きりがくれない
カゲトモ
1ページ
これぞ秋晴れと言った、カラッと晴れた空になった。先日まで雨が降ったり気温が低かったりしたのに、今は夏に戻ったように日差しが強い。秋の空は大忙しだ。
「ふぅ」
この前の反省を生かし、今日は厚手のパーカーを羽織って来たが、無意識に袖をまくっていた。何か飲みたいなと思うが、ホットにするか、アイスにするか悩みどころだ。
「確か新作が出たとかなんとか」
某有名コーヒーショップの新作が美味しいとミケが言っていた気がする。まだその新作があるかは分からないが、ホイップの乗った甘い奴だ。
よし、買い出し前にそれを買って散歩でもするか。
そうと決まれば善は急げ。駅前にあるコーヒーショップへと足を向けた。今朝は早く起きたこともあり、買い出しまで時間に余裕があるのだ。川辺の公園まで歩いて行って、紅葉の具合でも見て来よう。話のタネにもなるし。
コーヒーショップの自動ドアから歓迎を受け中へ入る。ショップの中は少しだけ冷房が入っているような気がした。
横文字ばかりのコーヒーをトールサイズで頼んでイケメンの店員さんから受け取る。どうしてこのショップは美男美女しかいないんだろう。採用項目にそういうのがあるのか? なんて、きっとキラキラして働いているから、そう思うのだろう。
店内で一口飲んでみる。太めのストローからは生クリームのたっぷり入ったドリンクが流れ込んでくる。甘い。けど、美味しい。
いい買い物をした、と軽い足取りで一歩踏み出すと、カウンター席に座る人物と目がバチッと合う。そしてはたと考える。
どこかで見たことがある? 気がする。
お客様だろうか。引っかかりはあるが、誰なのかパッと浮かばない。とりあえず、柔らかい顔つきで会釈した。この美女は誰だ?
相手も同じように会釈を返してくれたので、それじゃぁ行こうと意識を外へやるも、おいでおいでと手招きされる。
え、だから誰?
とも言えず。かと言って視線も合っているのに、手招きもされているのに無視できる程新人オーナーでもない。もしお客様でなければ宣伝してから立ち去るくらい出来なくてどうする。
と、思いつつ、相手の出方を見るため無言で近づく。常套手段だろ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます