第33話「ドンパの失言。」

俺達はドンパさんの領地に戻る事となった。


ドンパさんの領地はレイドックに行くまでの道中にある。


帰りのドンパさんはヤケに慌ただしく、カリカリとしていた。


だけど、行きの様な事件は起きずにもうすぐドンパさんの領地【ガルダロ】に着く所まで辿り着き暫しの休憩。


だが、その休憩もすぐに終わる。


「なんだあれは?」


ハーマンドが指し示す方向に皆が顔を向けると、遠くの方で大きな黒い煙が立ち登っていた。


それを見るなりドンパさんは血相を変えて慌てだす。


ペンタさんもゴンさんも気が気でない。


その方角は今目指している【ガルダロ】。


ドンパさん達が移住した街だからだ。


「おい!!何をしている!!さっさと馬にムチを打て!!!」


慌ててペンタさんとゴンさんは馬にムチを鳴らし【ガルダロ】へと向かった。


1時間程でガルダロへと辿り着いた俺らだが、街の現状に驚愕する。


街の中は最早炎の海と化し、大多数の魔物が暴れ周っていた。


それに対し、人々は逃げ惑う物、交戦する者と其々だが次々と人が魔物に殺されていく。


すると慌てる様にドンパさんが馬車の中の金を取り出してきたが、急にサラサラと砂へと変わり果てた。


「なんて‥なんてことだ!ワシの財が富が!なんてことだぁぁぁあ!!!くそぉぉぉぉ!!!」


ドンパさんはこの現状を受け止めきれない様子だ。


「おい!貴様!」


ドンパさんが呼びつけたのは現状に崩れ落ちるペンタさんだった。


「今すぐワシの屋敷に向かい金庫を取ってこい!!」


「そんな無茶だ!」


それを止めたのはゴンさんだった。


「こんな魔物や火の海の中を入り込むのは死ににいけと同じです!」


「だまれぇぇ!!!」


バシィ!!!


ゴンさんの顔に平手打ちを打ち付けるドンパさん。


「お前ら平民がワシに口出しするでない!たかが気休めの薬で生かされてるに過ぎんゴミが!!」


「な!!?気休めの薬!?どういう意味です!!」


どうやら今のは失言だったようだ、ドンパさんはバツの悪そうな表情を浮かべる。


「お前らの病は魔石を作ることにより生命エネルギーを吸収され発生するものだ!病気でも何でも無い!あの薬は精神に働きを掛け、身体の怠さなどを一時的に忘れさす物だ。」


「そんな!!じゃぁ俺達は何の効果もない薬を買わされていたのか!?そんな!!」


ペンタさんはドンパに掴み掛かろうとすると。


「えぇい!黙れぇぇ!」


ドンパさん。いや、ドンパが手を振った。


だがその瞬間。


ドガァァァ!!!


俺の拳がドンパの顔に減り込んだ。


その瞬間、皆が驚愕の表情を見せた。


何故なら、ドンパは貴族で貴族に手を上げた場合。打ち首にされても文句は言えないからだ。


「が、がぁ。ぎ、ギザマ!!こんな事して只で済むと思うなよ!!打ち首だ!打ち首だぁぁ!!!」


あぁ。もう限界だわ。


俺はフゥ。と息を吐き出した。


「誰が今の事を証言すんだ?」


「な、何!?」


「立場を分かってねぇのはお前だ。ここでお前を殺しても誰が殺したかなんて分からないだろ?魔物が暴れ周るこの状態ならな。」


「ま、待て!!何をする気だ!?分かっているのか!?ワシは上位貴族だぞ!えらいのだぞ!!」


「しるかよ。」


その瞬間。俺はドンパの懐へと入り込み、ドンパの腹へと拳を減り込ませた。


「グゥふ!!」


ドンパは白目を向き、気絶し地に落ちた。


「あ、アル君。そんな事して大丈夫だったの!?」


「さぁ。」


俺は肩を竦ませた。


「さぁ。って‥。」


ペンタさんは唖然としている。


「大丈夫ですよ。灰色魔法石の余りもまだあるだろうから分析すればこの馬鹿が悪さしている証拠はいくらでもあると思うしね。そんなことより町にいる人命救助が先です。ペンタさんとゴンさんはそのバカを馬車の中にある縄で縛り付けてここで待っていてください。」


「君はどうするの?」


「ちょっと片付けにいきます。」


俺がニコっと笑い返すとハーマンドが「私も行こう」と背中に掛けた弓を取った。


それに対し、月影は頭をワシャワシャと掻くが「しゃぁーないなぁ。」と刀を抜いた。


「じゃぁペンタさんゴンさんはそのバカをお願いしますね。」


そう言って俺が火の中へと向かおうとすると、月影が「ちょっと待ちぃ!」と引き止める。


俺がその声で振り返ると月影はあろう事かドンパの衣服を全て剥ぎ取り縄で縛り付けた。


「これは?‥」


苦笑い気味になる俺だが月影は満足そうだ。


でもまぁ、これぐらいはされて当然だろう。


こういう仕打ちをするのも実は嫌いではないからな。


「これで良し!ほな行くで!」


俺達は火の海の中へと走った。


走り向かう最中、月影が俺の横につき不機嫌そうに俺に問う。


「なんであないな奴助けたんや。あないな奴殺したかて僕らが黙っとれば良い話しやろ?」


「ん~。そう言う捉え方もあるかもだけど、あの人にはもっと人を知って欲しいんだ。皆がどういう風に生活して生きているのかをな。ある意味ドンパには拷問かもしれないだろ。」


「アルは甘いな。あの手の奴は後で何仕出かすかわからんのやで。」


「その時はその時だ。また叩きのめすさ。」


そう言って俺は魔物の中へと飛び込んだ。


〇〇〇〇



「‥それが甘いっちゅうとんねん。」






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