グレゴール・ザムザは金属たわしの不安な夢を見るか
こんな夢を見た。
金属たわしに姿を変えてしまう病が流行っている。
ウイルスの保有者に接触すると感染するらしいが、ただウイルスを持っているだけでは発症しないという。精神的な何かが発症の引き金になっているらしく、心の同じ部分が柔らかい人が感染すると、やがて金属たわしに姿を変えていくらしい。
私の目の前でも、数人が鈍く銀色に光る、くしゃくしゃのたわしに次々と姿を変えていった。この調子では恐らくウイルス自体はとうに私にも感染していることだろう。
発症に関しては大丈夫だと気を強く持とうとするが、心のどこかでは漠然と己の心の持ちように不安を感じていたらしい。認めたくはないが、押さえ込み隠していた私の心の柔らかき部分が、正に今までの発症者と同じ部分ではないのかと、半ば無意識に感じている。
その証拠というわけではないだろうが、もし朝私が消えていても、ソファベッドの上に金属たわしが落ちていたら自分だから回収しておいてほしいと、心の中で同居人に密かに願っておく。
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