第十七話 「ウィンズ・オブ・チェンジ!! 」

■■■自殺ランブルのルールその17■■■


 自殺ランブルの参戦者は、基本的に眠気に襲われることはない。




■■■ 第十七話 「ウィンズ・オブ・チェンジ!! 」■■■




 自殺遊園地(スーサイドパーク)の地下通路に突如現れた無数の飢獣(モンスター)達。





 ボク達"強奪チーム"は、仲間の一人「志雄 努(しお つとむ)」さんが敗退させられてしまって意気消沈してしまったけど、何とか再び士気を上げなおして、四方八方から攻め襲う飢獣(モンスター)達と応戦するコトになった。





「このヤロウ!! 次から次へと湧いてきやがって!! 夏場の雑草みてぇにキリがねぇな! 」




 悪態をつきながら、須藤 大葉(すどう おおば)さんが次々と飢獣(モンスター)をなぎ払っては塵(チリ)に返し続けている。1体倒せばまた1体増え、2体倒せば2体増え……と、どうやらコイツらは"倒した分だけ増え続ける"という性質があるらしい……





 それだけでも厄介なことこの上ないのだけど、さらにこのおぞましい集団には"物理攻撃しか通用しない"という恐ろしい特徴を持ち合わせていることも分かった。





「NO! 私(ゆきの)の吹雪が効けばラクチンなのにぃ~! 」





 チームの一人、雪乃 哀(ゆきの あい)さんが、"最寄り駅がもっと近くにあればいいのに"くらいの緊張感のないニュアンスで文句を垂れたように、彼女が持ち合わせている【特殊能力(スーサイダーズコマンドー)】で吹雪を起こせば、一度に多くの飢獣(モンスター)を氷漬けにすることが出来るのだけど……それは無駄だった。





 ヤツらは凍って身動きが取れなくなってもすぐに自爆して塵(チリ)になり、また新たな飢獣(モンスター)が生まれてしまうので全く意味が無かった。





 そして同じように、須藤さんの"毒"も一切通用しないという無敵ぶり。もしかしたらこの飢獣(モンスター)達は、炎を操る最強の参戦者、本草 凛花(ほんぞう りんか)の天敵とも言えるのかもしれない。





「つべこべ言ってないで、どんどん攻撃しろ! やられるぞ! 」





 しかし……その無敵ぶりも、あくまで物理的なダメージ以外に言えるだけの話だった。




「そらそらそら!! "武器"ならいくつでもあるぞ!! 」





 強奪チームのリーダー瀬根川 刃(せねがわ じん)の"物を刃物に変える"能力のおかげでボク達は全員、強力な刀(かたな)や剣(つるぎ)を使って次々と飢獣(モンスター)を叩き斬って塵(チリ)に変えることができた。





「うおおおおッ!! どけどけどけぇ!! 」





 そして、武器を持ったメンバーの中でも、須藤さんと車 走栄(くるま そうえい)さんは段違いの強さを発揮していた。





 プロレスラーの須藤さんは、元々の"腕力"が半端(ハンパ)なく強いので、毒攻撃が通用しないコトなんてまるっきり問題にならなかった……瀬根川が作った分厚い西洋剣(ロングソード)をまるで小枝のように軽々振り回しては、あっという間に1ダースの飢獣(モンスター)を塵(チリ)へ変えるほどに無双の強さを発揮していた。





 「行きますよ!! 」





 そして、走栄(そうえい)さんは高速移動出来る能力と、刺突用の剣である"レイピア"の組み合わせで、部屋の隅々まで駆け回りつつ敵を串刺しにして排除し続けた。自分の知る限りでは、物理的な攻撃では最高の破壊力を誇る【暴走王の孤独 (ランナーズハイ)】と、刃物の組み合わせはこれ以上ない好相性の戦術に思えた。





 しかし、そんな中……





「ゆ……雪乃、大丈夫か!? 背中はおれが守ってるから安心しろよ! 」


「錬(れん)! そんなコト言いながら私(ゆきの)の後ろに隠れてないで! ちゃんと戦ってよ! 」





 雪乃さんと墨谷 練(すみたに れん)さんの"死後カップル"コンビは、自分達の身を守るコトで精一杯の状況だった。雪乃さんは能力で氷の棺を降らして敵を押しつぶしつつ、手にしたサーベルで何とか戦うコトが出来ていたが、一方の錬さんは自分自身の能力である、"ガス攻撃"を封じられて防戦一方の状態だった。





