第30話「灰色魔石」

月影視点です。


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あれから数日たった。


あの大蛇の事件以来、僕達はシルバー(+)ランクへと繰り上がった。


そして僕はクラスにより一層溶け込み合わされる様になった。


それで今日から学園が国立記念日も合わせて四日間もの休みになったので、ハーマンドが「ランクも上がった事だし、1度シルバー(+)ランクの依頼を受けてみないか?」と言う事で、ギルドに赴き依頼を受ける事となった。


動向するのはアルとハーマンド、僕を含めての3人だ。


イフリートも「来たい」と言ってたけど、ニアが「行きたい所があるんだぁ。」とかで、強引にイフリートとヴィオラを引き連れ女性陣は其方に行くこととなった。


後、ガルフは「散髪に行かなきゃなんねぇんだ。また誘ってくれ。」といって断られた。


確かにこの頃ガルフの毛は長くなっている。


獣人族は身体全体を刈るので、時間もかかる。


獣人族は大変やな。



そして、今。


僕達は依頼の最中である。


シルバー(+)ランクの依頼ともなれば、貴族の護衛で何日か王都をでる事もあり、今回は王都から馬車で峠道を走り、一日野宿してやっと着くザナール港へと向かうこととなる。


そして以来主はドンパ・フォン・ゲルゲーロ伯爵。


醜く太り切った、嫌な雰囲気が体臭として放たれているような奴だ。


そして、日が沈む頃。


野営の準備に取り掛かる。


野営の準備には60代ぐらいの細い爺さんと、二十代ぐらいの細身な従者2人と共に、僕達3人で取り掛かった。


そしてその最中。


「おい!そこのお前。のどが渇いた。」


僕は辺りを見回す。


「お前に言っているんだ!儂は喉が渇いたんだ!早く持ってこい!」


「あ、僕に言うてたんかぁ。僕、月影っていいますねん。宜しゅうたのんます。」


「そんなことはどうでも良い!!早くもってこんか!このノロマ!」


っこの!ぼけ!ぶち殺したろか?


一瞬頭に血が上りそうになり、前のめりになると、肩に手が置かれた。


「すみません。直ぐに取りに行きますんで失礼します。」


そう言って僕の肩に手を置いたのはアルだった。


僕はアルに連れられ、後方の食料を乗せた馬車に水を取りに向かった。


ガン!!


僕は余りのイラつきに思わず食料の入った木箱を蹴りつける。


「あーイラつく!いくら貴族とは言え、あのブタガエル野郎、火炙りにしたろか!」


「まぁ、前金だけどお金は貰ってるんだし、我慢我慢。それに貴族を相手に事を起こすと後々ややこしくなるって母さんが言ってたんだ。ほら、ハーマンドも頑張ってる事だし。」


アルがハーマンドの方に親指を指し僕はハーマンドの方へと目を向ける。


「おい!寒いではないか!早く火を起こせ!」


「は、はい!」


ハーマンドは慌てて、掻き集めた木の枝に魔法で火を灯す。


ハーマンドは自分が受けようと言った手前上、後に引けなくなったのだろう。


一番てきぱきと、ブタガエルの我儘を聞き入れている。


「むう‥。」


なんとも言えない表情を作る僕だが、アルは木のコップで樽から水を掬い出すと、俺に手渡した。


「もうちょっとの辛抱だ。頑張ろう。」


アルはニッコリと笑った。


アルはあのポプラ村の件以来、変わった。


何が変わったかと言うと、なんとも説明は出来やんのやけど、顔つきが変わった。


物事に対しての姿勢的なもんか?


初めは授業を寝とったにも関わらず、この頃は真面目に授業も受け取るし、ベルとニア、イフリートと図書館にも良く出掛けては魔法の書を読み漁っとる様やった。


恐らくやけどあの時、実際皆んなは何も言わんかったけど、人質になってしまった自分の事実に責任を感じてんのやろうな。


だけど責任を感じなあかん本当の人物は普通なら僕やと思う。


僕はあの時。確かに皆んなを見捨てたんや。


けど自分が間違った選択をしたとは思ってない。


だって僕達を見捨てたのはあの村や。そないな村に仕返しして何が悪い?


