第5話「サキュバス登場、心境の変化。」

「ぐぅあぁあぁあ!!!」と叫びながら俺は飛び起きると見知らぬベットの上だった。


辺りを見渡すと、直ぐにここが病院だと分かった。


部屋の中は1人部屋で窓からは朝日が差し込み心地よい風が入り込んでいた。


俺は右手で頭を抑え、あの時の記憶を蘇らせる。


「#雷撃__サンダーボルト__#!!」


「ぐうあぁぁぁぁあ!!」


ーーー



「‥負けた。ってことだよな。 それにしてもよく生きてるな俺‥。普通死にますよ。けど、‥まさか俺にあんな力があったなんてな‥‥‥って!!!?。」


不意に自分の隣にある違和感に気付き、隣の膨らむ布団を、恐る恐る捲り上げると思わず俺は言葉を失った。


だってそこに居たのは、俺よりも6つぐらいは年上だろうか?


綺麗なピンク色の髪に、羊の様なツノを生やし、人を魅了させ、男なら誰でも振り向く程に露出度の高い服。


そして何より、その服からはちきれんばかりにエロを追求したかのような双丘に、綺麗過ぎるクビレ。


10歳だから反応しないと思いきや、しっかりと勃つものは勃つらしく動揺する。


なんとか平常心を保ち、その少女の肩ゆさぶり俺は声をかけた。


「だ、‥誰?」


俺の呼びかけに反応するように少女はゆっくりと身体を起こし伸びをする。


「う~ん‥。」


色気のある声を発し、豊満すぎる双丘がタユン、と震える様を間近で見て、思わず目を逸らす。


目に毒だぁ~。


ってより、寝起きでここまで綺麗な人はまずいないだろう。


それより恐らくだが魔族?だよなこの人。


今更だが、この世界は人間も含め魔族、ドワーフ、エルフ、獣人、巨人族とその他多種族が共存して生きている。


その中でも魔族は見た目が人間に近い者もいれば毒々しい見た目の者と様々で、統一性が無い。それに毒々しい見た目の者は差別対象になる場合も多いため、多種族とは交易はするものの出来るだけ関わらず魔族島という島に引きこもる者が多い孤立種だと昔父さんに教えて貰ったことがある。


ってかなんで俺の横で寝てるんだ?


ダメだ考えると顔が熱くなる。


何もしていないと分かっていても動揺を隠せていなかったのだろう。


少女は俺を見るなりクスッ、と無邪気そうに笑う。


可愛い。そう思った瞬間。


いきなり少女は俺を押し倒し、少女が俺に覆い被さる形になる。


俺のキングダムが少女の股の中心の柔らかさに押し潰される。


「あん。元気ね。」


「ぬぅあ!!?」


少女の不意な一言に、俺は素っ頓狂な声を漏らすと、少女は俺の顔に手を添えた。


「ふふ。 可愛い顔してるし問題なし。

あ、私はニアミス。貴方は?」


「あ、アルス。 って自己紹介してる場合じゃないでしょ!?」


「ん?なにが?」


首を傾げるニアミスとやら。


可愛い!超絶に!!


っていかんいかん!ペースに飲まれるでない俺!


「なんで隣で寝てたの?」


俺の問いにニアミスとやらはポンっと手の平に拳をのせた。


「あっ、そうそう。ちょうど空を飛んでたら病院の窓の奥に可愛い少年が見えて覗きにきたの。」


はい?何を言ってるの?


「いや、言ってる意味がわからないんですが‥。」


「要するに、魔力吸引しようと思ったんだけど、君の可愛い寝顔を見てたら気持ちよくなってきて私も寝ちゃった訳。」


テヘっ、と無邪気に舌をだすニアミスとやら。


可愛い。


っていやいや!さっきからおかしいぞ俺!そんな話をしたいんじゃない。


「魔力吸引って?」


「私ね‥。サキュバスなの。」


「‥‥サキュバス?何だそれ?」


俺が首を傾げると、部屋に一瞬の沈黙が走る。


「えぇーー!!?君知らないの!?」


ニアミスの余りの驚き様に、俺は若干引きぎみなる。


「だから何?」


「サキュバスっていったらね。あの、‥その‥そう!人の魔力を吸い取る悪魔だよ!」


なんだ?この反応からして結構有名なのか? それに魔力吸引ってことは、それがご飯みたいな物なのか?