「ひええええぇぇぇぇッ!! 来るな! 来るな! 」





 ファッション雑誌のモデルを思わせる端正なルックスとは裏腹に、ちょっと情けない声を張り上げながらナイフを振り回す錬さん。そんな彼を守るように雪乃さんは能力を使って必死にサポートし続けていた。これが原因で彼女が彼氏(れんさん)に幻滅していなければいいんだけど……





 と、ボク自身もこんな風に周囲ばかり気にしてはいられない。無尽蔵に迫りくる飢獣(モンスター)の猛攻から身を守らなければならない…………いくぞッ!! 





「飛べぇぇぇぇッ!! 」





 ボクの能力【吹けよ風、呼べよ痛み(ワン・オブ・ディーズタイムス)】は、この状況下において、とても優秀な効果を発揮していた。





 床に作り出した"右手"の紋章内に敵が踏み入れれば「ズギュリュゥゥゥゥゥゥゥゥン!! 」と強烈な風が吹き上げ、そのままバンジージャンプで引っ張られるように天井に叩き付けるコトが出来た。上手くすれば一気に3体は蹴散らせられる上、倒し損ねた相手は瀬根川が作ってくれた日本刀で対応すればよかったので、攻守において隙が全くない。(自分でいうのもなんだけど……)





 しかし、こんな具合に敵をバッサバッサと攻め続け、飢獣(モンスター)恐れるに足らず! と言いたくなったところだったが、そうもいかない。ボクは戦闘が始まって以来、ずっと一人の"女性"を庇(かば)い続け、片時も目を離すコトができずにいたからだ。





「お……大沢(おおさわ)さんッ!? 危ないッ!! 」


「え? 」





 ボクと同じ能力を持つ、16歳の大沢(おおさわ)さん。彼女にとってこの戦いが初めての戦闘だったらしく、自分の【特殊能力(スーサイダーズコマンドー)】の使い方さえしっかり把握していなかった……そんな彼女が、今まさにボクの目の前で"左手"で床に触れて紋章を作ろうとしていたので大変だ! 





「ごめん! 」


「ふぐッ!? 」





 少々手荒で申し訳なかったけど緊急事態だ! 仕方がない。ボクは彼女をタックルで突き飛ばし、その周りを取り囲んでいた飢獣(モンスター)達の足元に"右手"で紋章を作り、吹き上げる烈風で敵を天井に叩き付けた。





「危なかった……」





 ボクは倒れた大沢さんを助け起こし、彼女に説明した。





「"左手"の紋章は"自分"を吹き飛ばすから、ここで使ったら自分が天井に叩き付けられちゃう……気を付けて」





「いてて……ごめんね舞台くん……足引っ張ってばっかで……」





 涙目になり、声を震わせながら謝る大沢さん。その子犬のような切ない表情に、ついつい「ボクがこの子を泣かしてしまったのか……!? 」と考えてしまって、動揺してしまった。





「ち、違うよ……きみのせいじゃなくて、何というか、こんな場所で無理矢理戦わされているこの状況が悪いのであって、それに初めての戦いでこんなメチャクチャな数の怪物に囲まれてその、あの……」





 慌てふためきながら、どうにか大沢さんの機嫌をとろうとするボク。こんな状況で呑気な空気を作り上げていたボク達を叱責するように、空気を切り裂く強烈な振動が、頭上を横切った。





「お前ら、仲がいいのはいいけどな、時と場所を考えろって」





 その振動の正体は、瀬根川が振り回した日本刀によるもの。知らぬ間にボクと大沢さんを取り囲んでいた飢獣を、彼が斬撃で払いのけてくれたのだった。





「す……すみません……」





 瀬根川の少し嫌味な物言いに対し、ホンのちょっぴり頭にきてしまったけど、緊張感が欠けていたことは事実だ……ボクは気を取り直して戦闘態勢を作ろうとして日本刀を握り直すと、ここでようやく戦闘状況が一変してしまっているコトに気が付く。





