銀で殴る


 友人Mが、こんな夢を見たそうだ。


 自室で棒状の何かを振り下ろしては、ゾンビを殴っている。

 手にした獲物は何なのか、果たして己でもハッキリと分からなかったが、銀色の長いものであることだけは認識できた。恐らくは銀色の上質な傘か、或はゾンビ映画によくあるバールや鉄パイプのようなものであろうとは思うものの、結局何かは分からないまま、迫りくるゾンビに無心で銀色のそれを叩きつけていた。

 閉ざされたままの扉から察するに、ゾンビはドアの対角線上にある窓から入り込んだものであろうと思われる。二階にどうやって上がって来たのかは分からないが、ひとまず部屋に何の断りも無しに上がり込んできた無粋な輩は一人だけのようだ。窓から見える外の道路では、無数のゾンビがうろうろと歩き回っているのが部屋の中からも覗える。

 大通りから少し入り組んだところに建つMの家の前で、これほどまでに人影があるのも珍しい。

 そう思いながらも、黙々と部屋の中のゾンビを銀色の何かでMは殴り続けている。


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