第25話「ババ抜きは奥が深い。」

現在、イフリートと学園に向かった際、ガルシアム先生が、イフリートがこの世界に定着したならば、もう学園に入れて仕舞えばいいのでは? 的な軽いノリで言われたので、学園長室にイフリートとガルシアム先生、俺の3人で赴いていた。


「と、言う訳でして、イフリートの入学を許可して頂けないかと。」


「ん~、いいんじゃない。」


陽気で軽い感じに返答するのは、昔のヒッピー風な派手色の服で、ビックリするぐらい大きな紫アフロヘヤー、これが我が学園の学園長だそうだ。


だそうだ。と言うのは、前世の普通なら入学した時ぐらいに学園長の挨拶なり何なりで絶対に知る存在だが、この学園の学園長は粗、表側にはでてこないそうで、上の学年の人達でもその存在を見たのは数回程だそうだ。


こんなに派手なのに目立たないのは何故だ!?


「おぉ!さすがボンバーな頭をしてるだけの事はあるな!今日から宜しく頼む」


「こら!学園長に何て口の聞き方を!」


ガルシアム先生がイフリートを叱りつけると、学園長がそれを止める。


「あぁ、ガルシアム君。別に気にしてないから全然オーケーよ! イフちゃん、今日から勉学に励んでくれよぉ。」


「おう!!」


イフリートはニッコリと学園長に笑顔を見せると、学園長もイフリートに笑顔返した。


それから学園長は俺の方へと視線を向ける。


「君がホーエンツ家の三男か。なかなかナウい顔してんじゃない。入学の時の兄弟対決見てたぜ。」


「あ、あれは、恥ずかしい戦いでした。」


「謙遜する事はないさ。君は強くなるよ。 それにあれはいい客寄せになった。 俺も此処ぞとばかりに客席にフードを売りさばき学園の経費を稼がせてもらったからね。学園は無料な分、そういうので賄わないとやっていけないのよ!」


何故かどんどんと威張り口調になり仰け反る学園長。


っつか何勝手に商売してだあんた!その分け前こっちにもよこせ!!