「ちくしょう……追い込まれちまったぜ……」





 須藤さんをはじめ強奪チームのメンバー全員は、戦場としていた"拓(ひら)けた空間"の壁端にいつの間にか追い込まれてしまっていた。





 全員で背中を合わせて立ち構えるボク達に対し、じりじりと歩み寄る飢獣(モンスター)達。ヤツらは一切の息づかいもなく、感情の全く読めない表情でこちらをジッと見つめている。それがひたすらに不気味だった。まるで、般若の面が飾られた密室に閉じこめられたかのような圧迫感だ。





「蹴散らしながら本体を叩くつもりでしたが……敵の数が多すぎてこの空間から出るコトすらできませんね……」





 走栄さんの言う通り、飢獣(モンスター)達はあまりにも多すぎた。さらに言えば、初めにこの空間から脱出する為の4つあるドアの内3つを氷で塞いでしまったことが仇となってしまったようだ。【中央管理局】に続く道と、敵をおびき寄せる為に開けた出入口が唯一の通路だったが、そこには大勢の飢獣(モンスター)達が、人気ラーメン店の行列の如くひしめき合っていて突破できそうにない。





「"質より量"を体言してるなコイツらは……数の暴力だ」


「耐震構造の一軒家もシロアリの大群にはかなわないってコトか? 」


「そういうこった須藤。どうにかして一気に駆除できねぇか? 」


「シロアリなら煙でも焚いて燻してるとこだが、相手は土の人形だ。やっぱりコイツらを安い給料で動かしてるオーナーをシバかねぇとな」





 須藤さんと瀬根川がこんな状況にも関わらず軽口を叩き合っている。お互いに気の合わないところの多い二人でも、年長として、リーダーとして、その勤めを果たして何とかチームを落ち着かせようとしているコトを察した。





 じりじりと飢獣(モンスター)に距離を詰められ、チーム全員が焦りをつのらせている。練さんはさっきから雪乃さんの身体にしがみついて震えているし、ボクの右手はいつの間にか大沢さんの両手に包まれていた……女の子に頼ってもらえている状況は正直うれしかったけど、今はそれどころじゃない……どうにかして本体に攻撃できないか……? 





「舞台くん……」





 突然ボクが考えを巡らせている脳内に、オカリナを思わせる軽やかな声が割り込み、意識をずらされた。





 ……大沢さんの声だ。





 彼女は怯えた表情をこちらに向けて瞳をゆらゆらと輝かせていた。それを見れば他の言葉なんていらない、大沢さんがボクに助けを求めているというコトは一目瞭然だ……





 そしてその時、頭の中にしまっていた記憶が、勝手に沸き上がるように導かれ、どういうコトかボクは「本草 凛花(ほんぞう りんか)」のコトを思い出していた。





 セーラー服に身を包み、何人もの参戦者を火だるまにして敗退させていた、あの猛者……強者である本草 凛花の姿がなぜ沸き上がったのかはわからない……





 でもこの瞬間にボクは、飢獣(モンスター)に囲まれたこの状況を打ち破るための"ある作戦"を思いついたコトは確かだ。





 ……本草 凛花なら、こんな時どうするだろう? そう思った時に偶然閃いた突破口が見つかった! 





 それに必要なのは……[風]と[ガス]だ! 









「大沢さん! 練さん! 手伝ってください! 」





 ボクの呼びかけに、大沢さんも練さんも睡眠を邪魔された猫のような顔でこちらを見返し、同時に残りのメンバーも「何事か? 」と少し驚いていた。





「"作戦"があるんです! 」













「おい! ホントにこれでいいのかよ!! 」


「つべこべ言わずに舞台を信じろ! 手ぇ動かせや瀬根川」


「そうしましょう。他に良い方法もなさそうですし」






 ~作戦の手順その①~


 まず瀬根川、須藤さん、走栄さんらに、この場所にいる飢獣(モンスター)を出来るだけ多く蹴散らしてもらう。敵がすぐに増えていくコトは想定内だ、その間の数秒の隙があればいい。





