第2話 鋼の心は母心

「どう考えても女子高生の食事量じゃないよね。」

「えー、だって全部ビームで使っちゃうんだもん仕方ないじゃーん」

 ピザとパスタを3人前ずつ完食して、チョリソーとパフェまで頼んでご満悦のヒカリ。

 それだけ食べてもむしろスリムな方であるのは、本人の言う通りビームがカロリーを消費しているからという理由で、そんなわけあるかいとも思うんだけど実際に痩せているので仕方ない。

 その代わりに、ビームの発射口である胸部付近は妙に脂肪が発達していて、それはビーム発射の反動から体を保護しようという人体の働きらしいんだけど、結果的に超巨乳のモデル体型を何の苦労もなく維持しているということで、これは全世界の体型に悩む女性を代表して、サラダとドリンクバーしか頼んでない私が天誅的な何かを与えるべきではないだろうか。

 そんなことを考えていたら、急にヒカリがテーブルに突っ伏し、やがて苦しみ始めた。

 天誅的な何かだろうか。

 いや食べすぎだろうか。

「ユキ……やばい出そう……」

 真っ青な顔で訴えてくるヒカリ。

 食べ過ぎだろうか。

 ……とぼけても仕方ない、私はヒカリを担いで席を立つ。


 賢明なる読者の方もお気づきかと思いますが、ここでヒカリが言っている「出そう」というのは何を隠そうビームのことなのです!(ババーン!)(重大な事実が明かされたときの音)


 なんということでしょう、このビームは本人の意思に関係なく不定期にエネルギーが充填完了されるという代物なのでした。

 そのおかげで憧れの先輩に告白したと同時に先輩が黒焦げになったり、ソフト部の試合に出たらバックホームにレーザービーム(ダブルミーニング)を打ち込んだり、学校を占拠しに来たテロリストがまとめて吹き飛ばされたり。


 そんなになっても普通の学生生活を送ろうとしているヒカリの根性は凄いなって思うけども。


 さて、このビルの屋上は施錠されてて立入禁止だけど、今は緊急事態ということで私の必殺サイボーグ鍵開けにより侵入させてもらいました。サイボーグはいろんなことができる。

 付近を飛行中の航空機が居ないことを確認して、苦しげなヒカリの胸をペローンと出して銃口を空に向ける。

「はい発射ー」

 虚空に向けて放たれたビームを私が空間ステルス機能で隠蔽する。サイボーグはいろんなことができる。

 そしてヒカリはようやく安堵の表情になる。

「えへへ……ありがとうユキ、ごめんね……」

 力なく笑うヒカリを見て、胸がキュっとなる。(ビームは出ない)

 ヒカリは、今のような苦しい思いをずっと続けているのだ。また、ヒカリの放つビームは未知のエネルギーとして、けっこう独裁国家やら軍需企業やらに狙われたりもしているのだ。


 その事の起こりは、私達がまだ幼かった頃、私が拾った綺麗な石をヒカリにプレゼントした時のこと。

 その石をペンダントにしてヒカリの首にかけた瞬間、メリメリと音を立てて石が体内にめり込んで、それ以来ヒカリは光線少女。


 ……うん、まあ原因が私にあるということでもあるし、さっきの「なんの苦労もなく」というのは撤回して、全世界の体型に悩む女性は私の顔に免じて許してもらうことにしようね。

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