。複雑な国同士が融合した国だけあって、外部者とのコミュニケーションは排他的になっている。文化交流や貿易は行うものの、国の経済は大きく傾いていた。
そんな大ニホン帝国の目的は、軍事的支援による交流だ。
ヨーロッパ共和国のすぐ背後には、大敵の悪魔たちがいる。悪魔との戦いのために助力をするのだ。
しかし、それを行うには、様々な条件をクリアしなければならない。
大ニホン帝国軍の強さの証明。助力による貿易の優先化の交渉。駐在所の土地を確保……などなど。
今から考えるだけでも気が滅入ってしまう。
それでもやらなければならない。それが辰之兵に任された使命なのだ。
「頑張るか」
気合いを入れ、ヨーロッパの港に足を踏み入れようとした。
その瞬間、頭上を“何か”が通り過ぎる。
初めは鳥かと思ったが、その“何か”が目の前に着地したのを見て、辰之兵は驚いた。
「清六!?」
辰之兵よりも早く、清六はヨーロッパの大地を踏みしめてしまった。
さすがに、向こう側の外交官も目を丸めている。
「待て、清六!」
制する声もむなしく、清六はこちらに振り向かずに、どこかへと走り出した。
――まずい。
外交官と護衛以外の上陸許可は貰っていない。
これは非常に危険な状況である。
何か言い訳をしなければならない。
必死に辰之兵はリスクの低い答えを巡らせていると――
「おい、清六! あんただけズルいぞ!」
辰之兵の脇を、すり抜けて珠代が清六の後を追いかけていった。
とっさに辰之兵は止めようと、手を差し伸ばすが、その行為は無駄であった。珠代の腕を掴もうとした手は空を切る。
「待て! おまえら! 国際問題になるぞ!?」
出来る限りの大声で、珠代を呼び止めようとしたが、彼女は立ち止まらなかった。しかし、こちらを振り向き、
「そうならないために、俺が連れ戻してくる! それまで辰之兵は頭でも下げてろ!」
そう告げて、和服姿で巨大な盾を背負いながら器用に走り去ってしまった。
「あぁ……最悪のリスクだ……」
眼前には怪訝顔の外交官。
その目は、状況の説明を要求していた。
+++
それから20分後、大通りからは外れた裏路地に清六の姿があった。
待ちに待ったヨーロッパに着き、我慢しろと言う方が無理なのだ。
後ろを追いかけてきた珠代やヨーロッパ兵士は、すでに撒いており、清六一人となった。完全に追っ手がいなくなったことを察した清六は、町の観光を初めた。
石造りの町は清六にとっては、別世界のようにしか見えず、初めは胸を躍らせて町の中を歩き回る。が、それも束の間の体験だった。
羽織袴というニホン特有の姿は町中では目立ち、周囲の視線を一気に集めてしまうのだ。
よって清六は仕方なく、人気のいない路地裏から移動をすることにした。
「ふぅむ、それにしても……何度見ても面妖でござるな」
建物の間から、不思議な光景が見えている。
遠く離れた地にそびえる黒い壁。時折、壁には赤い雷のようなものが迸る。
その壁の高さは青い空に溶け込むほど高く、横幅はどこまでも続く。まるで天から巨大な暗幕をかけたような黒い壁はユーラシア大陸の内陸を覆い包むように広がっている。
ユーラシア大陸を遠目で眺めたときから、黒い壁は見えていたが、間近で見れば見るほど、圧倒的な光景に気圧されるばかりだった。
「あれがアレシア=エローラが作り上げた結界でござるか。いやはや、こんなことが人間に出来るとは……」
寒気がする。
何百人との命を代価として、350年もヨーロッパの地を守り続けた結界。ユーラシア大陸の60%を覆い、その内側に封じ込められた魑魅魍魎を一片たりとも漏洩させなかった。
それはもはや――
「人の成せる業とは思えぬでござる」
「そりゃあ、悪魔のおかげだからなぉ」
思わぬ返答に清六は、声の主を探した。
声の主は清六の後ろにいた。
路地裏の壁に寄りかかる初老の男。
白髪のもみ髭と顎髭が結合し、ライオンのたてがみのように生えている。浮浪者のようなボロいコートを羽織り、その手には酒の瓶が握りしめられていた。
酒の臭いが清六の鼻を突く。
「悪魔、でござるか?」
初老の男は、異国の服装をした清六を気に留めることなく、話し出す。
「結界を作り出せたのは、悪魔に生け贄を捧げたからだよ……、あ~、気持ちわりぃ……。飲み過ぎたぜ、コンチクショウ」
「悪魔が、悪魔を裏切ったのでござるか?」
悪魔が同じ悪魔に対抗する――清六はそんな図を想像した。
大ニホン帝国にも悪魔に相当する魔族がいるものの、ヨーロッパで“悪魔”と呼ばれる存在は未だ言伝でしか知らない。
「ちげぇよ。悪魔は、代価と契約さえあれば何でもする生き物なんだよ。ちなみに、英雄アレシア=エローラが契約を交わしたのは悪魔ベリアル。魔女ソフィア=カルデナスが契約を交わしたのは悪魔ハルファス。どちらも上位悪魔だ」
「ほほー! ためになったでござるよ、ご老人!」
最後の一言で、初老の男の顔つきが変わった。
「あぁ!? 俺はまだ若ぇんだよ! ピッチピチの56だぞ!?」
何か触れてはいけない話題に触れてしまったらしく、初老の男はまくし立てる。
「せ、拙者は17でござるよ?」
動揺した清六は、ひとまず自分の年齢を言ってみる。
「あぁ!? 三倍しても届かねぇじゃねぇか、コノヤロー! 若ぇからって、調子に乗んじゃねぇぞ!」
「調子になんか乗ってないでござるよ!?」
「ったく、この頃のガキは、俺をすぐに年寄り扱いしやがる……ブツブツ」
一人、独り言を言い始めた初老の男。
清六は逃げようかと思い、背を向ける。そのまま走りだそうとしたところで、清六を呼び止めるように歌が聞こえてきた。
「ん?」
女性の声で紡がれる聞きなれない歌。透き通るような柔らかい歌声に笛の音が混じり、調和されていく。
それはどこか切なく、どこか暖かい――唄だった。
「おぉ、ようやく始まったな」
いつの間にか機嫌を直していた初老の男が酒を煽りつつ、呟いた。
「この歌、なんでござるか?」
「知らねぇ」
「し、知らぬと……!?」
まるで待ちわびていたような反応だったので、訊いてみたのだが、初老の男が泥酔状態であることを失念していた。
酔っぱらいは何でも有りなのだ。付き合うだけ無駄である。
「俺が何でも知ってると思うんじゃねぇよ。でも、まあ、この歌のことは知ってるんだけどな」
「嘘でござったか!」
初老の男はケラケラと笑う。
「知りてぇのなら、先に進んでみな。歌姫がいるからよ」
「うむ……人から与えられるだけでは駄目でござるな。ご老じ……えっと――」
「ギードだ。まあ、こんな飲んだくれの名前なんか、どうでもいいがな」
「ギード。なかなか格好が良い名前でござるよ。それではギード殿、拙者はこれにて失礼」
一礼し、清六はギードが示した方向へと進む。
前に進むと、歌声が大きくなり、声音の美しさが鮮明になっていく。
すぐに路地は終わりを迎え、一瞬にして風景が変わった。
路地を抜けると、緑の丘が広がっていた。
「ここは――墓地でござるな」
緑豊かな場所には、何百との墓がある。
その墓地の中央、小さな人影が見えた。
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