「それじゃ"裏技"のやり方を教えるよ! 大沢さん! 」


「う、うん! ……うらわざ? 」





 ~作戦の手順その②~


 敵をある程度片づけるコトができたら、"練さんを除く"チーム全員を一カ所にまとめ、なるべく身を寄せ合ってもらう。





「大沢さん、まずはなんでもいいから両手の平を"濡らす"んだ」


「"濡らす"!? 舞台くん……そんな……こんなところで」


「つっ……唾(つば)でいいんだよ!? 」


「……え? ああ! そうだよね! 唾だね! そ、そうだね! 」





 大沢さんが何を勘違いしていたかはさておき……





 ~作戦の手順その③~


 ボクと大沢さんが【吹けよ風、呼べよ痛み(ワン・オブ・ディーズタイムス)】の裏技である"風のシールド"を一緒に発動させ、それと同時に練さんが全身から"ガス"をまき散らす。





「大沢さん、両手を濡らしたら、次に右手と左手を合わせて能力を発動させるんだ。タイミングはボクが合図する」


「わかった! さっきみたいに紋章を作ればいいんだよね? 」


「わわッ! 今発動しちゃ駄目だよ! 」





 左手を地面に押しつけようとして、あやうく能力を暴発させようとした大沢さんを抑え、とにかく……作戦の準備は整った! 





 この作戦はとどのつまり、練さんのガス能力【銀白のけむり(シルバーヘイズ)】で、この地下通路内に潜んでいるであろう能力者本体を叩く。それだけだ。





 でも、それにはいくつか問題があって、一つはそのガスの効果範囲がそこまで広くなく、広大な地下通路の隅々までガスを蔓延させることが難しいコト。そして二つ目は、そのガス攻撃はボク達チーム全員にも及んでしまうというコト。





 その二つの難点を解決するため、ボクと大沢さんの"風のシールド"が必要になるのだ。





 シールドを張れば、仲間を練さんのガス攻撃から身を守るコトができる上、その時発生する風が、巨大な扇風機の役割を果たして、地下通路の隅々までガスを行き渡らせるコトができる……ハズだ! 





「……ゆ、雪乃! まぁ見ててくれ! おれの激シブな活躍ぶりを! 」


「ごめんねぇ~練。私(ゆきの)今何も見えないのー! 」





 練さんは作戦のキーポイントに抜擢され、雪乃さんにカッコいいところを見せたかったのだろうけど、あいにく彼女はガス攻撃から完全に身を守るため、"氷の棺"を作り出してその中に閉じこもってしまっていた……





「う…………いいさ! 雪乃! それじゃまぁ"心の目"で! しっかりと見ていてくれよ! 」





 この作戦は練さんだけが無防備にさらされる。飢獣(モンスター)が彼を襲わないうちに、迅速にコトを進める必要がある! 





「それじゃいきます! "アース作戦"開始! 」





 ボクの合図で、練さんは「よっしゃ! 」と、瀬根川から借りた剣を地面に突き刺し、それを支えにしながら全身に気合いを込めると、身体から加湿器のようにガスをモクモク発生させた……よし! ボク達も続こう! 



「大沢さん! 」


「うん! 」





 あとはボクと大沢さんが風を発生させるだけ! 右手と左手で合掌させて"裏技"を発動! みんなを守りつつ、敵を攻撃…………





「お、大沢さんっ!? 」


「いくよ! コレでいいんだね? 」





 しまった……大沢さんは、ボクの説明を少し間違って解釈してしまっていたらしい……彼女はあろうことか"自分の両手"と"ボクの両手"を掴み合わせてしまっていた。まるでプロレスラーがお互いに手を組み合って、力くらべをしている時のような形になっている。 





 ヤバいぞ……練さんのガスはもう出てるし、今から説明し直すとなると……ええい!! もういい! ヤケクソだ!! 





「こ、これでいいよ大沢さぁん! 能力を出してぇ!! 」


「うん!! 」





 ボク達の両手に紋章が浮き上がり、空気が揺れる乾いた音が能力発動のイントロを奏でる。風の流れが全身を這い周り、優しく、力強く撫(な)で回す感触。





「ビュオオオオォォォォォォォォッグ!! 」





 怪我の功名というヤツだろうか? "裏技"は無事発動された。それも、2つの球型シールドを生み出したのでなく、1つの巨大な球型シールドを……! 