昔、クライス兄さんが魔族は人と違う栄養摂取の取り方があるって聞いたことあるしな。


「それはサキュバスにとって必要なことなのか?」


「え、あぁ、‥まぁ、そうだね!ひ、必要っちゃ必要かも」


やっぱりご飯と似たような物なのか?

なら人よりも魔力量は多いんだ、少しぐらい分けても問題ないだろう。


「いいよ。 俺ってどうやら人よりも魔力豊富みたいだし。 分けてやるよ。」


「え、ええぇーー!!?い、いいの!?

え、えっと、本当に!?」


ニアミスは俺の反応に驚き、モジモジとし顔を赤くし始めた。


俺は、その行動に首を傾げる。


「何?何でそんなに改るの? 良いって言ってるじゃん。 ‥とは言っても、どうやって吸引するの?」


「そ、それは!‥その‥私からする?‥の?」


更にモジモジしだすニアミス。


「何?ハッキリしないなぁ。どうすんの?」


俺の問いにニアミスは顔を真っ赤にしチラチラと俺を見ると急に心を決めたとばかりに両手を手前で握りしめると、俺に近づいてくる。


「じゃ、‥じゃぁ始めるよ。わ、私、初めてだから‥」


そう言ってニアミスは目を閉じ顔を近づけてくる。


え?えっ?そっち!?何何何何!!?


え?ウソォオーー!!


ガチャ!


そのタイミングで病室の扉が開かれる。


「アル~。生きてるかぁ?って‥。」


なんと入ってきたのはクライス兄さんだった。


クライス兄さんはこの状況を見て停止する。


そりゃそうだ。


露出度が多く、全くもってけしからん少女が俺の真上に覆い被さっているのだから。


「な、なんか邪魔したね。失礼しました。」


そそくさと扉を閉める兄さん。


「って違ぁぁう!!」



〇〇〇〇



「サキュバス!!? き、君は今サキュバスって言ったのかい?!」


事情を説明し、ようやく理解してくれた

クライス兄さんは、サキュバスと聞くなり声を裏返し、驚愕の表情をみせた。


「クライス兄さんも知ってるんだ。で、何なのサキュバスって?」


「いいかい、サキュバスはね‥‥‥。」


クライス兄さんは、ニアミスに聞こえない様に小声で耳打し、俺は一気に顔が噴火するんじゃないかと思うぐらいに真っ赤に染まりあがる。


「えぇー!!!!?」


病院に俺の声が響き渡る。


サキュバスって、あんなことやこんな事をして魔力を吸い取り、吸い取った人の命を奪うのだそうだ。


「だとしたら俺は、君にあんな事やこんな事を言えと強要していたということかぁ!?」


「え?そっちなのぉ!?殺されかけさたんだよ!!?」


「ちょっと待って!それは誤解だよ!」


「え?」


クライス兄さんはニアミスがそう言うとニアミスの方に目線を向ける。


だが、ニアミスの色気は異常でクライス兄さんはズザザザサ!と素早く部屋の隅へと移動し、ゼェ、ハァと肩で呼吸し自分を制御し始める。


「あっ、今のままじゃ話しずらいよね。」


そう言ってニアミスは胸の谷間から碧い碑石のついた指輪を取り出し指にはめ込んだ。


すると、さっきまでニアミスを見るだけでフワフワとしてしまうような感覚が無くなった。


「それは?」


「【#魅了__テンプテーション__#】を抑える我が家の秘宝だよ。」


「た、確かにさっきよりは平常心でいられる。」


クライス兄さんはホッと胸を撫で下ろした。


「じゃぁ話を戻すけど、確かにサキュバスは人々に最も影響を与える存在として危険視され意味恐れられる事が多いけど、人のいる場所に出てはならないという規定が無いのは何故だと思う? 」