それなのに僕は‥。


僕はフウっ。と、一つ深い息をするとアルの持つコップを受け取るのだった。


数時間後。


野営の準備も整い、就寝する時間となった。


「おい!お前ら!しっかり俺と荷台に積んである物を守るんだぞ!分かったな!」


「「了解しました!」」


ハーマンドとアルはキリっとした態度で答えたが、僕はその気になれず適当に頭を下げておいた。


っつかさっきからちゃんと守ってるでしょう?何回言うねん、ボケとんか?


ブタガエルが寝静まった頃、僕達は見張りの為焚き火の前にいた。


「あのブタガエル。もうちょっと言い方考えろよなぁ。ハーマンドも良くやっとるわ。ん‥?ハーマンド?」


僕がそう言ってハーマンドへと話を振るが返ってこない為振り返ると、ハーマンドは恐ろしい顔つきで「ブツブツブツ」と呪文の様に何かを言っている。


「こら重症や。」


そんな時、従者の2人が焚き火に歩み寄ってきた。


確か若い方がペンタで爺さんがゴンやったか?


「お疲れ様です。」


アルが挨拶を交わすと従者2人も頭を下げた。


僕はその従者2人に思っている事をそのままぶつけてみる。


「それにしても2人とも。良くあんなブタガエルの下で黙々と働けんなぁ。僕やったら直ぐに辞めてまうで。」


「コラ!聞こえるだろう!」


僕の発言にハーマンドが注意するが僕はフンと仰け反る。


「寝とるし、かまへんやろ。本間の事をぶっちゃけようや。」


僕がそう言うと、ペンタが話しだす。


「確かに月影君の言う通りだね。だけど僕達は今この働き口しか無い。って言った方がいいかな。」


ペンタは情け無い表情で微笑むと、アルが話に入ってくる。


「働き口がない?他にも仕事はあると思うけど何か理由が?」


アルがそう投げかけると、従者2人は暗い表情を浮かばせた。


「何かあるんですか?」


「実は‥。僕達の町は魔石加工で有名な町だったんだけど魔物の襲撃で町ごと潰されてしまって途方にくれたんだ。そんな時に僕達を引き取ったのがドンパさんなんだよ。」


「それからワシ達はドンパさんの所の工場で働く様になったんじゃが、皆いきなり原因不明の病気が流行り始め次々と倒れていったんじゃ。そして唯一症状を和らげる薬があるんじゃが‥。」


「それがベラボウに高い。僕達のお金ではとても買えない。だからドンパさんが代わりにその薬代を払ってくれているから皆は命を保っていられるんだ。あの人がどうであれ、あの人の機嫌を損ねたら援助が無くなるかもしれない。僕達の感情だけで皆んなを巻き込む様なそんな身勝手な事は出来ない状況にまで陥っているんだ。」


ふーん。なんやキナ臭い話やな。


その話を聞いていると、ゴンが気になる一言を告げる。


「灰色の魔石。」


灰色の魔石やて!!?


思わず目を見開く。


灰色の魔石っちゅうたらオトンが探してた魔石やないか!


けどアレは魔石として加工するのに人の生命エネルギーを消費せなあかん恐ろしい魔石やって言うてた。


どう言うこっちゃ!?


僕の表情に何かを思ったのかアルが僕をみる。


「何か知ってるの?」


くっ、僕とした事がポーカーフェイスを忘れるとは。


僕は直ぐ様我に帰ると「いや、知らん。」と返した。


それから僕達は暫く話した後、交代で寝る順番を決め、見張りを続けた。


それにしてもこの件。オトンが絡んでるかもしれへんな。


だけどそれは‥。


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