 どうやら、この能力は2人で協力して発動させるコトにより、単独で一つずつ出すよりも強力なパワーを生み出すことが出来るようだ! このおかげで想定していたよりも強い勢いの風を発生させることが出来た! 





「うおおおお!!!! 雪乃ぉぉぉぉッ!! 」





 そして1人、シールドの外でひたすらガスを放出しつづけている練さん。彼は剣にしがみつきながら何とかこの風圧に耐えているが、それに対して飢獣(モンスター)達は全く動じていない。多分、一般成人男性クラスの身体(サイズ)からは想像できないほどに体重があるのだろう。のっしのっしと、練さんにゆっくり近寄っていく。





「うわああああぁぁぁぁ!! くるな! くるなぁ!! 」





 あっという間に敵に囲まれてしまった練さん。マズイ! このままじゃやられてしまう! ここはいったん作戦を中断して彼を助けないと! 





「練さん! ガスを止めてください! 作戦中止です! 」





「うわああ!! 近寄るな! お化けぇぇぇぇ!! 」





 これはピンチだ……焦りと風の音のせいで、練さんの耳にボクの声が届かない……! どうしよう! このままじゃ練さんがやられてしまう! かといってシールドの発生を止めたら、ボク達がガスで苦しむことに……





 あちらを立てればこちらが立たずの状況……どうすればいい!? 





「レェェェェンッ!! 」





 突然、騒音をくぐり抜ける艶やかな印象の声が聞こえた……ふと、横に目をやると、そこには氷の棺のフタをちょっと開いて顔だけ露出している雪乃さんの姿があった……ちょっとシュールな絵面だ。





「雪乃!? 」





 練さんには、周りがどんなにうるさくても彼女(ゆきのさん)の声だけはしっかり耳に届くようだった。





「練! 頑張って!! これがうまくいったら……」


「うまくいったら……? 」









「あとで………………してあげるからぁ!! 」









 今、彼女はなんと言ったのだろう……? ちょうどボクはその瞬間に風の音に気を取られてしまい、よく聞こえなかった……一体どんな言葉を練さんに投げかけたのか? 





「ホ……ホントか? 雪乃! 」


「YES!! ホントのホントだって! 」





 気になる……2人のやり取りがわからなかったのは、どうやらボクだけだったようだ。なぜなら、目の前の大沢さんは顔を真っ赤に染め上げていて、須藤さんは笑顔ではしゃいだ顔をしているし、瀬根川はどこか気まずそうだ……走栄さんはアゴ髭をしきりにいじり始めている……一体何が……? 





 1人だけ取り残されて疑問が晴れないボクだったけど、雪乃さんのその提案は確かな効力を発揮していたコトは確かなようだ。





「うおおおおおおおおおおッッ!! 散れ散れ散れ散れぇ!! 」





 さっきまで情けなく怯えていた練さんが、しきりにハッスルし始め、ガスをまき散らしながら剣を振り回して飢獣(モンスター)をどんどん叩き割っていく! すごい! まるで死にかけて地面に落ちていたセミが突然暴れ出したかのような迫力だ! 





「雪乃ォォォォ!! 心(ハート)を燻して待っててくれぇぇぇぇ!! 」





 覚醒した練さんの活躍により、放出したガスが通路全体に行き届いたようだ……次々と周囲の飢獣(モンスター)は地面に吸い込まれるように形をくずしていく。1体……また1体……次から、次へと……! 





「ハァ……ハァ……」





 そして……いつの間にか周囲にあれほどいた飢獣(モンスター)の姿がキレイに消え去っていた。つまり、どこかにいるであろう飢獣(モンスター)を操る能力者本体に、ガスでダメージを与えることができたのだ! 





「やったぞ……やったぞ雪乃ぉぉぉぉ!! 」





 ガスを止め、練さんが高らかに勝(か)ち鬨(どき)を上げた! ボク達のアース作戦は成功したのだ!! 




■■【現在の死に残り人数 17人】■■




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