ヘタレ勇者の龍殺日記

烏丸 ノート

プロローグ

 かつて世界には、幾つもの国があった。

 しかし数百と余年前、その殆どが───


 ──壊滅した。


 壊滅の理由は、世界に突如現れた二体の龍。終焉龍、神龍と呼ばれる二体の龍が地上に舞降り、まるで塵でも払うかのように国を、人を、地上にあるありとあらゆる生命を破壊、殺していったと言う。

 全てを破壊し尽くした二体の龍は天高く舞、トゥーてを破壊デストリュクシオンするフロガを放ち、地上に……トドメを刺した───。



 そう、古い書物には残されていた。

 この書物が存在していということは、その時、人間は全滅していなかった。

 書物自体こそ残ってはいないが二体の龍は地上を破壊し尽くした後、再び天高く飛んでいき、数種の龍を生み出したと言われている。

 中でも多く見られるのが白龍種シュネーヴァイス黒龍種シュヴァルツネアの二つの種類。

 他にも種類はあるがどちらとも二種の龍の突然変異種らしい。

 現在も龍種の、活動は止まっていない、神龍、終焉龍に生み出された龍達は今も残った人間を排除しようとしている──

 と、まぁこの話はここまでにしよう、なんだか外の方が騒がしくなってきた。

 少し気になり窓の方へ耳を傾けると人とは思えない声が聞こえてくる。


『まだこんな所に国が残っていたとはな……』


 龍の声だ。

 僕はそっと、宿の窓に付いたカーテンをそっとどけてみる。

 そこには、白龍種……いや、ただの龍種トリウィアーリスだ。

 何人かの帝国兵士が龍を囲んでいるが……


「無駄……だと思うな」


 はっきり言って、ただの兵士に、駆け出しの勇者に、ただの龍種だろうと殺すのは不可能。たとえ手練の勇者であろうと龍種を討伐するのには軽く二十人は必要だろう。

 それをただの雇われ帝国兵士が挑むなんて自殺しに行くようなものだ……

 だから、助けねばならない。だが──


「怖わいよぉぉぉぉお!」


 僕はベットと壁の間に入り込みカタカタと震えていた……。

 しかし今行かなければ国が滅びるかもしれない……数少ない国が……

 刹那──

 僕のいる部屋に一人の兵隊が突っ込んできた。

 伸びてる兵隊を見るからにきっと、龍に飛ばされたのであろう……

 それより……この部屋……この部屋は……


「昨日借りたばかりでローンとかその他諸々まだ払ってないんですけどぉぉぉお!!!」


 僕は絶叫とともに部屋の隅においてある剣を手に取る。

 そのまま破壊された場所から外へ行き、龍を涙目で睨みつける。


「やめ、やめろ!ただの冒険者が龍に挑むなんて……死んでしまうぞ…!」


 僕の部屋へと飛び込んで来た兵士が心配そうに言う。

 だが、僕はその言葉には耳を傾けず、ただひたすらに龍の元へと歩みかける。


『なんだ若造、私に何か用か?それともこの雑魚と同じように私を殺しに来たか?』


 その問いかけに僕は何も言わないで、ただ龍を涙目で睨みつけるばかりだった。

 その表情を見た龍は、『そうか……』と言って僕目がけて鋭い爪をはやした手を振り上げ、下ろす。


『死ね』


 と、言いながら。

 僕はその動作を見て、腰に挿した剣を抜く。そして振り下ろされる手を切る。

 思いもよらぬことに龍は同様を見せる。

 その隙を……逃さない。

 僕は龍の首目がけて刃を振るった。


「修理代も増えちゃったじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」


 と、叫びながら……。

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