まぁ今更どうでもいいことだけど。


「それはそうと、ガルシアム君。今年のAクラスはどんな感じだぁ? 聞く所によればツルカズラを倒したそうじゃねーかよぉ。」


「そうなんです!今年のAクラスは、なかなか見所がありますよ。良ければ一度クラスに立ち寄って見てはいかがですか?」


「おぉ!いいねぇ!それ。じゃぁ今から行こう!」


「えっ!?い、今からですか?」


ガルシアム先生は、自分から言ったはものの、今からという事に驚くが、学園長が今といえば今なのだ。


そして、俺達は一緒にAクラスの教室へと戻るのだった。


教室に戻ると、ニアが持ってきたトランプで皆大盛り上がりだった。


「ほらほら、遊びは終わりだ。」とガルシアム先生が皆がザワつくのを静止しようとすると学園長がそれを止める。


「いいよガルシアム君。それよりも、その遊んでいる物はなんだい?」


学園長はどうやらトランプに興味を惹かれたようだ。


俺は、この玩具について説明すると、是非とも自分もやってみたいということで、この時間はホームルームとなった。


だが、昨日あれだけ神経衰弱をやった後にまた神経衰弱は流石にしんどい。


なので今度はババ抜きのルールを教えて、皆でする事となった。




「ふっふっふ。貴様がババを持っている事は分かっている!!」


「はっ!何を言ってやがる!そんなのねぇ、に決まってんだろがよ!早く取れハーマンド!」


ハーマンドのキャラがおかしい。


「分かっているのだぞ!そうやって私を騙そうとしていることは!」


「いいから早く取れバカ!」


ガルフの言う通りバカだ。それは何故か?それは、俺がババをもっているからだ。


「くっ」、と何故か力を入れ、ガルフのカードから一枚を抜き取るハーマンド。


「っし!揃った!ははは!今回は私の勝ちのようだな!」


「バカきオメェは!まだカード残ってんだろが!」


いや、そもそもガルフはババもってはいない。


「さぁ次は俺の番だ。」


ベルのカードからガルフが抜き取る。


「ちっ、揃わなかったか。」


次はベルが俺のカードを抜き取る番だ。


因みにベルはカードが一枚で俺が二枚、ベルが仮にババでないカードを抜き取ったとしてもカードが揃う可能性は少ない。


だがこれはゲーム。是非ともババを引いて頂きたい。


ベルはあたかも余裕のようにカードに手を向ける。 俺はポーカーフェイスを保つ。


ベルがスッと抜き取ったのは‥。




ババだった。



やった!と喜びを表現しようとするが、そこはゲーム中だ。俺はそれでもポーカーフェイスを保ちベルを見ると、



解りやす!!!


明らかに目を泳がせ、動揺を隠せないベル。


それを見たガルフはニヤリとする。


それからは流れるように、メンバーが減っていき、残ったのはハーマンドとガルフ、ベル、学園長となった。

そしてババは学園長の手の中に。と、言うよりもガルフのニヤリは何だったのか?


それに、この4人の心は顔に筒抜けだ!


「おぉい!分かってんだろうね君。俺は学園長なんだぜ。」


顔をヒクつかせベルを脅しに掛かる学園長。大人げなさすぎやしませんか?


「学園長、それとこれとは話が別ですよ。勝つのは私です。」


ベルはスッとカードを抜き取る。



ガーン!!!!



効果音がなりそうなぐらいの表情を見せるベル。


ガルフはそれを見てまたニヤリとする。

だからそのニヤリは何?


ガーン!!



ガルフもババを引く。そしてハーマンドも。


ガーン!!!



因みにだが、皆ババを触られた瞬間表情は丸分かりだ。


それなのにも関わらず、何故そのカードを抜き取るのか俺には到底検討もつかない。


「学園長!次は学園長の番ですよ!さぁ!さぁ!」


ハーマンドは変な笑みを浮かべている。


「くそ!このゲーム単純に見えて中々奥深い。策略、話術、嘘、脅し等々が入り込まれていて、正に心理戦!!」


学園長が目をクワッと開け、カードを抜き取った! ババを、


「ガッデーム!!!!」


アホか。



結局、最後はハーマンドとベルの一騎打ちで、ババを最後まで持っていたのはベルだった。


「シャー!!」


ハーマンドが歓喜の雄叫びを上げる。


それに対し負けた事を認めれず、身体を震わせるベル


「嘘よ、‥嘘よ!こんなの私、認めないわよ!」


「ベル君!君が如何に勉強ができようともババ抜きで私に勝る事はできない!!」


ベルは口を膨らませ、プンプンに怒りを表現する。


っつかハーマンドどんだけ嬉しいんだ。

子供かよ。って子供だったか。


「もう一回!!!」




それ以来、学園長が、自分にもトランプを作ってくれと言う事で、型紙を切り分け、簡単すぎる絵だが描き、もうひと組作って渡すと、なんと大銅貨一枚(1000)で買いとってくれた。


「こんなに貰うことは、」


「なぁに、こんなのは安いほうさ。そうだ!君の家は商人をしていたな。これを機に売り出してみてはどうだ?きっと爆発的に売れるぞ。」


むぅ、確かにこの世界に道楽は少ない。

お金はいくらあっても困る物でもないし、父さんと一度相談してみても言いかもな。


そして夜。



「な、何だこれは!!?アルが考えたのか?」


大袈裟過ぎる程の驚き様を見せる父さんに俺は苦笑いを見せる。


「そんな大袈裟な。まぁ一応作ったのは俺だけど。で、どうかな?売れるかな?」


「売れる!!これは売れるぞ!!明日にでも製造をし始めよう。あと、この絵なんだが、絵柄は何でもいいのかい?」


「うん、そこは任せるよ。」


こうして、トランプはこの世界で出回る一歩を踏み出した。




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