「うーん。」


クライス兄さんと俺は首を傾げる。


「答えは簡単。〇〇〇をしたからと言って人が死んだりとかは唯の迷信だからだよ。 サキュバスは当時の戦争時その魅力を使い敵国の王に取り付き、ある時は戦意喪失させ、ある時は吸引中に敵国の王の首を取ったりした為、そういった印象を持たれてしまったの。 それに、魔力吸引を必ずしもしなければならない訳でもないんだよ。 確かに、魔力吸引によって魔力をあげたり、若さを維持する事は出来るけど、しなくても何ら支障はないしね。」


「って事は魔力吸引をしたとしても相手側が死ぬような事はないのか?」


「うん。けど魔力吸引された者は三日三晩高熱で寝込んじゃうらしいけどね。」


そう言ってテヘっ、とイタズラ風に笑うニアミス。


一つ一つの仕草が狙ってやっているとしか思えない。ん?


ふと気がつくと、何やらニアミスの身体から湯気が出始める。


「あっ、そろそろ時間だ。」


ニアミスがそう言うと急にニアミスがボフン!!、と煙りに包まれた。


煙が無くなりニアミスを確認すると、なんと俺と同じ10歳ぐらいのニアミスになっていた。


先程とまではいかないが、小さいながらもしっかりと胸のラインを浮き上がらせ、そして何よりロリとはこの事かと思わせる、超絶可愛いくなっていた。


俺とクライス兄さんは、驚きの表情を見せる。


「あちゃー。魔法がきれちゃったかぁ。」


「魔法?魔法で姿を変えてたの?」


「うん。 あの姿の方が男の人が優しくしてくれて、ご飯とかも食べさせてくれるってお母さんが言ってたから。」


ロクでもねえな!そのオカン!!


「けど、あの姿になって街を回った途端、色んな男の人に言い寄られて裏路地に連れてかれそうになったりして、犯されそうになったの。勿論消し消し炭にしたけど。」


そらそうでしょうねぇ!っつか今サラッと怖い事いったよね君?


「だから町中を歩くのが怖くなっちゃって飛んでたの。一度あの姿になると戻るまでに時間がかかっちゃうし、普通の10倍の【#魅了__テンプテーション__#】が発生しちゃうからね。 そしたら其処に凄い綺麗な顔をした君を見つけたの。」


「その話を聞く限り、誰でも吸引してる訳じゃないのか?」


ボカン!!


「ッ!!!」


ニアミスのゲンコツがいきなり俺の頭に炸裂する。


「レディに失礼だよ!誰でも吸引する訳ないじゃん! さっきも言ったけど魔力吸引は別にしなくても身体に影響がある訳じゃないんだよ。 けど!他の訳のわからない男にその‥‥は、初めてを奪われるのは嫌だったから‥その、初めては私が決めた人!‥って訳で‥。」


どんどんニアミスの顔が真っ赤に染まっていく。 っつか何だか俺もどんどん顔が熱くなる。


いやいや、10歳の会話じゃないでしょ?

元いた世界でなら親呼び出しですよ?


いや、でもさっきのは失言だった。


「ご、ごめん。失言だった。」


「うん。いいよ。サキュバスはその印象の方が強いからね。」


「あ~、オホン。 お二人さん、仲がよろしいのはいいけども、話はそこまで。」


あっ、クライス兄さんの存在を忘れていた。


「話し込んでいたら、もう日が傾き初めてるし、アルは退院だからもうそろそろ帰るよ。君はニアミスちゃんだったかな?親御さんは?」


どうやら小さくなった事でさらに#魅了__テンプテーション__#が抑えられたのかクライス兄さんはいたって普通の状態になっていた。


「私は外の世界を知る為にこの街に昨日きて、昨日から学校の寮で1人暮らしなの。」


「え!?じゃぁアルと同じ今年からの新入生なの?」


クライス兄さんのそれを聞くや否やニアミスは目を輝かせる。


「え?嘘!?アルスも同じ学校なの!!

やったぁ!!明日から宜しくね!」


「宜しく。」


学園生活が騒がしくなりそうだな。と思い苦笑いした。


「あっ、そういえば寮って時間厳守制だったよね?ご飯に間に合うの?」


クライス兄さんがそういうと、ニアミスは部屋の時計を見るなり慌てだす。


「あぁー!!!いっけない!今から帰ったんじゃ間に合わないぃ!」


「間に合わないとどうなるの?」


俺がクライス兄さんに尋ねる。


「我が校の寮は時間厳守のご飯制で、過ぎればご飯が無くなり外食になるんだよ。」


「うえ!かなり厳しいんだな。」


だけどさっきそんな事があったと聞いてそのまま帰すわけにいかないよな。


送ってくか?と考えていると、ニアミスがいきなり俺の服の裾を握りウルウルとした瞳で見つめだした。


なかなか厚かましい奴だな。


「クライス兄さん。せっかく迎えに来てもらって悪いけど、俺この子を送ってから帰るよ。」


「送ってどうするんだ?その子のご飯とかもあるだろ。あっ、そうだ。良かったら家に来るかい?近くなんだ。」


クライス兄さんがニッコリとニアミスに言うと、花が咲いたかの様に喜びを見せるニアミス。


「いいんですか!?」


「うん。いいよ。アルの彼女だからね。」


「きゃー!お兄さんったら!」


顔を真っ赤にして飛び跳ねるニアミス。


「おいおい。」


俺は肩を落とし苦笑いした。



こうして俺達はニアミスを連れて帰ることになった。


クライス兄さんは家に着くなり両親に俺の彼女だと言いふらし揶揄った。


母さんは、何かとニアミスに要らぬ気遣いを繰り返し、父さんも娘が出来たみたいだと、妙にデレデレした。


カルマ兄さんも俺を少し揶揄った後、「トレーニングに行ってくる」とか言って、すぐに外の庭にあるサンドバッグを殴りにいった。


相変わらずストイックな性格だ。


まぁ、そんなことはさておき。


皆んなで母さんのご飯を堪能した後、俺とクライス兄さんでニアミスを学生寮へと送ってあげた。


「今日は、ありがとうね。」


月夜の光に照らされニアミスの頬がほんのりと赤いのが分かる。俺は変に緊張する。


「う‥うん。明日から宜しく。」


「同じクラスだったらいいね。」


俺は、照れ臭さからか、頬を掻く。


「‥そうだな。」


「おーい!」


あっ、またクライス兄さんの事を忘れていた。


「ごめん。」


「大丈夫!少し寂しいけどね!」


親指をたてるクライス兄さん。


さらっと本音がでたな。


「じゃぁ、帰るよ。」


俺が手を降ると、ニアミスもニコっと笑顔を作り手を振った。


その帰り。


「アルは、あの子を守れるくらい強くならなきゃな。」


「な、なんだよイキナリ!?」


「まんざらでもないんだろ?」


「う、‥まぁ可愛いけど。け、けど、まだ知ったばかりだし!向うだって俺の事知ってる訳じゃないだろ?嫌になる事だって‥。」


「はははは!お前は解りやすいな。けど、サキュバスが相手となると苦労するぞ。あの話を聞く限り、あの子が襲われることだってあるかもしれない。それを守れるのは強い者だけだ。俺から見たアルは正直、悔しいが俺よりも強くなるだろう。だけど、魔法も戦い方もまだまだ経験不足。それがアルの敗因だ。強くなれよ、アル。たまに訓練も付き合ってやっからな。」


俺は、特にこの世界に来て何かがしたかった訳でも無かった。


だけど今日、ほんのちょっとだけど自分の実力がどれ程までの者なのか興味を示しだしたのだった。



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